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第十章:揺れる友情と決意

五月の風が校庭を吹き抜け、新緑の香りを運んできた。柊木康介は教室の窓際で、その景色をぼんやりと眺めていた。新学期が始まってから一か月が過ぎ、クラスの雰囲気も少しずつ馴染んできた。しかし、康介の心にはまだ整理のつかない思いが渦巻いていた。


「康介、ちょっといいか?」


放課後、教室でノートを片付けていた康介に、須賀野圭一が声をかけた。その表情はどこか真剣で、普段の明るさとは違う空気をまとっている。


「どうしたんだ、圭一?」


「話したいことがある。少し付き合ってくれないか?」


康介は圭一の提案に頷き、二人で校舎を出た。向かった先は校庭の片隅にあるベンチだった。放課後の静けさが心地よく、二人の影が長く伸びていた。


「康介、俺、最近どうしても気になってることがあってさ。」


圭一が口を開いたその言葉に、康介の心臓が小さく跳ねた。彼が何を話そうとしているのか、漠然と予感があったからだ。


「飛鳥のことだろ?」


康介が先回りするように言うと、圭一は驚いたような顔をした。しかし、その表情はすぐに真剣なものへと変わった。


「そうだ。康介、俺たちは親友だよな?」


「もちろん。」


「だったら正直に教えてほしい。お前、飛鳥のこと、どう思ってる?」


圭一の言葉は鋭く、康介の胸に深く突き刺さった。その質問に正直に答えれば、今の関係が崩れるかもしれない。だが、嘘をつけば、それもまた自分を苦しめることになる。


「……正直、好きだよ。」


康介は視線を落としながらも、覚悟を決めて答えた。圭一はしばらく沈黙した後、小さく笑った。


「やっぱりな。なんとなくそんな気がしてた。」


その言葉に康介は驚いた。圭一が怒るどころか、どこか納得したような表情を浮かべているからだ。


「お前が飛鳥を好きなのは分かる。でも俺だって、飛鳥が大事なんだ。」


圭一の声には迷いがなかった。その真っ直ぐな思いが康介の胸を打つ。


「だからさ、康介。俺たちは正々堂々と勝負しよう。」


「勝負?」


「ああ。お互いに飛鳥を振り向かせる努力をする。それで決まらなければ、それが運命だ。」


圭一の提案に康介は戸惑いを覚えた。しかし、彼の真剣な表情を見ると、それを否定することはできなかった。


「分かった。俺も全力でやる。」


康介は圭一と握手を交わし、二人の間にある種の約束が生まれた。その瞬間、康介の心には新たな決意が芽生えた。


次の日、康介は少し早めに登校しようと心に決めた。飛鳥と過ごす時間を増やすことが、彼にとって最初の一歩だった。家を出て歩いていると、ちょうど飛鳥が待ち合わせ場所に到着するところだった。


「おはよう、康介くん。今日も早いね。」


飛鳥の明るい声に康介は笑みを浮かべた。


「たまには早起きも悪くないからさ。」


二人は並んで歩きながら、日常の話題で盛り上がった。飛鳥の笑顔を見るたびに、康介の決意は強くなる。圭一との約束を果たすためにも、自分の気持ちを伝えるためにも、この時間を大切にしたいと思った。


その日、放課後に飛鳥と一緒に帰る道すがら、康介は勇気を出して切り出した。


「飛鳥、ちょっと聞いてもいいか?」


「何?」


「お前さ、圭一のどこが好きなんだ?」


康介の問いに、飛鳥は少し考えるような仕草を見せた。


「圭一くんはね、とにかく明るくて元気で、一緒にいると元気をもらえるんだ。それに、私が困ってる時はいつも助けてくれる。」


その答えに、康介は少し胸が痛んだ。飛鳥の中で圭一が大きな存在であることを改めて実感させられたからだ。


「でもね。」


飛鳥が少し視線を落としながら続けた。


「康介くんも、そういうところあるよね。優しくて頼りがいがあって。」


その言葉に康介の心は大きく揺れた。飛鳥の中に自分の存在があると感じられたからだ。


「ありがとう。俺、これからも飛鳥のこと、ちゃんと支えたいと思ってる。」


飛鳥は微笑みながら、小さく頷いた。その姿を見て、康介の胸に熱い思いがこみ上げてきた。


帰宅した康介は、今日一日の出来事を振り返りながら自分の部屋で考え込んでいた。圭一との勝負、飛鳥の気持ち、自分の覚悟――すべてが交錯する中で、康介の決意はますます強くなっていく。


「絶対に後悔しないようにしよう。」


そう心に誓った康介は、明日も飛鳥と過ごす時間を大切にしようと決めた。

実は、この作品とは別に○○×デレデレシリーズを書いています。今はヤンヤン×デレデレ ヤンデレとヤンデレのカップルはどうなっちゃうのかといった作品を連載しています。よかったら読んでね!

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