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Dear 狂愛  作者: みの
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8話 同居?遠慮します!

「……せ!……てけ・・・」


 うるさいなぁ……もう、朝? 今日は学校だっけ?


 私が目を覚まして、初めに目に入ったものは、ノリトさんが綾君を、押さえ込んでいるところだった。綾君は、怒って顔をゆで蛸のように真っ赤にさせ、暴言を吐きまくっている。対称的に、ノリトさんは相変わらずの笑顔で、綾君をなだめているのか、煽っているのかわからない言葉で話している。


 おかしい……いや、画的には、正しい。美少年が美人なお兄さんに、押さえ込まれている。しかし、美少年こと綾君は、間違っても不良なのだ。こんなに、大人と子供の、力の差といえるほど弱いはずがない。


 とりあえず、今は場を収めないと!


「2人とも、何してるの?」


「姉貴! 目覚めたのか……くっ」


 綾君は、嬉しそうな顔をした後、現状を思い出したのか、抵抗を続けていた。ノリトさんは、その声が聞こえていないようで、押さえこむ力もそのままに、私に話しかけてくる。


「ああ、トワちゃん。もう大丈夫ですか? 気分は悪くないですか?」


「は、はい。ご迷惑をかけてしまって、すみません」


「それは良かったです。」


「おい!ロン毛野郎、さっさと手を離せよ!」


「それは嫌ですね。離したら、綾くんは僕を殴ろうとするでしょ?」


「当たり前だ! ボコボコにして、そのロン毛を引っこ抜く!」


「引っこ抜かれても、僕は、後ろから着いて行きませんよ?」


「なんの話だよ! 本気マジでムカつく!」


 ピクミ○とか大分前のゲームを持ち出してきましたね、ノリトさん。ピク○ンなら、引っこ抜かれたついでに食べられちゃって下さいよ。私の安全のために――――じゃなくて、喧嘩止めなきゃ。


「弟にはノリトさんを殴らないように、十分言い聞かせますから、離してもらえませんか?」


「そうですねぇ。どうしましょう」


「殴ったりしないわよね!(逆らったら、痛い目に合わすぞ。) 綾君?」


 わたしの満面の笑みという圧力をかける。綾君は、ノリトさんと私を見比べた後、静かに頷いた。


 偉いぞ、それでこそシスコンだ! いい弟を持って姉(偽者だけど)は嬉しいわ。


 それから話は進んだ。ノリトさんは海外で、主人公ヒロインと綾君の両親にスカウトされて、住み込み、3食付きでボロ神社の神主になること承諾した。らしく、ゲームの正規の流れ通り、同居することになった。


 両親よ、何故に海外で、わざわざスカウトするんですか! 殺人鬼(まだ違うが)を家に住まわせるとか、両親は鬼畜過ぎるわ。子供を崖下に落として、登ってきた子供だけを育てる教育方針なの!?


 ノリトさんは自己紹介をすると、質問はないかと聞いてきた。その言葉に、目を輝かせた綾君が、質問を浴びせ続ける。敵意とかじゃない意味で。


 落ち着いた綾君は、状況を理解した途端、手のひらを返したように、ノリトさんに懐いた。なんでも、男兄弟が欲しかったらしい。現金な奴め!


 姉の立場は、どうなるのよ? 可愛さあまって、憎さ百倍なので報復します。目を潤ませ、今にも泣きそうな顔を作り、弱々しい声を出す。


「綾君は、お姉ちゃんなんて、もういらないのね……」


 それを見た綾君は、何らかのショックを受け、自己嫌悪モードに入った。居間の隅で、体育座りをしてブツブツと独り言を言っている。当分は、大人しくしているだろう。


 ノリトさんに話かけようと振り返ると、すぐ傍にいたらしく、軽く肩を抱かれて顔を覗き込まれる。笑顔が怖い。近いよ、来ないで!来ないで! 誰か塩を持ってきて! ?


 ノリトさんの手が動く。そして、私の目元に手を持っていき、さっきの(嘘泣きの)涙を拭ってくれた。優しいな、ノリトさん。お礼を言おうと口を開く前に、ノリトさんが話しかけてきた。


「トワちゃんは、泣き顔も可愛いですね……」――――泣かせたくなる。


 最後にボソッと聞こえた声に、魂が口から出てくる思いだ。血の気が下がっていく、今の私は、さぞかし顔が、快晴の空のように真っ青だろう。こんなイベントあったけ?


 その後、いつの間にか復活した弟は、ノリトさんと私を引き離した。そして、ノリトさんに喧嘩を吹っ掛けていた。姉に近づく男は許せないそうです。……呆れつつも思ってしまう。もっとヤれ。


 喧嘩の途中にノリトさんは何かを思い出したようで、私を見る。


「トワちゃんも、僕には敬語じゃなくてもいいですから」


「はい。考えておきます」


 ノリトさんは、私が敬語のままであることに不満なのか、一瞬だけ悲しそうな顔をした。


 そんな顔しても無駄よ!あなたのフラグは絶対に立てたくない。


 つまり、仲良くする気はない!


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