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変わる日常変わらぬ平穏-2

なんだかアクセスがぽんっと跳ね上がって、嬉しいよりも怖ろしい気持ちが強い…

きっと今日も何処かで見てくるんだろうな…


毎日の日課の鍛練を覗き見られるのは、正直あまりいい気分では無い。

というか、はっきり言うと恥ずかしいのだ。

最初の方は、隠れもせず堂々と、当たり前の様にやってきて、ソレはなんだ、コレはどうするのだと引っ切り無しに聞いてきた。

仕方がないので、やんわりと、丁寧に、遠回しに、邪魔だから来るなと伝えてみた。

それもはじめは伝わらず「妾の事は気にせずともよい!」だの、「妾はただ見ておるだけじゃ!」等と言っていたが…そうじゃなかったから言ったのに…侍従さんの方に視線で訴え続けたらどうにか理解してもらえたようで、正面で居座る事はなくなった。…あの時は殺されるかと思ったけど…。


しかしそのおかげで、今度は何故か物陰から盗み見るようになってしまい、かえって面倒な状況になってしまっている。


どうしよう…いっその事森の中で…いや…もし森に中までついてきたら…


「相変わらず人気者だな」


いつしか手も止まり物思いに耽っていると、いつの間に来たのかフィリップが正面に立っていた。


「あ…こんにちわ、フィリップさん」

「で、どうしたんだ?ぼーっとして。」

「いや…集中できなくて…」


そう言って左手にあった倉庫の陰に視線を移す。

その途端、顔を出していた2人の顔が慌てて引っ込んだ。



…いや…バレバレだから…



はー…っと溜息をつくカイトと、それを見て笑うフィリップ。


「まぁ、気にしていてもしょうがないんじゃないかな?…それより、アベル様がお呼びだよ」

「旦那様が…?」

「あぁ。いつでもいいから、執務室に顔を出して欲しいそうだ」

「…わかりました」


こんな状況じゃ鍛練にならない。先に話を聞きに行こう。

カイトは小屋に戻り剣をおくと、執務室へと向かった。



**********



「失礼します」

「ん…カイトか、早かったな」

「ご用事があると聞いたのですが…」

「ん…まぁ、座ってくれ」


そう言ってアベルはソファに身を沈めた。

慣れない状況にカイトは、身体をカチカチに固めてアベルの言葉を待った。


「話というのはな、お前に何か褒美を出そうと思ってな」

「褒美…ですか?」


思わず首を傾げるカイト。何か褒められるような事をしただろうか?


「以前アリシア様を森で助けたといったな?あれの件だ」

「しかしあれは…」

「確かに、お前達の目的としても、あの獲物を狩る事だったから、結果…としてでしかないが、それでも結果は結果、事実として、お前達に助けられた。だから、何も無しではいかんだろう」

「それではガゼットの方に何かあげていただければ…」

「ガゼットには先に話した。しかし、あやつの方からもカイトになにかやってくれという事でな、お前が来てからだいぶ楽もさせてもらっているから…と言う事らしい」

「はぁ…」


しかし、急に言われても、欲しいものなど何もない。奴隷の身分なのに、お腹いっぱいご飯を食べられ、まともな寝床にありつける。それだけで十分だった。


「流石に・この時期に解放…というのは些か問題になりそうだから、それ以外で…何かないか?」

「望み…ですか…」


解放…は確かに嬉しいが、今更何処かに行く当てもない。それならばここで働いているほうがいいし…なに…か…


「もし…できたら…でいいのですが…」

「ふむ…?」

「妹と・友の行方が知りたいのです」

「ほう…」


それから、カイトは自分が奴隷となった顛末をアベルに語った。

村を襲った盗賊…それから逃げた村人…追手との戦闘…。


「なるほど…それで、生き別れになった妹の安否が知りたいと…」

「はい。場所も離れていますし、3年も前の事ですから、今どこにいるかも、何をしているか…生きているかもわかりませんが…」


カイトには、今、それだけが気がかりだった。あの日生き別れた妹…ちゃんと街に辿り着けたのか…今どこで何をしているか…。


「…わかった。時間はかかるかもしれんが、なんとかしよう」

「…あ…ありがとうございます!」

「あまり、期待はするなよ?」

「はい…探していただけるだけで…」


今までどうする事もできなかった事が、なんとかなるかもしれない。それだけで十分だった。



**********




「ふぅむ…なるほどのう…そんな事情があったとは…」

「姫様、流石にコレは如何なものかと…」


執務室の前、扉に身を寄せる2人の間者…ではなく、アリシアとルビアだった。

いつもよりも早く鍛練を終えた…既に時間などは調べ尽くしてある…カイトがどこに向かうのかと後をつけ、執務室に入った事から何かあったのではと、好奇心…いや、心配になって話を聞いていたのだった。


「そんな理由で奴隷になっていたとは…しかし、妹か…」


父に頼んで探してもらおうか等と考えていると、どうやらカイトが出て来るらしい。慌てて隣で泣いている…カイトの話を聞いて感極まったのか…ルビアを引っ張ってなんとか隠れねば…と、慌てて去って行くアリシア。


その後ろを追いながら、どこでどう育て方を間違えたのだろうか…と、本気で悩み始めるマリアだった。

はい、苦労が耐えませんね、マリアは。

ルビアの天然ぶりがまたなんとも足を引っ張ります。


次回から少し加速していきます。


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