別れた青年の行く先は
修正をしている時に気がついたんですが、
どうもスペースを開けている部分が上手く表示されていないみたいですね……。
いずれPCで編集する際に手直しをする事になりますが、今暫くお待ちください。。。
もう既にその姿が見えなくなっている。
一年間、命を救われた出会いから、たった一年。
あっという間だったな……と思う反面、いろいろな事があり過ぎて、とても一年間で起こった事とは信じられない様な気分にもなる。
馬車から見た、もう遠く離れ、姿の見えない青年を思い、少しだけアリシアはため息をついた。
……キキッ!
「ん……お前も寂しいか?よく懐いていたものな……」
腕の中にいる小さな生き物ーールリムは、まるで慰める様にアリシアの頬に体を寄せ、こすりつけて来た。
馬車から飛び出たこの子を、何時の間にかカイトが拾って来て、世話をしていたと聞かされた時は驚いた。
おかげで自分よりも懐いてしまったカイトの元から離れようとせず、向こうにいた間の世話は、ほぼカイトに任せてしまっていた。
しかし、危険な場所に向かう事もあるかもしれないし、元々の飼い主だったんだから……と言われ、今はこうしてアリシアの手の中に収まっている。
「変な事に首を突っ込んで、怪我などするでないぞ……。お前はいずれ、わらわの元に仕えるのじゃからな……」
もう一度、姿の見えない彼方にいるカイトを思い、その無事を祈った。
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身分証となる物を手に入れたカイトは、あまり帰る時期が遅れるのも問題だろうと切り出し、アリシア達と別れる事にした。
実際は、あの老婆が言っていた事が気になったからではあるが……。
もし自分が一緒に居続ければ、自分を待ち受ける“数奇な運命”とやらに巻き込まれてしまうかもしれない……と思ったからだ。
未だに占いを信じようとは思っていなかったが、あの老婆の言葉は信じた方が良さそうだ、と思わせる何かがあった。
と、いっても、神樹の森や、名も忘れられてしまった祠など分かる筈もなく、いずれ何か必要な時に出て来るだろう……などと軽く考えてはいたが。
…カイト、これからどうするの?
「西に行くよ」
話しかけてきたクルトにそう告げると、カイトは歩き始めた。
これから途方もない距離を旅する事となる青年が、初めてその一歩を踏み出した瞬間だった。
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あれから真っ直ぐ西へと歩き、日が落ちる前には野営の準備を……と、繰り返し、カイト達は西の国境付近へと辿り着いていた。
クルトと一緒であれば簡単に獲物が見つかり、新たに手に入れた弓の調子も良く、食料に事欠かなかったカイト達は、今日も大きなボアを1頭仕留め、その肉が焼けるのを待っていた。
すこし干し肉にしておこうかな……などと考えながら肉の火加減を見ていたカイト。
クルトはよだれを垂らしながら必死に我慢している。
どうやら拾った日にあげたシチューで、調理された物の方が美味しいと理解した様だが、目の前にある大きな肉の塊に我慢ができそうにないらしい……。
既に焼けていた部位を先に切り取り差し出すと、キラキラした目で飛びかかってきた。
「俺の手ごと食べないでくれよ」
苦笑しつつそう告げても返事をしない。
どうやら肉に夢中になっている様だ。
こうして見るとただの子犬にしか見えないんだけどなぁ……などと思いつつ、焼けた肉を口に運び、カイトはふと夜空を見上げた。
ーー漆黒の夜空に瞬く無数の星。
妹も、この星空の下暮らしている。
もうすぐ会いに行くから……。
そんな風に夜空を見上げる視界の隅で、黒い影がよぎったが、カイトが気がつく事はなかった。
知人からの要望もあり、アリシアの過ごした1年間は、サイドストーリーとして後日掲載する予定です。
他にも、あの時なにしてたのー?なんて疑問等がありましたらお送り下さい。
出来るだけご要望に添いたいと思っています。