夢現
うるさいくらいに雨の音が聞こえる。濡れた制服が肌にへばりついて気持ち悪い。隣に歩く友人が雨の音に負けないよう声を張り上げる。
「マジでこんなに酷くなるなら、もう少し早く学校出ればよかった、サイアクー」
「『もうすぐ晴れる気がする』って言ったのは誰だっけ?」
「===じゃ、なかった?」
負けじと声を張り上げるが、都合よく雨にかき消されたようだ。
雨はどんどん、ひどくなっていく。
「それじゃぁ、明日ね===」
「休校にならなければね」
ひどくなった雨のせいで、見えにくい視界の中、小さく手を降る。服も髪もぐっしょりと濡れ、傘をさす意味がなくなっていく。
「早く帰ろ」
元気を出すため小さく声に出す。
川を覗くと、真っ茶色の濁流が流れているのが分かる。豪雨の日、川や田んぼに近づくなと言われるがこの橋を渡らないと家に帰れないのでしかたがない。橋に歩みを進めた。
(この橋、来週あたりに補修工事をするんだっけか)
半分くらいまで歩いたところだった。雷が落ちたのが見えた。
日常が壊れる音とはあんな音をさすのかもしれない。
「びっくりした」
小さな独り言を、ビシバシという音が遮る。音の正体に気づいたときにはもう遅かった。足元のヒビが広がっていく。
「助けっ
かすかな声は橋と共に川へと落ちた。
濁った水の中をもがいている。泳ぎ方も、パニックになってがいけないことも知っていた。だけど、頭の思考がめちゃくちゃになってどうにもならない。
なんとか、水から顔を出す。思いっきり酸素を吸う
「お母さ、
だけど、それが最後に見た地上だった。
苦しくて、苦しくて、寒くて、そして、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、
「く、、ら、、く、ら、、くじら、、くじらちゃん」
激しい揺さぶりと共に目を覚ました。気づかないうちに、うつ伏せで寝たせいで苦しく、布団を放り投げていたようで寒い。目を開けると心配そうな夢奈と明良がいた。
「くじら、大丈夫か?、おまえずっと呻いていたんだ」
「熱はないね、嫌な夢でも見た?」
ボーとした頭でさっきの夢を思い出す。不思議で怖くて、懐かしい夢だった気がする。
「ごめん、変な夢をみた」
「なんか、あったら言えよ」
明良が優しい言葉をかける。
「私にもいってね。なんとかしてあげるかもしれないよ」
ニコっと笑う笑顔は少し腹黒さを感じてしまう。
ふと、一人いないことに気がついた・
「蓬、は何処に行ったの?」
からっぽのベットが一つ空いている。
夢奈と明良が顔を見合わせていった。
「それが、気がついたらいなくて」
お久しぶりです。これからも、ゆっくりと投稿していく予定なので見ていただけると嬉しいです。
一ヶ月以内に投稿を目指します。