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とある銀河の星間戦争記(仮)  作者: ぼたもち
【序章】捨てゴマの初陣

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1/9

01話:当選通知。諦めの初登校

【プロローグ】


 星暦497年。

 宇宙では今、二つの国家――ヴァレント連邦国とユーリシア王国が、生き残りをかけて戦っていた。


 最初はユーリシアが優勢だった。いくつもの会戦に勝利し、国民も「このまま押し切れる」と信じていた。

 しかし、戦争は甘くない。

 国力に勝るヴァレントが徐々に反撃を始め、戦線は次第に押し戻されていく。


 そして運命の“ソレント沖会戦”。

 ユーリシアは歴史的な大敗を喫し、二十あった有人惑星のほとんどを失った。

 残るは本星のみ――。誰もが敗北を覚悟した。


 だが、勝利目前だったヴァレントのほうが、そこで足を滑らせる。

 戦後の主導権争いから国内で派閥間の対立が激化し、ついには艦隊の多くを呼び戻して内戦を始めてしまったのだ。


 その隙に、ユーリシアはわずかな戦力を再編成。なんとか戦線を立て直すことに成功した。

 ――ただし、その代償は重い。


 国はついに、徴兵年齢の大幅引き下げに踏み切る。

 少年たちを、戦場へ送るのだ。



【目覚め】


 耳元のアラームが爆発したみたいに鳴り響き、ヒロトは布団の中で飛び起きた。


「……うるさっ」


 情報環に軽く触れて音を止める。ぼんやりした視界が徐々に明るくなり、壁に掛けられた深い紺色の軍服が映り込んだ。


「……そっか。今日から、即校か」


 気の乗らない声が思わず漏れる。

 重い体を起こし、朝の支度をして軍服に袖を通す。

 祖母に挨拶して、家を出た。


 両親はいない。ソレント沖会戦で戦死した。

 この国では、珍しくも何ともない話だ。


 家の前に停めてあるフロートに乗ると、情報環が自動運転を開始し、乗り物はふわりと浮き上がった。

 運転は全部自動なので、ヒロトはただ空を滑る景色をぼんやり眺めるだけ。


(両親が死んだと聞いたときは、ヴァレントを全員ぶっ殺してやる、とか思ってたんだけどな……)


 その決意も、戦況を調べていくうちに溶けてなくなった。

 どう考えても、前線に行けば死ぬだけだ。


 怒りも、悲しみも、全部どこかへ消えた。

 ヒロトは空っぽになったみたいに、気力のない日々を過ごしてきた。


 そんな時に飛び込んできた徴兵年齢引き下げのニュース。

 そして、17歳の誕生日に届いた「当選」の文字。


(“当選”ね……笑えないな)




【即校】


 “即校(そっこう)”。正式名称は「ユーリシア救国義士即成学校」。

 名前だけ聞くと立派だが、実態は前線の穴を埋めるための急造育成機関だ。

 卒業して前線に行くとほとんどが速攻で戦死することから、若者の間では

速攻(そっこう)で死ぬ、即校(そっこう)

という名前で定着している。

 即校の卒業生で編成された急造部隊は、「即校隊」と揶揄されている。


 フロートが自動で校門前に降り立つと、ヒロトが降りた瞬間、チャージボックスに向かって飛んでいった。


 校舎自体は普通の高校とほとんど変わらない。徴用されたもので、新築でもなんでもない。


 ただ一つ違うのは――


 タタタタタッ!!


 遠くから聞こえる、乾いた連続音。

 大昔の火薬銃の音らしい。

 宇宙艦の建造に資源を全部突っ込んだ結果、ビーム兵器が足りず、本当に火薬銃を使うしかなくなったという話だ。


(まあ、敵の防護服にはほとんど効かないって聞いたけど……。音だけは派手だよな)


 そんなことを考えながら校舎に入り、情報環の矢印に従って階段を上がる。表示された行先は「201号室」。



【201号室】


 教室にはすでに大勢の少年たちが座っていた。

 ヒロトの知っている顔は、ほとんどいない。


 情報環に席が示され、ヒロトは指定された席へと歩いていく。腰を下ろした瞬間――


 視界いっぱいに、中年軍人の顔が投影された。


「ヒロト君! ユーリシア救国義士即成学校への入学、おめでとう!」


 やたら声がでかい。


「私は王国宇宙軍、教育編成集団司令官のタキ中将である!」


(……いや、別に入学したかったわけじゃないんですが)


 ヒロトの心のツッコミを無視して、タキ中将はさらに声を張り上げる。


「君も知っている通り、我が王国は現在、ほんの少しだけ劣勢に立たされている! だが心配は無用だ! 我らがユーリシア陛下が見守る限り、蛮族ヴァレントに敗北などあり得ない!!」


 顔を真っ赤にし、青筋まで浮かべながらの熱弁。

 ヒロトの胸のあたりが、どんどん冷えていく。


「今日から君も王国宇宙軍の一員だ! 最新鋭の武器も用意してある! 愛国心さえあれば、蛮族など一撃粉砕であるっ!!」


 演説が熱くなればなるほど、ヒロトの心は逆方向へ落ちていく。


(……ああ。これは、ダメなやつだ)


 ヒロトは指先で軽く弾く仕草をする。

 それに反応して、タキ中将の映像は視界の外へと追いやられた。


「はぁ……もう、駄目なんじゃないのか、これ」


 ほとんど聞こえない小さな呟き。

 だが、その声は――勢いよく扉を開けて入ってきた誰かの騒がしい足音に、あっさり掻き消された。

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