はじまり
初めて書くので温かい目で見守っていただけると幸いです。
暗い暗い部屋の中、人工の光に照らされて一人の人間が座っていた。
「ようやく、ようやくか」
嬉しそうな声が湿気た部屋の中に響いた。
「あぁ、君たちの犠牲も無駄にならずに済んだ」
愛おしそうに撫でられた少女はピクリとも動かない。動くことができない。
誰も聞かないその声を闇だけが聞いていた。
「トリウィア魔法学園、数々の優秀な生徒を...」
青髪の少女がパンフレットを読みながらあるいている。
その瞳は期待と希望に満ち溢れていた。
「そこに書いてある話、読んでも意味ないから」
同じ髪の少女がそれを訂正する。身長は違うが、同じ青色の目と雰囲気が姉妹であるという事実を裏付ける。
青髪の少女が持つパンフレットにはこう書いてあった。
【トリウィア魔法学園】
この学園では子どもたちの無限の可能性を広げ、誰かのために活躍する魔法使いに育てます。
寮制のこの学園では、部活動にも力を入れており、12〜18歳の子供たちが協力することで人生において大切なことを学べます。そして,,,
あとは姉の言った通りありきたりなつまらない言葉が羅列されている。
それより彼女が気になるのは部活の欄だ。
「どれにしようかなぁ」
無意識のうちに顔がほころぶ。
「まだ決めてなかったの?まぁいいけどさ、部活動紹介があるからその時決めればいいでしょ」
2つ上の姉は顔をしかめていた。
これからの希望に満ち溢れた未来の象徴、パンフレットは高く掲げられた。
澄み渡る空に高々と掲げる
どうやら期待が高すぎたようだ。
希望に溢れた未来は風にさらわれた。
「やべ」
気づいたときには、すでに空高く舞い上がった。
一般家庭産まれ
姉が一人
成績は中の下、運動神経は中の上(水泳を除く)
水属性
普通
今日ここにトリウィア魔法学園一年生という肩書がたされる
私こと”水野くじら”を表すと上記のとおりである
姉や友人が言うに
「普通」
「うーん、えっとねちょっと大人っぽいよね、あの落ち着いてるとかじゃなくて。四年生ぐらいの落ち着き」
要するに普通である。
逆転的に考えれば普通とは主人公らしいということである。
くだらない事を考えているとようやくパンフレットに追いついた
入口を間違えたパンフレットは校門から離れたところに張り付いている。
(さっさと回収して入学式に行こう)
パンフレットに手が触れた瞬間だった
「やっと、見つけた」
頭を軽く殴られたような感覚に思わずしゃがみ込んだ
どのくらいたっただろう
時計を見ると数分しか経っていない
心臓のうるささがさっきの出来事を裏付ける
ゆっくりと深呼吸しあたりを見回しても誰もいない
「なんだったの、今の」
「パンフレット見つけられた?」
少し悔しいが、姉の顔を見ると少し安心する
私の姉”水野くらげ”は一言で言えば”絶賛反抗期中のギャル未満”である
一言では足りなかったが此のとおりである
来年には進化してギャルになり反抗期は悪化するだろう
そのイライラに妹を巻き込むのはやめていただきたい
「なんか、失礼なこと考えてない?」
私に首を横にふる以外の選択肢はなかった
「そんなに走ったの?汗だくじゃん」
姉がハンカチを出しゴシゴシと額をふく
やや痛いがその優しさがしみる
先程の一言に優しいを足すべきかもしれない
「じゃぁ、あたし行くから」
スタスタとひとりでに走っていった
優しいを足すにはまだ早かったようだ
なんとか入学式にたどり着き席に座る
隣に座っている二人組は友人同士なのか仲よさげにはなしていて、なんだか気まずい
逆隣にまだ人は座っていない
暇だ
先程の出来事は何だったのだろう
あの声は私に当てたとは限らない
近くに誰かがいていたずらを仕掛けたのかもしれない
だけど私はあの声を知っているのだ
だけど誰だか思い出せない
あの声に懐かしさと同時に恐怖を感じた
その理由も分からない
私はあの人に会ったことがあるはずだ、だけど会ったことがないはずである
考えれば考えるほどわからなくなり頭がぐるぐるする。
確かに知っているのだ、はずなのだ
思い出せないということは大事ではないということ
こういうことはよくあったが忘れるのが一番いい方法だ
そのうち思い出すだろと考えることを放棄する
気がつくと横に一人の少女が座っていた