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とある銀河の星間戦争記(仮)  作者: ぼたもち
【序章】捨てゴマの初陣

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8/9

08話:決着。そして、戦いは続く

【"凪"の時間】

 指揮所に浮かび上がった3次元映像。その中で、無数の光点がゆっくりと、でも確実に、もう一方の光点群に接近していく様子を、ヒロトはじっと見つめていた。

 攻撃陣形を整えた1,000隻のヴァレント連邦強行偵察艦隊が、即校隊が守るアステロイド帯に迫りつつあるのだ。

 あれから2時間。間もなく両者の距離は1.5光秒を切る。交戦開始の距離だ。


 先ほどやられた従列艦のように、ただただ一定の機動をしているだけなら、もっと遠距離からでも弾を当てられる。それはもう単純な物理計算だ。

 ただ、ヒロト達を追跡している分艦隊のように回避機動を取られると、ほぼ命中は期待できない。回避機動により、弾着時に予測される位置が大きく球状に広がってしまうからだ。

 遠距離からの攻撃はその球に向かって針を刺して、当たってくれ。と祈るようなものだ。

 なので、現在では艦を密集させて、突き刺す針、つまり、弾の数を増やすことで、命中率を高めるという、古典的な手法に回帰してしまっている。


 攻撃側も守備側も、そのための陣形を整えつつ、"その時"を待っている。


 一方、ヒロトの分艦隊は、推進器間の暴走事故に見せかけて加速し、その後、これまた漂流に見せかけた慣性航行で移動しているため、守備位置から大きく突出している。

 ただ、方向は連邦艦隊正面ではなく、連邦から見ると側面方向に差し掛かるような位置だ。

 このまま連邦艦隊が守備艦隊の方へ進むとなると、勝手に後方に位置することになる。


 連邦はこれを放置せず、1個分艦隊を切り離して追跡してきている。


 こちらの距離はもう1光秒を切ってしまっている。が、追跡艦隊はさらに速度を上げつつ接近中だ。

 恐らくはヒロト達の分艦隊に追いつき、まるまる拿捕してしまおうという腹積もりなのだろう。

 ーーそう仕向けたのだが。


 そしてヒロト達も"その時"を待っている。



【再び嵐】


「守備艦隊から連邦艦隊に向け質量弾の投射を確認!ほぼ全艦です。一斉射!」

 警戒長アルマーク准尉から報告が入る。


 ヒロトは映像をじっと見つめながら、ひとりごちた。

「始まったか」

 予想通りの展開だ。


「敵は左翼右翼が相互躍進する形のようです。右翼は回避機動に移行しません。そのまま…あ!敵右翼からも攻撃!」


 一気に宇宙空間が、光の軌跡で埋め尽くされる。

 煌めく光、まるで絵画のように美しい。

 しかし、その実、ここは命を懸けた戦場。死の嵐が吹き荒れているのだ。


 攻撃側も防御側も、撃っては移動、撃っては移動と、忙しなく動き回る。

 現時点ではまだ距離が遠い。被害はほとんどない。

 味方艦隊はアステロイドベルトの岩塊をうまく利用して、攻撃した後はすぐに隠れる戦法をとっている。

 連邦艦隊の弾は岩塊に命中して小片をまき散らすか、虚空へと消え去る。

 そのうち、こちらが有利になるだろう。だが――


「敵も手強い。攻め方を学習してきているのか」

 ヒロトは静かに言う。


 敵艦隊の半数が距離を詰め、残りの半数はけん制攻撃を続けている。

 もし距離を詰められたら、回避の余地もなく、数で押し潰される。

 しかも、相手は半数でも500隻。守備艦隊の300隻を圧倒している。


「やっぱり、このままは厳しいよな……」



【“その時”】


 交戦から約1時間が経過。

 連邦艦隊との距離は確実に縮まり、防御艦隊にもついに被害が出始めた。


「警戒長、そろそろだと思うけど…追跡艦隊との距離は?」

 ヒロトが尋ねると、アルマークが映像を切り替え、ヒロトたちの分艦隊と追跡してくる敵艦隊を映し出した。

「もう間もなくですね…」アルマークは距離を示す数字を見つめながら応えた。



「操艦長、イナミネが次に追跡艦隊の統制艦を向くのは?」

「221秒後。次は1,635秒後」


 イナミネは、漂流しているかのように見せかけ、慣性航行している。

 ただ、外装パージで少し力がかかり、今はゆっくりと回転しながら進んでいる。

 追跡艦隊からすると、イナミネが攻撃できたとしても、この状態では攻撃が明後日のほうにしかいかないので脅威にならない。

 この状態である限り敵は悠々と接近してくるだろう。というか、してきている。


「よし、やろう!」

 ヒロトの声が、指揮所内に力強く響く。


「操艦長、10秒前からカウントダウン。武器長、カウントゼロで全門斉射。」

 操艦長セラフィス准尉は操縦桿をしっかり握りしめ、武器長は主砲の発射ボタンに指を置く。指揮所内の空気が再び張り詰め始める。


「30秒前」

 セラフィスの声が響く。


「20秒前」


 ヒロトは拳をぎゅっと握りしめた。額に汗が滲む。時間がやけに長く感じる。


「10秒前、9、8、7、…」


 頼む!うまくいってくれ!


「3、2、1、今!」


「撃てっ!」

 カイテル艦長の号令と同時に、イナミネの先端から8つの光が飛び出し、数瞬後には強烈な光球が見えた。


「命中!敵、追撃艦隊の統制艦が爆散!従列艦も沈黙しています!」


「よし!上手くいった!」

 カイテル艦長が大きく息を吐く。少しだけ肩の力が抜けたようだ。

「はぁ…なんとか、攻撃に反応する前に沈められた。」


「でも、まだ油断はできない。連邦艦隊はこれを観測しているはずだ。」


「操艦長、分艦隊全艦、連邦艦隊右翼方向へ転回!武器長、攻撃をビームに切り替え!」

「了解!」「わかった!」


「警戒長、連邦艦隊の動きに変化は?」

「ありません!引き続き、守備艦隊と交戦中!」


「よし、攻撃開始!」


「承知しました!武器長、敵艦後方にビームを偏向、攻撃開始!撃て!」


 今度は、目に見える変化はない。ビームは光の指向性が強く、肉眼ではほとんど見えない。代わりに、指揮所内の3次元映像にはビームの軌道が示され、敵艦を次々と貫いていった。


 光点が消え、連邦艦隊の艦はまるで光に薙ぎ払われたかのように、次々と消えていく。最左翼の艦だけは、シールドに防がれていたが、それでもほとんどの艦は壊滅した。


「こんなにあっけなく……嘘だろ?」

 普段冷静なハーランが、驚愕の声を上げる。その声には、信じられないという気持ちが滲んでいた。


 他のメンバーも呆然とした様子で映像を見つめ、動けないでいる。


 カイテル艦長がヒロトに声をかける。

「やりましたね…ここまで上手くいくとは…これ、奇跡じゃないですか?」


「いや、皆のおかげだよ。」

 ヒロトは照れくさく顔を伏せる。褒められるのは、どうにも慣れていない。


「敵の残存艦隊は、守備艦隊が追い払うでしょう。というか、もう一目散に後退してますけどね」


「まあ、壊滅…というか、ほぼ全滅だからね。それが正しい選択だと思う」


「我々も帰りましょうか」


「そうだね。指揮は艦長に任せていいかな?」


「はい。まあ、ゆっくりしててください。帰ったら、大変なことになると思いますから」


 ヒロトは席に背を預け、天を仰いだ。

 なんとか勝つことができた。それも、ほぼ無傷で――


 初陣としては上出来だ。いや、できすぎだ。

 そして、今度は決戦かぁ……カイテル艦長の言う通り、これからが本番だ。

 1,000隻近くうち減らしたと言っても、まだ、こちらのほうが数が少ない。


 だけど…と、ヒロトは出撃前のオイゲンとのやりとりを思い出していた。

「まあ…とりあえず…『穴に突っ込んで』やることはできたワケだ…」


 ~序章・完~

最初は1話だけと思った初の執筆活動も、なんとか序章が完結するまで書ききることができました!

駄文でも、読んでくれてる方のおかげです。この場を借りて御礼申し上げます。


さて、これからヒロト達は、いよいよ第3艦隊主力と合流して、ユーリシア星系の命運をかけた戦いに臨むわけですが…どうなることやら

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