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Dear 狂愛  作者: みの
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4話 いざ学校!ホスト教師?!スルー!

 いくら考えても、ゲームの内容を詳細には思い出せない。

 

「もう! 私の馬鹿! 何で思い出せないの!」


 布団に寝転がり、顔を枕に埋める。意味もなく、手足をバタバタさせてみる。

 

 私、……何やってるんだ。29歳にもなって、見苦しい。今のゲームの主人公ヒロインの姿でも、綺麗なお姫様が、こんな残念な行動してるなんて、やるせない。って脱線してる場合じゃない!


 高校1年で16歳?時にやった以来だから、13年前!? 昨日の晩御飯も思い出せないのに、13年前の記憶なんて思い出せるわけない!思い出すことを早々と諦める。29年も自分の、残念なお頭と付き合っているから、限界がわかってる――「生活しているうちに、思い出すしかないわね……」

 

 詳細は思い出せないが、いくつかの、悲壮なバッドエンディングが、頭の中でリピートされる。


「うげぇ、スプラッタ……」

  

 自分の残念な記憶能力に呆れてか、現実に迫る死への恐怖なのか、涙が滲んでくる。29歳にもなった女が、そう簡単に泣いてたまるか!乱暴に布団に入り、ギュッと目を瞑って寝た。




 翌日の朝、起きて気づいたこと、私は繊細な人間ではないということだ。昨日は布団に入って3秒もたたずに曝睡していたからね。


 私は、未来から来た青タヌキ型ロボットの名前がタイトルの、主人公の男の子が頭によぎる。


 いや、違うのよ!……って誰に言い訳してるのよ、私!


 居間に移動すると、綾君がトーストとスクランブルエッグ(ベーコン付)を、ちゃぶ台に並べている。


「綾君、おはよう」


「おはよーって、姉貴! まだパジャマなのか! 今日は学校だろ」


「え? ど、どうしよう? 学校って何時から?」


「落ち着け! 学校は8時半からで、今は、7時55分だから十分に間に合うだろ?」


 なんだと! あと約30分!? 今から朝ご飯を食べて、着替えて、化粧して、学校に行くって全然、間に合わないよ!せっかく綾君が作ってくれた朝食をかきこんでむせる。綾君が背中を摩ってくれたり、綾君がこぐ自転車の荷台部分に乗って、2人で途中まで一緒に登校したりとかイベントがあったけど、急いでいるから甘い雰囲気でもなんでもなかった。


 恋人って言うより、なんていうか介護されてる?!


 ピチピチの美少女高校生には化粧は必要なかったので、思ったよりも早く支度ができた。

 今、高校の校門前に立っています! 始業の3分前で間に合った――って間に合うわけないよ!始めてきた学校で、ここ何処?状態だよ。


 昨日の情報収集で、主人公ヒロインのクラスは、1年1組だというこうことは知っていた。しかし、この広い学校で自分の教室を探すことは不可能だ。始業の鐘も鳴ったし、諦めよう! 今日は学校を探検して建物の構造や配置でも知っておくか。無駄に広い学校を見渡す。


 学校の探検をしようと、廊下をウロウロしていると――用務員さんに捕獲された。昆虫採取用の網で?


 用務員さんは何故に、昆虫採取用の網とか持ってるのよ……迷いなく、私の美しい顔に振り下ろすとか正気なの!? 半眼で用務員さんを睨むと、相手も不審な目で私を見てくる。


 授業時間にウロウロしているなんて不審者だと思われたら――

『そこの女! 怪しい奴め、お縄にしてくれる!』

『用務員さん、待って!私はここの生と――

『言い訳は、お奉行様に聞いてもらえ!』

『そんな殺生なぁ。私には病気シスコンの弟がいるんです』


 痛い、痛い! うわ!また妄想の世界に行ってた。

 用務員さん、怪しい目で見るのはいいけど、網が、顔に食い込んでる!  用務員さんに正直に迷ったことを告げると、少し笑った後、網を何処かにしまい、親切に案内してくれた。私は、網の模様が残った顔を摩りながら、用務員さんの後を付いていく。


 私が1年1組についたのは始業の合図の30分後。教室に入ってすぐ、教師と目が合う。


 この人は!攻略対象の教師だ!確か、藤宮フジミヤ キョウで29歳、数学担当。ホストにしかみえないイケメン教師。性格は、俺様でドSは基本装備。いつもダルそうにしているが、しっかり生徒を見守る良い先生で、生徒からの人気が高い。


「遅い! 俺様の授業に遅れるとはいい度胸だな! 遅刻理由を言え!」


「す、すみません! 学校で迷っていました」


「お前、入学して1週間もたってんのに、迷うとか器用だな」


「返す言葉もないです……」


「まあ、何でもいいから席に座れ。 今日は1日中テストだ。 遅れてきたからには、相当、自信があるんだろーな」


 ニヤリと笑う藤宮先生を適当にあしらい、教室に1つだけある空席に座る。


 危ない! 攻略対称キャラクターに目をつけられるなんて、自殺行為だよ! なんとかなったかな?


 テストは中学卒業した生徒の実力を知るためのものらしい。はっきり言って、テストなんて無理だし、嫌いだ! でも中学レベルの問題はなんとか、解くことができた。平均点は取れているはず!


 テストが全て、終わり放課後になった。――――何故、誰も話しかけてこないの!


 友達に話しかけてこられた時のために言葉を準備していたのに! 


 ゲームの知識を必死に思いだした。そういえば、男にモテるヒロインは女の、目の敵にされ、女友達がいない。男友達は、ツンデレ弟に駆除されていた。……わかるよ! 女子達! 私も、可愛い女子なんて、全員、滅べと思ってたし!しかし、逆の立場になってみると、自分が美少女なんて、ありえない! 寂しすぎる!


 このゲームの主人公(ヒロイン)は、友達がいないらしい。

 そんな学生生活は、青春を溝に捨てているようなものじゃないか!絶対に友達つくってみせる!


 いきなり、今時の女子高生に話しかけるのは怖いから、大人しそうな子にしよう!……私って、どんだけビビりなの!?


 私は傍から見てもわかりやすいほど、がっくりと肩を落とした。


 チキンな主人公ヒロインって駄目かしら?



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