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2回転目

 とあるファミレスにて監督が取り仕切る毎月最週末恒例の会議が行われている。


 「これより7月の報告会を始めます」

 四人掛けのテーブル席での基本陣形は、上座に鈴が一人、その向かいに真七海と桜坊が二人で座る、二人の位置は入れ替わる事もあるが真七海が奥を好んで取る事が多い。


 「まず私の今月の結果は稼働日7日で差枚数はプラス3200枚、続いて間中ね稼働日は私と同じで7日差枚数はギリプラス300枚、まぁプラスに終われたから良しとしよう、最後にチャク、今月も頑張ってくれました、稼働日5日でプラス8900枚でフィニッシュです」

 「おぉ引神様ぁありがとうございます」

 

 この会議には明確な目的がある、各々が遊技中に肩からぶら下げているサコッシュ、これは3人で買い物に出掛けた時にセレクトショップで見つけたアウトドアブランドの物だ、互いに好きな色を選び真七海はパープル(金と赤が無かった為)、桜坊がピンク、鈴がターコイズ、予備でブラックを購入した。

 このサコッシュは毎回集合時に配布、遊技終了時に回収と鈴が管理している、各自に任せておくのが一番楽ではあるが、案の定忘れる輩が定期的現れるため、現在の管理体制に落ち着いた。

 中身は当日遊技するホールの会員カードとポケットティッシュとウェットティッシュそして軍資金30k、真七海には話していないがチャクのには毎回グミを入れてあげている。

 会話や遊技中にもメッセージのやり取りがある為、メンバーの差枚状況は互いにある程度把握している、それでも鈴がこの会議を開く目的は真七海が持ってくる情報と桜坊が見つけてくる何気ない"気付き"

 「じゃあ間中、今月はどうだった?」

 「はい、まず錦糸町のE ストライクの演者来店にちょっと癖がありまして、前は有名なライターさんとか定期的に呼んでるイメージでしたけど、先月後半からはインフルエンサー系が増えてきてます、いや増えてきていると言うか今月の来店は全部そうでした、一応毎回来店告知があった時に名前を見て各S N S を調べるんですけど、スロットに腰を据えてる感じではないです」

 「なるほどねぇ、節約体制に入ったか? あそこは最近行けてなかったけど、データサイト見る限り大きな上げ下げは無いわねぇ、確かEストはゴルフ事業もやってるから関係性がそこにあるかも知れないわ」

 「あっいましたゴルフの投稿している人、じゃあもう少し掘ってみますね、あと五月にオープンした浅草のエイムズですが土日の抽選参加人数が300人前後に落ち着いてきました、初月のあの利益無視の爆発は終わった感じですけど、まだまだ全然強いです、来月から本格的に参戦希望します」

 「私は全然いいわよ、むしろ早く行きたいぐらい、問題はアンタよ間中」

 「大丈夫です、技術介入機、勉強中です」

 エイムズはスロット設置台数の約半分が技術介入機とノーマルタイプで構成されている昨今のAT機全盛期にしては珍しいホールだ。

 「分かったわ、来月スケジュールに入れとく、実はあんた用の小役カウンターはもう用意してるのよ」

 「ありがとうございます」

 「いいなぁカンちゃん、私もアレ欲しい」

 「何言ってるの、チャクには何でも買ってあげるわよ」

 「やったー」

 体力の無い桜坊は一日長くても六時間程しか遊技が出来ない、小役カウンターを使う労力によって、ただでさえ短い稼働時間が余計に短縮される恐れはあるが、この神童をより深くスロットと結びつける事が自分に与えられた役割だと鈴は考える。


 「チャクは最近なにか変化はあった?」 

 「うん、アランナでコーヒーのお姉さんが持ってくるメニューにオーツミルクが追加で選べるようになってたよ、美味しかったけど普通のミルクとの違いはわかんなかった、カンちゃん飲んだ?」

 「ううん知らなかった、ちゃんとあのメニュー見た事なかったし、最近は基本スマスロで、あそこデータグラフが見づらいから変な数の持ちメダル減ると有利区間の計算してる時少し厄介になると思って頼めてないんだ」

 「私も知らなかったわ、良い情報よチャク、私オーツミルク好きなの」

 「結構女子ですね監督」

 「牛乳よりカロリー低いからおすすめよ、間中も飲みなさい、アンタ最近顔丸いわよ」

 「丸くないです! え? 丸くないよね? チャク」

 真七海の顔を触りながら桜坊が確かめる、二人は小学校と高校の同級生である。

 「うーん、まだ大丈夫かな」

 「監督、まだ大丈夫です」

 この二人のやり取りは鈴にとって若干の羨ましさもあり、無視をする。

 

 「次の土曜は納車だからホール行けないわよ」

 「分かってます、いよいよですね」

 「やったねカンちゃん」

 

 ちょうど一月前、真七美達はスロットで貯めてきた勝ち分で念願の中古車を購入した。

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