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旅路の途中で

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感謝してもしきれません。

これからもどうぞよろしくお願いします!

今日もカイトは森へはいっていた。

馬車の旅で何故森にはいる必要があるのか…それは、野営の時の食料確保に為である。


しかし、何故こうも野営を繰り返すのか…それは未だにわからなかった。



この旅の…と言うか、馬車の主の目的は、“皇女に旅を通じて世間の理等を理解させ、市民の暮らしを理解させること”であるのは、以前聞いていた。


…が、わざわざ危険な野営をする必要は無く、毎回必ず側を通るそれなりの規模の街の宿に泊まればいいのではないか?


と聞いたら、「伝統です」と簡潔に答えられてしまった。



…どんな伝統なんだ…と言うか、来た時はどうしていたんだろう…。



疑問は尽きない。



しかし、野営をしないという選択肢は無いらしく、それならば自分の食事にも関わる。



こうしてカイトは、屋敷を出てから幾度目かの狩りに訪れるのだった。









ここの森はお屋敷の周りとは少し雰囲気が違うな…。


今回はいった場所は、どうもはいり慣れた“いつもの森”とは違い、感じる気配が少なかった。



と言っても、皆無と言う訳では無く、小動物などの姿もあったが、どうにも生き物全てが“息を殺して”いる感じがするのだ。




何か強い存在がいるのだろうか?



流石にモンスターが現れた時とは違うが、それに近い気配を感じ、気を引き締めたカイト。



すると前方に獲物がいるような気配を感じた。

気配を殺して近付いたカイト。その先にいたのは、数頭のピックルだった。


丸々と肥えた身体を持ったそれは、普段森では無く、崖の側等に生息する、大きな角を持った生き物だった。



この辺りでは珍しい生き物で、それなりに食べがいのある獲物との遭遇に心を弾ませたカイトはが弓を構えた瞬間、横合いの茂みから何かが飛び出してきた!



その生き物はピックルの中の一際大きな一体に飛びかかると、その首筋に鋭い牙を突き立てた。


それは明らかに致命傷になる物だったが、噛み付かれたピックルは、仲間を逃がそうとしたのか尚抵抗し、無理矢理に身体を暴れさせると噛み付いていた物を振り払った。



一頭だけ残ったそのピックルは、もう命は長くない事を悟っているのか、自分にその傷をつけた者にも一矢報いようとその身体を走らせ、意外と小柄だった相手へと体当たりした。


しかし、それで力尽きたのか、体当たりをくらい横転した相手の上へと覆いかぶさる様に倒れていく。



その小柄な身体ではひとたまりもないようで、下敷きにされた相手はギャンギャン!と喚くと、なんとか下から抜け出そうともがいている。



だが、力の抜けた身体の重みは半端では無く、どうにも脱出出来ぬようで、次第にその動きを小さな物にしていった。




…んー…可哀想だから助けてあげてもいいけど…助けて襲われてもなぁ…。




などと迷っていると、とうとう力尽きたのか、暴れていた四肢が動かなくなってしまった。



見捨てるのもなんだか忍びない…と、奇妙な感覚に囚われて、倒れたピックルの身体をどかすと、その下にあったのは、紛れも無く先日その身体を打ち倒した、ブラックウルフの身体に良く似た、子犬の様なものだった。







倒れたピックルとその子犬…おそらく、あのブラックウルフの子供ではないだろうか…を持って帰還したカイトは、獲物を調理係へと渡し…今日の係りはマリアだった…ウルフの傷に薬を塗っていた。



といっても、死にかけたピックルの体当たりだったので、特に外傷は無く、下敷にされた時に負った打撲が精々で、後は重みに耐え兼ねて意識を失っただけだったろうから、これといった治療もせず、目を覚ますのを待っていただけだったが。




しかし、自分は何故この子を助けたのだろう?


自分が殺した相手の子を助けたからといって、感謝されるはずもないだろう。むしろ、その事を知れば、襲いかかって来る確率の方が高い。




しかし…それでも何故か、見捨てる事が出来なかった。



甘いのかな…いや、甘いんだろうな…。



「まーったくお前ってやつは…そんなんじゃ、いくつ命があっても足りねぇぞ?」

…という、ガゼットの声を聞いた気がした。


…と、どうやら狼の子供が目を覚ましたようだ。


微かに緊張し、腰の剣にそっと手を添わせる。



…にぃちゃんがたすけてくれたの?




頭の中に直接響いたようなその声にぎょっとし、カイトは自分を見上げる無垢な瞳を見返した。


「…今のは…お前か…?」



…うん、そうだよ。



会話が通じた事に驚くも、嬉しそうに尻尾をぱたぱたと降るその生き物をどうしたものかと考える。


「お前は、ひとり…なのか?」



…おとうさんをおいかけてきたんだけど、どこにいったかわからなくなったの。



なんとなくひとり…という言葉を使い尋ねたカイトは、ある意味予想道理な言葉を聞き、少し気を落としてしまった。


…やはり、あいつの子か…。



…なんかね、へんなにんげんがすんでたもりにやってきてね、おとうさんをつれてっちゃったの。


悲しそうに目を伏せるその子犬…子狼?…の姿に、心がいたんでしまう。


話を聞いていると、どうやらブラックウルフが作っていたファームに、ある日突然黒いローブを羽織った人間が現れ、リーダーであったブラックウルフ…おとうさんへと魔法を使い、その身体を操ってフォームの狼を倒した後、そのまま何処かへと連れ去ったようだ。


ただ一人、物陰に隠れて生き残ったこの子は、いなくなった父親の匂いを頼りに後をつけ、ここまできたらしい。


カイトはその事実に心を痛めた。


心無い人間に住処を荒らされ、その後を必死に追いかけ長い距離を旅し、たどり着いた先で死にかけ、命を救われた相手は、追いかけた相手の仇だった。


なんとやるせない事か…。



カイト自身は、あの時の事に後悔は無い。あの時倒さねば、やられていたのは自分の方かもしれなかったからだ。だが、それでも…と思わざるを得ない。




…ねぇ、おにいちゃんは、おとうさんのことしらない?




無垢に見上げるその身に、果たして真実を教えるべきか…。



必死に考えた挙句、カイトはその全てを話す事にした。



自分たちを襲った魔物、その中に父の姿があり、災いをもたらすものとして討った事を。




…最初、その狼は知っているという事実に嬉しそうだった。しかし、死んだ、殺したのは自分だ。と言った所で、悲しみ、次いで怒りの表情を浮かべた。


無理も無いだろうと思う。


だが、それをした理由、戦った時の事を話すうちに、どうやら怒りの感情は薄れていったようだった。



…おとうさんは、わるいことしたの?



「いや…俺は、君のお父さんが何をしたのかは知らない。ただ、村や街の人を襲っていたモンスターの巣にいて、俺達に襲いかかってきた。その事しか知らない」



子犬は、そう…という返事と共に、その身体を伏せ、悲しそうに目を閉じた。



カイトは飛びかかって来なかった事に安堵しつつ、しかしその姿を見てもいられず、「少し外に出る。後でご飯を持って来るから、それまでにどうするか決めておいてくれ」と言い残し、馬車から降りた。



何時の間にか薄暗くなっていた外の風景に、より一層なんとも言われぬ悲しみに身を包まれたまま、みんなの元へと歩いていった。




***********





夕食を済ませたカイトは、あの子犬の分の器を持ち、馬車へと向かった。



馬車の前で深呼吸をし、覚悟を決めて扉を開けると、そこには…只々餌を待ち望む子犬の姿があった。



…それっ!たべていいのっ!?




…どうやら、外の香りが車内にまで届いていたらしい。しかし飛び出していく訳にもいかず、只々持ってきてくれるのを待っていたらしい。



食べてる姿はただの子犬なんだけどなぁ…



その可愛らしい姿と、昼間の姿とのギャップに苦笑しつつ、食べ終わるのを待った。




「どうするか、決めたか?」



いっぱいだけでは足りなかったらしく、その後何度かお代わりをして満足したのか、目の前でだらけている子犬に今後の事を聞いて見た。



…もし、戦いたいと言われれば…受けるしか無いよな…。



正直戦いたいとは思わないし、若干の愛着を持ちつつもある。

しかし、彼がそれを望むなら…。




だが、その心配は杞憂だったようだ。



目の前の子犬は姿勢を正し、連れていってくれと、願い出たのだ。



…曰く…ここから戻ろうにも元の巣は遠い。そして、戻った所ですでに仲間はいない。


他のファームに混ざろうにも、他所から来た自分を受け入れないだろうし、このままここに居ても、おそらく人間の討伐隊が組まれ、襲われるだろうと。


そこまでは、カイトの想像どうりでもあった。


しかし、何故自分と?と聞くと、



…要は、父親を殺した責任をとって、自分を養え…という事だった。


しかし、その瞳に宿るものは少し様子が違うようだった。


…おそらく、もう一人でいるのは嫌なんだろう。捨てないでくれ…そんな心の内を聞いた気がした。



「…わかった。正し、一緒に来るなら、他の人間がいる時は、普通の犬の振りをするんだ。お前は世間ではモンスターと言われる存在。ばれたら、俺の力だけでは守れないから」



…わかった。



こうして、旅の仲間が1人?増える事になった。




後に聞いた話では、こうやって話せるのは、来たの方にある“黒狼の森”という場所に住む一族だけであり、他の場所に住む物達には出来ないらしいという事。


そして、そこに住む者達は黒狼と呼ばれ、他の種より長命で力があり、その中でも一際大きな黒狼達の長は黒狼王と呼ばれ、一種の信仰の様な対象にもなっているとの事だった。


おそらくあの時倒せたのは、隙をついた事も大きかったが、操られて意識を失っていた事が大きかったのだろう。

操られずに戦っていれば負けていたかもしれない…と思いつつ、そうであれば戦ってもいなかったかもしれないな…とも思うのであった。





それから暫く、一緒に旅をする事になった黒狼…クルトと名付けた…の姿を一目みるなり



「きゃー!もふもふー!!」



といきなり叫び飛びかかったルビアやアリシアにこねくり回され、「たすけてー」と涙ながらに訴えて来た事は…うん、目を逸らす事にした。






…おかげで足を噛まれたけど。

って事で、旅の仲間が増えました。

マスコットキャラの登場です!もふもふ!


彼には今後のカイト君を癒すという大きな大きな役割があります。

当然読者様を癒してくれるような事も期待しつつ…成長を祈り…小さいままのがいいのか…?

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