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とある銀河の星間戦争記(仮)  作者: ぼたもち
【第1章】

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9/9

09話:再び幕開け。連邦艦隊総司令官の憂い

【連邦艦隊総指揮官 フェルナー・グラード中将】


強硬偵察に送り出していた分艦隊が――壊滅。

その報告を受け取った瞬間、グラードは会議室へと急いだ。


扉が開いた途端、幕僚たちが一斉に立ち上がり敬礼する。

「形式はいい。報告を。」


「はっ、閣下。それでは……」


室内の机や椅子が床へ収納され、代わりに何もない空間いっぱいに宇宙が投影された。

広々とした会議室は、一瞬にして広大な宇宙空間へ変貌する。


担当官であるメルヴィル中佐が一歩進み出る。

「報告を始めます。本作戦、王国第3艦隊の配置確認および戦力漸減を目的とした第6次強硬偵察作戦ですが――投入戦力は1,000隻。作戦は6月2日から開始され、7日に戦闘に突入しました。その……結果ですが……」


そこまで淡々と話していた中佐の声が、見る見るうちに硬さを帯びていく。


「残存艦132隻を残して……壊滅。敗走しております。」


会議室に重苦しい沈黙が降りた。

続く言葉はさらに重い。


「一方、敵は総数300隻。確認できた損害は――爆散7、大破以下18隻のみ……です」


「一方的だな。」

グラードが静かに言い放つと、中佐は震えた声で返した。


「はっ! この失態は――」


「貴官を責めているわけではない。」

グラードは手を横に振る。

「作戦を承認したのは私だ。それに――過去5度の交戦ではいずれも我が方が勝っていた。その成功が判断を鈍らせたのだろう。」


「申し訳ございません……」

「顔を上げろ。報告を続けよ。」


中佐が宇宙空間の一点――そこに映っている(イナミネ)を指し示す。


「敵の巡航統制艦の1艦ですが。1040時、突如として急加速し、突出しました。

 その後、爆発を起こし、外装が剥離。機関停止。完全な漂流状態に陥りました。同時に通常回線で非常事態発生と救援を送信しています。」


「通常回線で?」

「はい。しかし敵旗艦は無視し、同時に通信妨害を行いました。この段階で、通常通信はすべて途絶えています。」


続けて表示されるのは、アステロイドベルトの岩塊の影から出てしまった複数の敵艦の映像。

動きは拙く、急造艦隊のそれだ。


「これらの状況から攻撃艦隊司令官は――漂流艦を“事故による暴走”と判断したようです。敵戦力の接収と確認のため、1個分艦隊を分離させました。」


「……過去の戦闘でも似た話はあったな。」

グラードが低く呟く。


「はい。急造艦隊特有の指揮混乱とも取れましたので……小官も同様の判断をしたと推測しております。」


「うむ。そう考えるのが自然だろう。」


続く映像が切り替わる。


「1307時。追跡していた分艦隊の統制艦が、漂流していたはずの敵艦(イナミネ)からの一斉射を受け、爆散。」


「念のため、事前に従列艦へ攻撃して擬態か確認していたようですが……動きは皆無。敵指揮官は極めて冷静で、かつ狡猾だったようです。」


「そして……我が艦隊の後背からビーム攻撃を受けました。結果は先程の通りであります。」


グラードは瞑目し、深く息を吐いた。

「後背を取られては――どうしようもあるまい。」


「しかし、さっさと統制艦を沈めるか、追跡に出した分艦隊をもう一つ増やしていれば……!」

中佐が悔しげに拳を握る。


グラードの声は沈痛だが、どこか落ち着いていた。

「過去の勝利による油断があったのだろう。正面に多くの戦力を置きたいという心理も理解できる。いずれにせよ――起きたことを悔やむだけでは意味がない。

 “窮鼠、猫を噛む”だ。これを教訓とせよ。」


「はっ! 敵はこれを機に決戦を挑んでくるでしょうか?」


「分からん。」

グラードは宇宙投影を見据える。

「だが、まだ我が方が優勢だ。後方の混乱が収まれば、いずれ勝敗は決する。功に逸り、無駄に命を浪費する時ではない。

 冷静に構え、敵の動きを注視しろ。――特に、このイナミネの動きには気を配れ。」


「承知しました! すぐに各隊へ通達します!」


「うむ。解散。」


宇宙投影が消え、机と椅子が滑るようにせり上がる。

幕僚たちが退出していくのを見送りながら、グラードは大きく、深いため息をついた。


「……王国め。」


思考が重く沈む。

ソレント沖の勝利で、戦争の帰趨は決したはずだった。

それなのに王国は抵抗を続け、急造艦隊に少年兵乗せて送り出しているという。


――子供の命を捧げてまで守りたいものとは、なんだ。


自問しても、答えは出ない。

王家のためか? その王家は、自らの民を守ろうともしないというのに。


情報環と呼ばれる、知識を詰め込むだけの、そぞましい装置を付けられ、経験もないまま戦場へ投げ出された子供たち――

そして、その子供たちを撃ち落とす自分たち。


「狂気の沙汰だ……」


追跡艦隊の指揮官が初撃で統制艦を撃ち抜かなかった理由も――もしかしたら。

子供たちを殺したくなかったのかもしれない。

戦場では甘い判断と断じねばならないが、心情は、痛いほど理解できた。


本国も権力争いで分裂し、愚かさを露呈している。

権力の果てに何があるのか。王国のような愚昧な指導者がのさばるだけだ。


グラードは重たい身体を立ち上がらせた。


――やらねばならぬ仕事は、山ほどある。


戦いはまだ、終わらない。

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