第16話 旅路 ヤマギワ村~サラブ領アンモル
馬車旅の始まりです
おなほうございます。カスミールです。
今日は予定してた通り早朝からの定期便の馬車に乗り込みます。
ヤマギワ村から約六時間~八時間ぐらいの馬車での長旅です。
これぐらいを長旅と言っても良いのか分かりませんが、私にとって初めてのことなので長旅としました。
領都サラブ・メルビル方面からヤマギワ村を経由してアンモル・カワギシ村方面へと向かうサラブ領を横断する馬車の定期便だそうです。
馬車は途中で馬の休憩と乗客の食事やトイレ事情などをアンモルまでに何度も休憩しながら進んで行くようでした。
実際にアンモルへは約八時間ぐらいで到着予定で道中の休憩は二回行われるそうです。休憩なしで直行すれば六時間ぐらいで到着出来るようですが、馬が駄目になるので休憩は取った方が良いそうです。
まぁ、定期便ですから休憩なしに直行するようなことはありえないことです。
今日の私の装備は、いつもの皮装備一式に短い剣は腰に差し木製の小さな盾を左腕で持ち、外套で装備一式が隠れるような恰好をして、バックパックの中身は着替えや生活用品ばかりを詰め込んでいます。
傷薬やポーションなどの冒険に使うアイテムや予備の装備類はアイテムポーチに入れて隠しています。
人が私を見ると旅姿の冒険者風に見えるはずです。背丈は小さいですが・・・。
バックパックの中身が生活用品(予備)なのは、もし盗まれても困らないよう偽装しています。
バックの中身を使わないなんて不自然な行動はしないですが、普段の生活用品なので普通に使います。
私専用のアイテムポーチは赤色の可愛い肩掛けタイプのポーチで中身が無限に入るマジックアイテムです。
私にしか持てませんし、私しか中身を取り出せませんし、私にも装備から外すことが出来ません。
寝る時もアイテムポーチを装備して寝るしかないのです。
貴重品は全てアイテムポーチの中。これで盗まれても困らないのです。
商人風の男性:
お嬢ちゃん。リンゴ食べるかい?
高齢の女性:
お嬢ちゃん。これを食べな。
などなど道中、一緒に乗り合わせた方々から色々と差し入れを貰っています。
小さな両手では持ち切れない数なので、これ以上は勘弁して下さいという顔を作って苦笑いしています。
御者:
そろそろ。休憩に入るぞ~。
御者さんが大声で馬車の乗客に聞こえるように声をかけます。
ゆっくりと馬車が止まると、馬を馬車から外して休憩が出来そうな木の元にロープで括りつけます。
いつの間に水を汲みに行ったのか分かりませんでしたが、御者さんとは違う人が馬に飲み水の入った桶を持って来ていました。
御者:
しらばく、馬を休ませるから、乗客の皆さまは各自で食事なりご自由にして下さい。
出発する時には再度声かけしますから、あまり遠くへは行かれないようお願いします。
馬車は乗客が約十人ぐらい乗れる大き目の馬車で二頭の馬が引いている。
馬車の横には、馬に乗った護衛の冒険者が左右に一人づつ。
御者さんの隣には御者が出来る冒険者風の人が乗っていて馬車の運行はこの四人で行われています。
乗客は、高齢のお婆さんとその娘さん、商人風のおじさん、冒険者の男女、私の六人です。
今回の休憩でそれぞれが自由に散策したり、食事したりして休憩しています。
昼食には、まだ早い時間なので軽く食べているような様子です。
おそらく、次の休憩ぐらいが丁度昼食の時間になると思われます。
こんな感じの道中が続き、無事に馬車はアンモルに到着しました。
アンモルの入り口で馬車から降りて、町の入り口で衛兵さんに冒険者カードを見せます。
衛兵さんは、私が冒険者だと分かると何度も何度も冒険者カードと私を見比べていました。
(そんなに子供に見えるのかな?)
カスミ:
あのう。冒険者ギルドにはどう行けば良いですか?
門番の衛兵:
嬢ちゃんは何処から来たんだい?
カスミ:
ヤマギワ村から来ました。
以前、メルビルの町へ行ったことがありますが、同じサラブ領の町でもこの町はすごく大きな町ですね。
門番の衛兵:
そうだろう。そうだろう。
領都には劣るがメルビルの町なんかには負けてられねえよ。
カスミ:
あのう。冒険者ギルドにはどう行けば良いですか?
門番の衛兵:
この町の魔術師ギルドで登録しておいた方が良いぞ。
領都アルフレンで魔術師学園に入学試験が簡単に通過出来るらしいぞ。
カスミ:
どうして簡単に通過出来るのですか?
門番の衛兵:
何でも魔術師学園の経営者の関係者が魔術師ギルドに在籍しているかららしい。
カスミ:
あのう。冒険者ギルドにはどう行けば良いですか?
通りすがりの男性:
この大きな通りを真っ直ぐ行って右側に冒険者ギルドがあるよ。
あの衛兵さんは話が好きでいつもあんな感じだから適当に話を合わせて立ち去った方が良いよ。
カスミ:
あ、ありがとうございます。
私と門番の衛兵さんとのやり取りを見ていた通りすがりの男性が、話に割り込んで助けて貰えました。
冒険者ギルドに無事に?到着すると受付にいるお姉さんに声をかけました。
カスミ:
あのう。冒険者ランクを上げるにはどうしたら良いですか?
女性受付:
お嬢ちゃん。何か依頼をお願いしたいのかな?
カスミ:
いえ。私の冒険者ランクを上げるにはどうすれば良いですか?
女性受付:
冒険者? お嬢ちゃんが?
カスミ:
はい。そうです。
受付の女性:
本当に冒険者だったんだね。ごめんね。
ここではなんだから、個室の方で色々と説明しましょうか?
私の冒険者カードを見て、受付のお姉さんは私を個室へ案内しようとします。
こんなことで個室を使うの? みたいに戸惑っていると受付のお姉さんは少し間をおいて「周囲を見なさい」といった様子の合図で私には個室が良いと案内しているようです。
私も周囲を見ると私たちのやり取りを興味を持った目で見て来る冒険者の方々がたくさんいました。
「こんな子供が冒険者な訳あるか!」なんて声を聞こえたような聞こえなかったような感じです。
カスミ:
個室で色々と教えて下さい。
女性職員:
では、個室へとご案内しますね。
もう一度、冒険者カードを出して下さい。
私は個室へと案内され冒険者カードを手渡すとお姉さんは何かの機械に冒険者カードを差し込んで機械を操作し始めます。
女性職員:
あの、失礼ですが、一角兎に何か恨みでもありますか?
ご両親の仇とかではありませんか?
一角兎を殺さないと死んでしまうような病気や呪いとかではありませんか?
カスミ:
そ、それはどういうことですか?
女性職員:
神の恩恵(ステータス)を受けてから、今日までに一角兎を合計で約千体以上を狩っています。
この数は子供や成人したばかりの冒険者が倒せるような数ではありません。
つい最近も馬鹿みたいな数の一角兎の魔石を納品されているので、凄い恨みでもあるのかと思いまして・・・。
カスミ:
・・・いえ。違います。
一角兎をたくさん狩った心当たりはありますが、そこまでの数を狩っていたことに驚くのとその記録が冒険者ギルドで管理されているのには驚きました。
女性職員:
これだけの数の討伐記録は冒険者になる前の記録だからランクアップの査定には含めないの。
冒険者ギルドが出している依頼をクリアするか。脅威度Eや脅威度Dのモンスターを安定して討伐出来る実績があればランクアップ出来るわ。
カスミ:
依頼と脅威度Eや脅威度Dっていう強いモンスターですか。
女性職員:
残念だけど、そうなるわね。
カスミ:
ありがとうございました。
そう言って冒険者ギルドを後にしました。
さすがに、ここで黒虎の魔石と尻尾の買取は厳しいと思いました。
もっとヤマギワ村から離れた所で、黒虎を売っても問題なさそうな町で売ることにしようと心に決めました。
変な所で売ると身バレしそうなので警戒だけは忘れないようにしようと思う今日このごろです。
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ーリメイク情報ー
終焉の起源をリメイクしています。
こちらの作品も宜しくお願いしますmm




