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とある銀河の星間戦争記(仮)  作者: ぼたもち
【序章】捨てゴマの初陣

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2/9

02話:即校。突き付けられた現実

【教官】


 勢いよく開いた扉から、ドタドタと足音を響かせて一人の男が入ってきた。

 そのまま教壇に立つと、彼はぱんと手を叩いた。


「よっし、皆おはよう! そして初めまして!」


 軽い。

 あまりにも軽い。


 ヒロトが最初に抱いた印象はそれだった。

 軍服こそ着ているが、さっきのタキ中将とは対照的だ。

 動きは柔らかく、厳めしさの欠片もない。


「俺の名前はリード。見ての通り軍人だ。階級は中尉。で、現在彼女募集中だ。……が、お前らじゃちょっと足りねえな」


 リード中尉は胸の大きさを手で示してニヤリと笑った。


 ――全員、無反応。


 それでも彼はまったく気にした様子がない。


「ま、なんだ。タキ中将の話は聞いたよな? うんざりしただろ。

 あの人はあの人で色々あるんだ。気にしなくていい。

 ……ま、何を言おうとお前らを戦場に送り出してる時点で、俺らも含めてクソだけどな」


 これにも反応は薄い。

 ただ、先ほどまでの重苦しい空気が少しだけ緩んだように感じられた。

 気のせいかもしれないが、それでもヒロトは肩の力がほんの少しだけ抜けた気がした。


(タキ中将みたいな軍人ばかりじゃないんだな……)


 そんな感想が自然と浮かぶ。



「さて、授業を始めるぞ!」


 手を叩いて、リードは空気を切り替えた。


「俺が主任教官だ。つまりお前らの担任ってわけな。

 時間がねえから、この学校の基礎説明は後で情報環で見とけ。

 自己紹介も適当に済ませとけよ」


 軽い口調だが、内容は重い。

 ヒロトは無意識に背筋を正していた。


「ここでは、“情報環では得られない体験”を中心にやっていく。

 知識は情報環で頭に突っ込める。だが前線じゃ知識だけじゃ死ぬ。だからここに集められてるわけだ」


 その言葉に、教室の空気が再び引き締まる。


「そしてもう一つ大事なことがある」


 リードの声が少しだけ低くなった。



【突き付けられた現実】


「この部屋は艦艇指揮官の養成を行うクラスだ。

 つまりお前らは、厳正なる抽選の結果――前線で艦艇を率いる役割につくことになった」


 ざわっ、と空気が揺れる。

 当然だ。つい数日前まで一般学生だった少年たちが、いきなり「艦艇指揮官」などと告げられれば。


「ただ、抽選とはいったが……本当にくじ引きして決めたわけじゃねえぞ。

 提出された情報環のプロファイル――つまりお前らの性格・成績・反応速度、色々だな。それをまとめて適性を判断している」


(適性……? そんなの、いつの間に)


 ヒロトは眉をひそめた。

 情報環に登録された個人データは、軍にすべて送られている。それは知っていたが――。


「それから、ここは学校っぽいが学校じゃねえ。軍だ。

 この時点でお前らは王立宇宙軍・教育編成集団・第20201教育隊の隊員だ。

 俺は上官。命令違反には罰則があるから気をつけろよ?」


(……決まってるんだな、全部)


 ヒロトは胸の奥が冷えるのを感じた。


 期待していた。

 ほんの少しだけ。

「戦場じゃなくて、星系内の事務仕事に回されるかも」と。

「まだ逃げ道があるんじゃないか」と。


 しかし今、すべてが確定した。


 ――前線の艦艇指揮官。

 ――逃げ道なし。


(……ああ、やっぱり死んだな)


 おちゃらけた態度のリード中尉でさえ、言っていることは現実を突きつけてくる。

 それが余計に重かった。


「じゃあ、さっそく最初の授業を始めるぞ!

 全員、起立! 俺についてこい!」


 リードが勢いよく振り返ると、全員がもぞもぞと立ち上がった。


 ヒロトもその一人だ。

 だが、足は少し震えていた。


 不安しかなかった。

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