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とある銀河の星間戦争記(仮)  作者: ぼたもち
【序章】捨てゴマの初陣

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7/9

07話:接敵。奇策頼りの初陣

【戦闘開始】


「敵との相対距離、2光秒を切りました!」


 警戒長アルマーク准尉の声が、張り詰めた空気をさらに鋭くする。


 ――いよいよ来た。


「全艦、戦闘配置。」


 ヒロトが静かに告げると、カイテル艦長が短く返し、艦内に指示を飛ばした。

 指揮所は一気に緊張の色に染まる。


 ヒロトは情報環に向かって声を落とした。


「ヒロト少尉です。命令じゃないから、そのまま聞いてください。

 これから戦闘に入るけど、できるだけ落ち着いて行動して欲しい。

 イナミネは、ブリーフィングで説明した通り動く。……まあ、たぶん……うまくいくから安心して。

 それと作戦が終わったら、ちゃんと打ち上げも用意してる。実はこっそりと色々積み込んであるんだよね。

 と、いうことで、シャンパンファイトやりたい人は、ちゃんと生き残るように。

 あー……これ以上しゃべると、セラフィス准尉に殺されそうなので終わります」


 軽口を叩くつもりが、緊張でだいぶズレた。


 案の定、セラフィス准尉が殺気を含んだ目で睨んできたが、

 ほかのクルーはくすくすと笑っていて、少しだけ空気がほぐれる。多少は効果あったみたいだ。



 ――そして、ここからが本番だ。


「よし。武器長、お願いします」


「はいはい、『命令』ですからね」

 ハーラン准尉が肩をすくめつつ、事前に仕込んでいたプログラムを起動した。


 次の瞬間、艦全体に振動が走る。

 警報が鳴り響き、表示モニタが赤一色に染まった。指揮所内が急に賑やかになったようだ。


 そんな中、武器長はさらりと報告する。

「予定通り、推進器付近でビーム暴走を起こして、爆発を発生させました。

 敵からは“事故”に見える……はず」


「よし、じゃあ次。操艦長、よろしく」


「どうなってもしらないから!」


 文句を言いながらも、セラフィス准尉の手は迷いなく動く。

 ヒロトの椅子の背もたれに体が押し付けられる。重力制御すら追い付かない加速だ。


「主推進機制御に異常発生!っていう体で、現在、出力120%で急加速中!……って、やっぱり滅茶苦茶よ!」


「まあ、こうするしか思いつかなかったんだよね」


「ああもう!初陣ってもっと華麗に戦うもんじゃないの!?」


「警戒長、従列艦は?」


「1番から11番艦まで加速中。本艦を単純追尾していますが……まあ、こっちが急加速しすぎで、ちょっと遅れてます」


「うん、それでいい」


「敵、先鋒部隊が減速を開始。こちらの行動を察知した模様!」


「よし、もうひとつ。武器長!」


「起爆します」

 再び鋭い揺れ。また、警告灯が次々に点灯する。


 カイテル艦長が淡々と告げる。

「爆発により、推進器周辺の外装がパージされています。

 ですが予定通り、周辺区画は封鎖済み。乗員に被害なし」


「よし。派手にまき散らしてくれ!」


「2光秒ですからね。敵にもしっかり見えているでしょう」


「操艦長、主機関緊急停止。慣性航行に移行」


「主機関緊急停止!――はい、私の出番終わり!後はご自由に!私までこんな寒い芝居に付き合うなんて!」


「はは……ありがとう、セラフィス准尉。警戒長、次いって」


「通常回線開きます。皆さん、静粛に」


 アルマーク准尉はわざとらしく喉を整え――演じた。

「こちら17,233号!非常事態発生!推進器が爆走してまぁす!死にたくない!誰か助けてぇぇぇ!!」

 迫真の悲鳴に、指揮所の面々が吹き出しそうになる。


『こちら守備艦隊旗艦。通常回線の使用は禁止だ。直ちに回線を切れ』


「やだぁぁぁ!助けて!お母さーーん!」


『……聞こえているのか?……妨害を入れる――』


「見捨てないでぇぇ!お母さん!?聞こえる??」

「はい、OK」途端に、指揮所中が笑いに包まれた。


「は、腹痛ぃ……で、敵味方の反応は?」


「敵は“事故”と判断したようです。先鋒部隊から1個分艦隊が分離し、こちらの追跡コースに入りました。味方側は……オイゲン少尉とトルステン少尉が飛び出しましたが、現在後退中。おそらく旗艦から“見捨てろ”とでも指示が出たのでしょう」


 ヒロトは息を吐いた。

「よかった……上手くいった……」


 カイテル艦長が尋ねる。

「しかし、こんな荒業……敵が事故と思わなかったら?」


「そしたら……逃げるしかないね」


「それはそうと、次は追跡してくる分艦隊の処理ですね」


「そうだね。まあ、こっちは既に行動不能で漂流している…

 なら、プログラムで付いてくる従列艦を拿捕したいと思うはず。タダで11隻も頂けるんだからね。この読みが正解だったら、この後、”試し”が飛んでくるはず」


「死んだふりかの“試し”ですね」


 その時、アルマーク准尉が声を上げた。

「味方が攻撃を開始。相対距離1.6光秒。散発的で統制がありません」


「我々を助けるための攻撃かな……いや、騙しててごめんだけど。ライオネル大尉は命令してないと思うしね」


「攻撃は追跡分艦隊の予測進路へ」


 指揮所内に光学観測データを処理した3次元映像と弾道の軌道などのデータが重ねあわされて表示されたが、攻撃はかすりもしていない。

 予測地点に撃ち込んだところで、弾着までにこうも時間があると、よほどの密度で攻撃を浴びせない限り、こうなってしまうのだ。


「あ、また。味方より第2射!ただ、今度は少ないです。3個分艦隊相当」


「あー…ライオネル大尉から中止命令が出たんだろうね。命令無視したのはオイゲンとトルステンと…あと誰??」


「マリア少尉の分艦隊ですね」


「えっ!委員長が?マジか…命令無視してまで…そっか……」


 ことあるごとにガミガミとうるさく、規律を重んじる委員長が命令無視してまで、助けようとしてくれるなんて…

 ヒロトの胸がちくりと痛んだ。


「…3、2、1…弾着、今!…ダメです。やはり全弾命中せず」


「この距離じゃ、あたらないよな…」


「マリアさん…可哀そう…。きっと必死に私たちを助けようとしてくれてる…」

 映像を見ながらセラフィス准尉がぼそっと言う。


「味方より第3射。今度はマリア分艦隊だけです…」


「そっか…」


 また、外れた。指揮所が静まり返る。


 ふいに、ヒロトの脳裏に、皆が止める中、マリアが涙ながらにも必死に攻撃を続行しようとするイメージが浮かんできて、戸惑った…。

 いや、違う違う…芝居だと分かってて、怒りながらも付き合ってくれてるのだと信じたい…


 カイテル艦長がヒロトの肩をぽんと叩いた。

「いやぁ、マリアさん、ヒロト少尉のこと好きなんじゃ――」


「いやいやいや違うでしょ!」


「違うわよ!マリアさんは責任感強いの!

 だから、ヒロト少尉()()()じゃなくて、私たちを助けようとして……ああ……!それなのに!」


「なんかって…それにほら、ブリーフィングでも話したでしょ?『敵を欺くには味方から』って…」


「帰ったら、マリアさんに土下座して謝ってくださいね!」


「……はい」


 第3射目を終えて、マリア分艦隊もついに攻撃は諦めたようだ。

 さすがにもう無意味と悟ったのか、正面の敵に備えるために機動しなければいけないと考えたのか。


「敵先鋒部隊が再び減速、陣形を変えています。他部隊と合流して攻撃陣形を形成する模様」


「だろうね。トルステンたちが派手に撃ってくれたから、敵は“補充艦が来た”と分かったはず。

 合流して数の差で押し込む算段だね。

 で、こちらを追っかけてきている分艦隊はどう?狙ってるタイミングで接触できそうかな?」


「そちらは今のところヒロト少尉の予測範囲内です。ただ、かなり遅いほうの。ですが」


「そっか…味方の損害は減らしたいけど…こればっかりはどうすることもできない…」


 そこへ警報。

 また映像が映し出された。が、今度は写っているのは自分たちの分艦隊だ。


「警告!追尾分艦隊から我々に向けて質量弾の投射を確認!数5!」


「予想より多い!どれ?どれに当たる?」


「待ってください……11番艦です!攻撃は11番艦への直撃コース!」


「よかった…イナミネじゃない。追加は指示はなし。様子を見よう」


 映像に、イナミネを追いかけて、ただただ真っすぐ進む11番艦が映る。

 そこへ5個の光芒が吸い込まれ――貫いた。

 数瞬後、まばゆい光に11番艦は飲み込まれ、消えた。


「11番艦、爆散」


「敵の分艦隊は?第2射の兆候ある?」


「いえ…今のところは…。

 移動攻撃なので、第2射の場合はまた我々の予測進路に向けて回頭するはずですが、今のところその兆しはありません。」


「”試し”の結果、こっちの統制系統は死んでると判断してくれたみたいだね」



【"凪"の時間】


 その後、しばらくの時間、宙域は静寂に包まれた。

 ヒロト達が起こしたトラブルに端を発した突発的な戦闘は終了し、敵味方ともに正面の敵に向けて機動をしていた。

 ヒロト達はただ、3次元映像上でそれらの艦を示す光点の動きを見つめながら、

 ”次の合図”を待っていた。

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