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部活動見学後2

「それじゃぁ、入部届を明日までに全員提出すること。決まらない場合は先生が相談にのるから。よし、解散」

ざわざわと生徒達が動き始める。

「どこにしたのお前」

「そりゃぁ、もちろん空中部!」


空中部とは要するに箒に乗る部活動だ。陸上部と違って空中でするから、空中部。なんか、もう少しあるような。気がしなくもない。

夢奈もよもぎも明良も、それぞれ家庭科部、薬草研究部、陸上部に決めたらしい。

一方私は真っ白の入部届けを眺めている。

この学校には全員部活に所属すること、という嫌な校則がある。


「どれにしようかな」

無意識に独り言が漏れる。色々な部活を考えたが、なかなか勇気を絞れない。ぐるぐると思考を巡らせていると


「くじらちゃん決めた?」

にっこりと花が開くように笑いかけるのは、夢奈だ。

花のような少女だが、しっかり棘を隠していることに最近気づいてきた。

「探検部にするとは言ってないよ」

「そんな〜」

困ったように小首をかしげる姿が様になっている。

「でも、まだ決めてないんでしょ」

急に弱いところを刺してくる。

断ったものの決まっていないのが現実だ。

練習の多い運動部は嫌だ、音楽には興味がない。自然と絞られた候補たちは不思議なことにどこも事件を起こしている。というより、全ての部活がやらかしている。

(この学校、治安が悪いな)

入学した以上、もう逃げられない。


実際、探検部に入りたい気持ちはある。昔から、冒険することは好きだ。それに学校の地下のダンジョンという単語に心惹かれる。

しかし、あと一押しが足りない。


そんな雰囲気を察したのか、夢奈の口角がニッと上がった。そっと耳に口を近づけると、

「家庭科でお菓子を作るんだけど、甘いの好き?」

ピクリと反応すると空中で目が合う。


「部屋のみんなに分けてあげたいんだけど、分けるには少ない時もあるよね」


「お兄ちゃんとおんなじ部活だったらなぁ〜」


ペンを手に取る。決意は固まった。


「くじら、探検部にしたんだ」

夜ご飯を食べお風呂に入り、寝るまでの暇つぶし時間。気づいたら仲良くなった、同室たちと話していた。


「まぁ、いろいろあって」

もちろんお菓子目当てだけではない、最後の一押しがお菓子だっただけだ。


「珍しい薬草があったら分けてね。」

急に本から顔を上げたよもぎが言う。いつも、本を読んでいて、会話を聞いているように見えない彼女だが、急に会話に入ってくる事がある。彼女なりに心を開いているのだろうか。


「明日から部活か〜」

嬉しそうにメラが言う。

「それじゃ、おやすみ」


明日への期待と大きすぎる不安を抱えて眠る。

ぐるぐると回るしか思考は暗い暗い水の中に落ちていく。

水は悪夢へと通じていく。



かなりお久しぶりの投稿です。間隔は空きますがのんびり投稿する予定なので見ていただけると嬉しいです。

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