第65話 力の継承 魔王ガリア&青の勇者タイチ
最後の力の継承
急に目の前に見える状況が変わったことに驚きました。
どこかの丘? 山? の上で、ここからの景色が綺麗だなと思えるような場所です。質素ですですが、お墓のような物もあります。
カスミ:
ここは?
賢者アレク:
青の勇者様の墓前じゃ。
カスミ:
どうしてこんな所にお墓があるのですか?
賢者アレク:
青の勇者様がここからの眺めを一番気に入っていたからじゃな。
ここは儂ら「青の勇者パーティー」の秘密基地でもあるんじゃ。
青の勇者様のお墓と言っても時が経てば荒らされないとは断言も出来んし風化も逃れることは出来ない。
だからこそ、ここに秘密基地を作り青の勇者様の墓を守っておる訳じゃな。
さぁ、ここから入れるから詳しい話は中でしようじゃないか。
賢者アレク:
ようこそ。青の勇者パーティーの秘密基地へ。
何もない所じゃが自由に寛いでくれ。
秘密基地と言う名ですが、本当に何もない部屋です。
物は風化して無くなってしまう可能性があるので、マジックアイテムの類や保管の魔法が掛かった物しか置けないんだとか。
後は、魔石が動力源となっている空調関係は改造され天然の魔力を取り込むように作られてるらしいです。
なので、何も無いけど綺麗な状態が保たれたままの部屋です。埃一つさえもない状態に驚きもします。
長年使われていない部屋がこんなにきれいな状態で維持されている方が珍しいからです。
例えるなら、百年や二百年放置され続けていた家・屋敷が突然家主が住み始めても掃除なんてする必要がない状態なのだから・・・。
賢者アレク:
当初の予定とは変わってしまったけど、魔王ガリアと青の勇者様の力を継承して貰おうと思う。
魔王ガリア:
初めましてだね。お嬢ちゃん。
俺は魔王ガリアと呼ばれている者だ。
カスミ:
初めましてです。
カスミールと申します。
カスミールという名は長いし言い辛いので、気軽にカスミと呼んで下さい。
魔王ガリア:
こんな娘に俺の力を継承させてもう大丈夫なのかい?
青の勇者殿よ。
タイチ:
初めましてだね。
青の勇者と呼ばれている元の世界の名を「川岸太一」という者だ。
カスミ:
川岸太一?
何処かで聞いたことがあるようなお名前ですが、元の世界では有名な方ですか?
タイチ:
元の世界では二十五歳という若さで亡くなったんだから、知っているはずがないと思うけど・・・町工場のただの技術者だよ。
カスミ:
町工場の技術者? 何かの実験とか行う人ですか?
何処かの工場で行われた実験が失敗して大爆発を引き起こした人がいたんですが知りませんか?
タイチ:
アハハハハ。それは僕とは違う人物だね。
ただの工場に設置されている機械を動かせるだけだ。
実験なんてするのは技術者じゃなくて科学者とかの類になるからさ。
カスミ:
そうですか。
魔王ガリア:
それで俺の力は継承させても問題ないのか?
タイチ:
大丈夫だと思うよ。
僕の計算だと、勇者、聖女、賢者、ソードマスター、クラフトマスターのクラスが一つになるんだ。
万能な力を発現するはずさ。
カスミ:
えっ?
ソードマスター、クラフトマスターって何でしょうか?
タイチ:
あっ? 知らなかったのかい?
剣神ジョアは、ソードマスターといいうクラス。
剣や刀など刀剣類を使い熟すクラスさ。
剣神と侍大将のクラスの両方を自由に使えるクラスと思ってくれて問題ないはずさ。
魔王ガリアは、クラフトマスターというクラス。
錬金術や鍛冶師など物作りに長けているクラスさ。
ただ、魔族だというとその種族のために人やエルフからは避けられてはいる。
魔族の王=魔王という役割から魔王と呼ばれているだけであって魔王というクラスは存在しないのさ。
ガリアの技術力があったからこそ、世界の脅威を封印することが出来た訳だし、ギルド関係に使われている魔道具。
転移門の有効活用など現在にも様々な物にガリアの技術が応用されているのさ。
まぁ、僕の知識も加わっているから単純にガリアだけの功績って訳ではないんだけど、僕にはこれ以上の功績は必要ないと言ったんだけど、全て勇者が行ったことにすれば魔族の存在が目立たなくなるっていう理由から青の勇者の功績ってことにしたのさ。
魔王ガリア:
俺の力を継承したなら自由に【転移】が使えるだろうけど使わない方が無難だと思うぞ。
ここを拠点にして、グランドワール王国にある自宅とグランドツール共和国の賢者アレク殿の屋敷には転移門で結んでやるよ。
それと転移門の移動先を増やしたいなら、これを設置しておけば転移門の登録出来るからな。
国が管理している転移門とは被らないから安心して使って構わないぞ。
カスミ:
青の勇者様の力を継承するとどうなるのでしょうか?
タイチ:
・・・それはまだ分からない。
カスミール自身に勇者の力が眠っているからさ。
勇者の力について心当たりがあるだろう?
カスミ:
一度だけピンチの時に勇者にクラスチェンジ出来ました。
それ以降は一度もクラスチェンジ出来る機会を得ることは出来ていません。
タイチ:
そうか。
カスミは転生者なのか? それとも、この世界の人なのか?
カスミ:
この世界の人っていうのは?
タイチ:
転生者は召喚の間に召喚される。
この世界で気付いた時は何処にいた?
カスミ:
自宅のベッドで寝込んでいました。
それ以前の記録があるような? 無いような朧げな記憶しかありません。
タイチ:
こことは異なった世界の記憶とかはあるか?
カスミ:
はい。あります。
日本という国で生活していて、夏休みに祖父の家へ向かう途中に亡くなりました。
タイチ:
それ以外の記憶はある?
お父さんやお母さんの名前や顔などを思い出せる?
カスミ:
思い出せません。
元の世界のことは以前は多少は覚えていたのですが知識のような物はありますが、それ以外は何も思い出せないです。記憶に霞がかかったような感じです。
タイチ:
もしかすると、カスミは転生者とこの世界の人の両方の特性を持っているのかもしれない。
転生者は勇者のクラスでスキルを色々と覚えるが勇者に都合の良いスキルばかりだ。
クラスチェンジこそ出来ないが、この世界の人よりも凄く成長が早く能力値も高くなる。
それに勇者の特徴である【色】のポーチを持っているはず。
こんなポーチを持っていないか?
カスミ:
このポーチですか?
私の身体から離れないので寝るのにも苦労していたんですよ。
今は気にならなくなりましたが、ポーチの存在に気付いた時は大変でしたよ。
タイチ:
それが勇者のポーチだね。
【色】は赤か。
勇者のクラスに就ければ赤の勇者様だね。
こんな指輪は持っていないかい?
カスミ:
指輪は持っていません。
そんな綺麗な指輪は見たこともありません。
タイチ:
ポーチの中を探してみた?
たぶん、この指輪とは違う宝石の付いた指輪があるはずなんだけどな。
カスミ:
ポーチの中に指輪ありました。
タイチ:
指輪もあったのか。
これでカスミが勇者であることが証明されたな。
ただ、気になるのは、緑の勇者以外に勇者が存在するってことさ。
本来、勇者は一人のはずなのさ。
現地の人に紛れ込ませたような感じでカスミを隠しているようにも思えるんだ。
アレク。これをどう判断する?
賢者アレク:
何が何でも世界の脅威を討伐したいってことでしょうね。
緑の勇者と協力が必要かどうかは別としますが・・・。
タイチ:
そうだよな。
これは別口って感じがするけど・・・。
賢者アレク:
別口ですか?
タイチ:
ああ。緑の勇者では駄目だった場合の保険のように思えて来た。
僕らの行動も把握した上で、緑の勇者と協力関係が形成されなかったとしてもカスミ一人で何とか対処出来るようにと・・・計算上、僕らの力を含まれているって具合にね。
どんな結果になるのか予想出来ないけど、僕とガリアの力でどうか有効に使ってくれ。
そして、世界の脅威を封印ではなく討伐という結果に導くことを願う。
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ーリメイク情報ー
終焉の起源をリメイクしています。
こちらの作品も宜しくお願いしますmm




