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ボクノ世界

作者: 源雪風

「がんばらなきゃいけない。立ち止まっちゃいけない」

いつも心が叫んでいた。

だからがんばった。

立ち止まれなかった。

逃げたっていいのに立ち向かっていた。

そしたらついに動けなくなってしまった。

頭の中はノイズみたいにずっと

「がんばれ」

って誰かの声でいっぱいになった。

「もうダメだよ。無理だよ。十分がんばったよ」

って返事をした。

「お前はダメだからがんばれないんだ」

誰かの声は言った。

「頑張らないとダメ?もう嫌だよ。がんばったって動けなくなるだけだよ」


疲れ果てたせいで、全てが怖く思えた。

笑顔も優しさも全て嘘だと言い聞かせた。

本当だったら重すぎるから。

また動けなくなるから。

いつしか本当のことを言わなくなった。

がんばって嘘をついて生きるようになった。

笑っても心はスカスカで虚しくなった。

気付いたらまたがんばっていた。

「嘘つき」

誰かの声がする。

「それが大人になるってことでしょ」

下手な言い訳を返す。

「君は詐欺師にでもなるのかい」

声はさもおかしそうに言った。

分からなくなった。

何が本当?何が嘘?

視界がぐわんと歪んだ。

頭が真っ白になった。

これは現実?それとも夢?

また動けなくなった。


このままではいけないと焦るほど、現実は歪に形を変えた。

その度、動けなくなった。

だから確かめに行かないと。

何が本当で、何が嘘か。

でも、もう焦ったりがんばったりしない。

分からなくなってしまうから。

上手に歩けないかもしれない。また動けなくなるかもしれない。

だけど見に行きたい。

動けなかった体が、動きたがった。

外へ行きたくなった。

もう大丈夫だと思ったら、体が軽くなった。

遠くまで歩いていけそうだ。


行ってきます。




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― 新着の感想 ―
[一言] やまびこ猫も良かったのですが、りきてっくすさんの感想があったので、私はこちらへ失礼します。 とても素直な話だなぁと、まずはそんなことを思いました。 小説なんて書く人間は私も含め、どこか歪んで…
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