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Dear 狂愛  作者: みの
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9話 ツンデレ弟!健全は不健全!?

 次の日、学校から無事に帰ってきた私は、神社の境内でほうきを持って、掃除をしているノリトさんに出会った。仕事中なので、神主服を着ている。ノリトさんはいつもの2倍は美人度が上がっている。


 制服とか、萌える! ハア、ハア


 弱冠、息が上がった私は、危ない不審者に見えるだろう。いつか、本物の主人公ヒロインに身体を返せって言われそう。いつでも返すけどね!


 私に気付いたノリトさんが、掃除を止めて、いつもの笑顔で近づいてくる。


「トワちゃん、おかえりない」


「ただいま。綾君は家にいますか?」


「さっきまでいたんですが、味噌と醤油を買ってくるって出かけましたよ。急用ですか? 僕でお手伝いできるなら喜んでしますけど」


「違うの! 聞いてみただけだから、何の用事もないわ!」


 慌てて敬語がなくなったがしょうがない。


「そうですか? トワちゃんが望むなら、何でも協力しますから、いつでも来てくださいね」


 そう言って、掃除に戻っていった。


 どうして、ノリトさんは、話を大げさにもっていこうとするわけ?


 そもそも、綾君がいないのはノリトさんのせいだ。ノリトさんは細腰な美人という、みかけのわりに、よく食べるのだ。そして、和食好き。しかし、綾君は主人公ヒロインが洋食好きなため、洋食作りを極め、和食はあまり作らない。そのため和食用の調味料は少なかった。それなのに、ノリトさんは和食を要求し、大量の食事を胃袋に納めた。よってこの家はオイルショックならぬ、調味料ショックを起こし、綾君は、買物に行った。という短いようで長い経緯があった。


 え、私が好きな料理? 長きに渡るコンビニ生活のせいで、私は何でも食べられるし、好きだ。あえて言うなら、手作り料理と、家族で囲む御飯に、飢えている。


 私は、ノリトさんにお礼を言うと、早足で家に入った。扉を丁寧に閉めて、ニヤリとする。今日は、ある重要な目的をはたすのだ。綾君がいないのは好都合!


 私の目的、それは綾君の部屋に侵入すること。昨日、寝る前に思い出したのだ。



 実は、綾君は攻略対象キャラクターではない! 綾君はなかなかの人気で、ファンディスク版が出た時には、攻略対象だからうっかりしていた。

 それで綾君の役割なのだが、乙女ゲームに時々ある、家族や友達は協力者でしたパターンだ。綾君は攻略対象キャラクターのLOVE度を教えてくれる便利キャラクター。ゲームをやっていた当時は、綾君の部屋に入り浸り、状況確認をしていた。


 その機能は健在のはずよね!


 問題はどうやって聞きだすか――――

『綾君、聞きたいことがあるんだけどいいかな?』

『なんだよ、姉貴』

『ちょっと攻略対称キャラクターのLOVE度を教えてくれない?』

『あ゛ぁ? 意味わかんねぇ。こうりゃくたいしょうキャラクターって人か? ラブ度って何だ?』

『なんていうか、仲良し度みたいな』

『で?“誰の”が知りたいんだ?』

『今のところ、ノリトさんと高校の数学教師で藤宮フジミヤ キョウ先生かな』

『……わかった。直接、聞いてきてやる』

『えぇ! 困るよ。そんなの恥ずかしすぎる!』


 綾君に聞きにくるのも緊張したのに!


『安心しろ。 姉貴が結果を知る時には、2人は、もういないから――――それじゃ、イってくる』

『意味深発言過ぎるよ! “2人は”と、“もういないから”の間に、“この世に”って入りそうだから! ちょっと待ちなさい……ってもういないしぃ!』



 現実的に言って、絶対無理! よって家宅捜索をすることにした。


「私の命のためなんだから、綾君にプライバシーはないわ!」


 綾君の部屋に入る。……なんか、思っていたより質素ね。ベッドや勉強机、本棚とタンスがある畳の部屋。参考書や教科書があって、脱いだ学ランもきちんと、ハンガーにかかっている。何の問題もない普通の部屋。


 問題大有りよ!異常すぎるわ!


 綾君は中学3年生、思春期のまっ盛り。だというのに、女性の際どい姿を撮ったポスターや、エロ本どころか、グラビア本もない。そして、漫画雑誌すら1冊もない。


 これじゃあ、健全どころか不健全だよ。どうした!綾君!


 LOVE度の情報だってまだ、手に入れてないし。あと探してない所って、ベッドの下と鍵の掛かった勉強机の引き出しだけ。


 鍵があるんだから、開かないと思って触らなかったけど、一応、試してみるか!


 結果、開いた……でも、開かなければ良かった。引き出しの中には、ワタシが写った写真が、何枚も入っていた。現在の高校セーラー制服(明らかに隠し撮りなもの)から、果ては、乳児期の写真。


 綾君、私に何を求めているのよ!? うぅ、見なかった事にしよう。気を取り直して、ベッドの下をあさる。


 ベッドの下にエロ本があるのは、定石だ。絶対あるに決まっている。手に何かが当たった。


 キタ! 取り出してみると、それは


「ノート?」


 くたびれたノートは所々、暗赤色にくすんでいる。血とかじゃない事を、真剣に祈る。表紙には、“抹殺者リスト~要注意者編~”と物騒なことが書いてあった。ノートを、恐る恐る開く。


 ノートには――――

 藤宮フジミヤ キョウ 殺殺殺

 蒼井アオイ 則斗ノリト 殺

 と書いてあった。


 怖っ! 何なの!? 


 私が、考え抜いた末の結論を言うと、あれは限りなくLOVE度に近いものを示すモノ。私と仲がいい人は、綾君にとって邪魔なのだろう。その結果、この表現が用いられたとか。多分。


 でも、そう考えると私は、藤宮先生と仲が良いことになっている。そんなに話した記憶ないんだけど? まあ、知らない間に、変なフラグ立っていることは、時々ある。注意しないとね。


 むむ? 何かおかしくないかい? ノリトさんは、ともかく。藤宮先生は、高校教師である。しかし、綾君は中学3年生。高校と中学の校舎は少し離れた所にある……どうやって調べた!?


 疲れきった私は部屋に帰り、布団に入る。今日あったことを頭の中で整理する。収穫は、いろいろとあった。しかし、(精神的に)失ったものが大きかった。


「なんか、どっと疲れた!」


 そう言った私が、眠りにつくのは3秒後のこと。


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