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Dear 狂愛  作者: みの
22/30

20話 先生!先生!!

 俄然。ドロドロ……

 回想終わり現在:主人公視点に戻ります。


 藤宮先生に過去の話を聞いた。


「病院のベッドで目が覚めて、百合はもういないって……」


「警察には話したんですか?」


 昔を思い出して疲れた表情をした藤宮先生は、少し老けて見えた。


「言わなかった。いや、言えなかった。何を言っても、車は全焼して証拠はない。それに、俺自身が信じたくなかった。百合が死んだこととか、俺と心中しようとしたこととか、頭がいっぱいで……」


 坂の途中で、車が止まった。道路に他の車は通らないので車が止まっても問題なかった。


「俺のハンドルミスで警察は片付けた。当日は、大雨で視界が悪く、俺は操作を誤った。事故で頭を強く打ったせいで記憶が曖昧になっているってな」


 藤宮先生は車から降りて後部座席から、百合の花束を出してガードレールの側に置く。私も、車から降りて花を手向けたところに手を合わせた。


「ここにも毎年、花を供えに来る」


「あの今更なんですけど、どうして私を連れてきたんですか?」


「今にわかるさ。でも前もって言うなら、俺はお前に謝んなきゃな」


 意味がわからず、首をかしげる。


「餌にしちまって悪かった」


 それだけ言うと、藤宮先生は今来た道を睨む様に、目を細めて見ていた。


 数分もしないうちに黒い普通車が走ってくる。運転席に乗っているのは、宮司の服を着たノリトさんだった。


「ノリトさん……」


車から急いで降りてきたノリトさんは、私の体を触って怪我がないのか確かめる。


「トワちゃん、無事ですか!? 良かった」


「私は大丈夫ですから! 藤宮先生の話を聞いてください」


 ノリトさんは嫌そうに顔を歪めて藤宮先生を視界にいれる。


「何を聞かされたかは知りませんが、トワちゃんはあの男に騙されているんです!」


「則斗さん! お願いです、話を聞いてください!」


 藤宮先生が必死にお願いしても、ノリトさんは頭を縦に振らない所かおかしなことを言い始める。


「トワちゃんも、この男が好きなんですか?」


 どことなく焦点の合わない目をしたノリトさんは、急に笑顔を取り戻す。


「しょうがないですね……あなたが百合を崖から落とした、事実はそれだけですよ」


 ノリトさんは穏やかな顔で崖の下を見つめながら、藤宮先生に近づく。やっと話しを聞いてくれそうな雰囲気になったノリトさんに、藤宮先生は肩の力を抜く。




ドスッ!!―――― 一瞬の出来事だった。




 ノリトさんは藤宮先生の背後に回りこみ手刀をきめる。油断していた藤宮先生は、目を見開いた後、ぐったりと意識を失った。


驚いて藤宮先生の所に駆け寄ろうとするが、ノリトさんに手首を摑まれ傍に行くことはできなかった。


「藤宮先生!! ノリトさん、離して!」


「トワちゃん……君が、悪いんですよ」


 ノリトさんは、乗ってきた黒い車の後部座席に私を押し込む。そして、どこからか取り出したロープで私の両手を縛る。おまけに、前の座席、伸び縮みする首の金属部分に丁寧に固定されて動けなくされた。


「少し待っていて下さいね。すぐ終わりますから」


「ノリトさん、何をする気?」


 ノリトさんは、私の額にキスをして母親が子供に向けるような優しい笑顔で頭を撫でる。


「いい子ですから、大人しくしていて下さい」


ノリトさんは黒皮の手袋をはめると、藤宮先生に近づく。後部座席の窓から見ているしか出来ない自分にイラっとする。


 ノリトさんは、藤宮先生の靴を両方脱がせて、丁寧にガードレールの側に揃える。


 まさか――まさか、嫌な予感がする。当たらないで欲しい。


 藤宮先生の身体を楽々と担ぎ上げたノリトさんは、迷いなくガードレールの方へ歩き――――迷いなく藤宮先生を崖に落とした。


 「藤宮先生!! いやぁぁああああ!」


 ゆっくり落ちていく藤宮先生を、私は壊れたように叫ぶことしか出来なかった。


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