蠢くモノ
微妙にランキングにひっかかっていたのですね、理解出来ました。
11/29*リルム→ルリムに直しました。
その日カイトはいつものように狩りに出かけていた。
流石に狩りの日では後ろをついてくる事もないようで、数少ない息抜きの日になっていた。
今日はガゼットが何か用事があるとかで1人で来ている。
どうもこの間森に来た時に、怪しい気配がした…という事で、街に話を聞きに行っているらしい。
しかし、1人で狩りに出る事も初めてではなく…というか、最近では1人で狩りに出るほうが多くなっていた。
また何か適当な口実でも作って遊びに出かけたんじゃないか?なんて事を考えつつ、カイトは森の奥を目指していた。
今日の目的は、前回来た時に仕掛けていた罠の確認と、矢羽用に使える大きな羽根を持つ、バーツという生き物だ。
バーツはあまり姿を見かけない生き物だったが、以前来た時にファームを見つけたので、そこへ行ってみるつもりだった。
ファームとは、人でいう部落や村と言った感じで、単一種で作られた集落…といった感じだ。
必ずファームが出来ている…という訳でもなく、モンスターや一定以上の知恵を持つ動物でなら珍しくもないが、バーツがファームを作っている事は珍しく、狙い目でもあった。
先ずはファームの方にいってから…かな。
着いたファームでは、今もバーツの群れが羽根を休めているところだった。おそらくその数30以上…この森に生息するほぼ全てが集まっているんじゃないかという位の数だ。
…おかしいな…本来バーツは渡る習性も無いはずだ。卵を産む時期でもないし…何があった…?
ちょっとした異常事態に頭を捻らせるも、ここで1人で悩んでいても仕方がない。今は獲物をとるのが先決。かえってガゼットに相談しよう…。
そう結論付けると、カイトは肩に背負っていた弓をおろし、静かに近寄っていった…。
目標は…3羽…いくぞ…!
手の弓を握りしめ、背負っていた矢筒から矢を引き抜き、限界まで引き絞った弦から矢を撃ち出した!
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街に来ていたガゼットは、いつも顔馴染みの店に顔を出しては、世間話をするとともに情報を集めていた。
「よーうガゼット!久し振りだな。今日はどうした?」
「おう、グラッツ。ちょっと武器の整備と、調達にな」
ここはガイラムの街で一番腕のいい鍛治師のいる工房…といっても二つしかないが。それでも腕は確かだ。ここはよく冒険者も利用しており、出る武器などで何があったかもおおよそわかる。
「ほー…お前もか」
「ん?他にも来てる人間がいるのか?」
ここらへんのモンスターは以前、粗方始末したはずだ、一度掃除したらそう簡単には再発生はしないはずだ。
「あぁ、なんでも、ここ最近近くの街道でよくモンスターが出るらしい。といっても、あまり強いヤツはいないようだが。それでも危険には違いないから…と、駆除の依頼が多くなっているらしい」
「それは…いつ頃からだ?」
「ん…確か…一月前位…だったか?詳しい事が知りたけりゃ、ギルドに行ってみたらどうだ?」
「ギルド…か…」
「まぁ、お前が好きじゃないってのもわかるが、それが手っ取り早いだろ。・・・気になるんだろ?」
「そう…だな…」
ここ何年も近づいていない場所だったが、仕方がない。整備をしている間に顔を出すとするか…。
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結果は5羽…数が数とは言え、単独での狩りならば上場の結果だった。
本来ならば2射目辺りで大体のものが逃げ出す筈だったのが、今回に限っては何故か動きが鈍く、遠くへと逃げないものを優先的に撃ち落とした結果だった。
それでも流石に5羽も落とせば踏ん切りがついたのか、全てのバーツが去っていったが…。
しかし…何かがおかしい…。
森自体が奇妙な静けさで包まれていて、普段ならばそこらを駆け回って入る小動物の姿もない。いったい何が…。
そんな事を考えつつ、罠の方へと足を運ぶカイト。見回り次第、すぐに戻ろう…などと考え、めぐる事半刻程。罠の一つでガサガサと揺れる音がしていた。
…あたりかな?
などと考え歩み寄ると、そこにかかっていたのは、一匹のルリムだった。
珍しいな。こんなところでルリムを見かけるなんて。
本来ルリムはもっと南の方で生息している筈だ。この辺りではまず見ないし、罠にかかるような事もないはずなんだが…。
などと考えつつ、罠を外してやるカイト。正直ルリムを食べる気にもなれず、きっとどこかの家から逃げ出したのが住み着いたんだろう…戻ってから薬を塗ってやろう…。
罠を外し、丁寧に布を巻いて、怪我をしないようにバックパックへと入れたその時、と遠くの茂みがガサガサと揺れ始めた。
…獲物か…?
バックパックを下ろし、身構えた瞬間、その茂みから何かが飛び出して来た!
咄嗟に回避したカイトが見たモノは、自分の身長の半分程の大きさの、緑がかった体表をした、気味の悪い小人のようなモノだった。
片手にナイフの様なものを持ち飛び出して来たソレは、ゴツゴツとした顔に醜悪な笑みを浮かべ、カイトのバックパックを手にしている。
慌てて詰め寄り、腰の剣を引き抜き斬りかかるカイト。出て来た時は遅れをとったが、正面にいるならば別だ。
数歩の距離を一呼吸で詰め寄り、右手の剣を一閃!目の前のイキモノの首を斬り落とした!
崩れ落ちる身体からバックパックを取り返し、その身体を見やる。
…この森でこんなイキモノを見た事はない…まさか…モンスター…?
不吉な予感に襲われたカイト。だが次の瞬間、このモンスターらしきものが現れた茂みから、同じ様な格好をしたイキモノが4体、飛びかかって来た!
…ッ!?まさか、血の匂いに…っ!?
急な展開に驚きを隠せず、しかしこのままではいけないと、バックパックを肩に担ぎ、なんとか退路を確保するために、カイトはそのモンスター達へと剣を向けた。