第157話 応援要請と救援要請
二つ名
八十階層の階層ボスを倒してから下の階層へと安全地帯を目指していると一人の冒険者さんが私を呼び止めようとする声が聞こえました。
男性冒険者:
お~い。攻略の幼女。
ちょっと待ってくれ~。
カスミ:
へっ? 私ですか?
男性冒険者:
他に誰がいる?
カスミ:
そうですよね。
私以外に誰もいないですしね。
それで何の御用でしょうか?
男性冒険者:
上から応援要請が届いたんだ。
お嬢ちゃん。いや、攻略の幼女にだ。
カスミ:
その『攻略の幼女』って何なのですか?
それに応援要請って・・・。
男性冒険者:
『攻略の幼女』っていうのはお嬢ちゃんに付けられた二つ名のことさ。
カスミ:
二つ名ですか?
男性冒険者:
ああ。そうだ。
エルフル遺跡群のランクSの攻略という肩書を持つお嬢ちゃんには冒険者ギルド本部がお嬢ちゃんを『攻略の幼女』と呼ぶようにとの通達が先程あったんだ。
それと同じタイミングで応援要請や救援要請と言った類のものも伝えてくれとのことだ。
応じるか応じないを決めることが出来るようだ。
カスミ:
ただごとではなさそうですね。
何処へ行くようになるのですか?
男性冒険者:
パルチ山のランクSだ。
カスミ:
どうしてパルチ山なのですか?
私は、そのランクSダンジョンで断られたから、タイガの大森林のランクSに来たのですが・・・。
男性冒険者:
そうなのか?
そこまでは聞いていなかった。
用件は、緑の勇者様が・・・なくなったらしい。
えっ? 聞き間違いでしょうか?
緑の勇者様が亡くなったと聞こえたのですが勇者って亡くなるの?
私はこの世界の聖女カスミールと一体化したので亡くなるって意味は分かりますが、元の世界で亡くなってこの世界に来た勇者様が役目を終えずに再度亡くなるってことですよね。そんなのアリなの?
この世界に召喚された時点でこの世界の住人として生まれ変わって、二度目の人生の途中って亡くなったってことなのかも。
それなら緑の勇者様が亡くなるってこともあり得ないお話ではないでしょうし、青の勇者様も世界の脅威を封印した後に寿命で亡くなっているのであり得るお話なのかな。
それにディーネさんが緑の勇者様と一緒にいるはずですし、危険なことがあったら賢者アレク様を通じて私に連絡がきっと入るはずです。
緑の勇者様が亡くなるような事態を防げるのは私だけとは言いませんが、可能性として考えると私がいた方が都合が良いはずですからね。
こちらには賢者アレク様、聖女アンズ様、青の勇者様、剣神ジョア様、魔王ガリア様という青の勇者様パーティーメンバーが勢ぞろいしている訳で不都合なんて考えないで手助けすることだって出来るはずなの。
それなのに当代の聖女アンズ様のお力が足りなかったの?
本当の聖女のクラスじゃないから無理だったのかしら。それとも他の要素があったのかしら。
応援要請や救援要請を受けた所で緑の勇者様が亡くなっている訳だですから、その要請は必要なことなのかしら。私が駆け付けた所で緑の勇者様が生き返ることはありませんもの。
聖女のクラスの力でも亡くなってしまった人を生き返らせることは出来ないの。ましてや、本当の聖女のクラスではない当代の聖女アンズ様では無理なお話なのです。
その聖女アンズ様でも無理なお話なのにSランク冒険者である私が駆け付けても意味があるのでしょうか。いや、意味なんて無いのです。
亡くなった人を生き返らせるポーションでもあるのでしょうか?
あれ? 亡くなった人がポーションを飲むなんて出来ない訳で生き返らせるポーションがあったとしても意味がないのでは? と気付いてしましました。
そんなことはさておき、そんな夢みたいなポーションを私が所有していないか? という確認であれば、応援要請や救援要請は必要ありません。
事情を説明してポーションを優遇して貰えないかと交渉すれば良いだけのことですからね。
夢みたいなポーションを所有のお話じゃなければ、単に取り残された冒険者さんたちの救援要請と考えることが出来ます。
これ以上の犠牲が出ないようにってことでしょうが、それを引き受ける引き受けないを私が決めることが出来るというのも何か間違っているように思いますの。
ここから緑の勇者様の居場所へ行くとしても、正規の方法だと転移の魔法陣で地上へ帰って、そこから何日も使ってパルチ山へと向かう必要があるの。
その日数を考えるとそこまで急ぎではない?
グランドツール共和国のように飛竜で移動が可能なように手配されている? それとも自力でパルチ山まで行くの?色々と情報不足です。
(タイチ):
おい。カスミ。
(カスミ):
・・・。
もしかして、私が赤の勇者ってことがバレた?
エルフル遺跡群のランクSの攻略もそうだけど、ソロの冒険者がランクSを攻略してしまうのも通常ではあり得ない話だし疑われてもおかしくはないと思うの。
賢者の一族の方ご縁があったとしてもグランドワール王国のサラブ領ヤマギワ村出身の小さな女の子の冒険者が・・・なんて考えるとその異常性も目に付くと思うの。
だって、成人してから村を出たとしても僅か一年足らずで賢者の一族の方と縁が出来て、Sランク冒険者になるなんておかしな話とか冗談な話にしか聞こえないと思うの。
私だったらそんなバカなと笑って済ませると思う。
Sランク冒険者になるには、レベル100以上であることと上位スキルに目覚めていることが条件だけど、その上にエルフル遺跡群のランクSを攻略したという偉業まで達成してしまっている訳。
どう考えても異常な存在。
普通の常識の範囲ではあり得ないことをしでかすような子供なら亡くなってしまった緑の勇者様の次代として成立するのではないと考えても不思議ではないかも。
こう考えるとパルチ山に応援要請や救援要請と言う名の次代の勇者様みたいな立ち位置に祭りあげられる可能性があると考えると応援要請や救援要請なんて強制ではないのだから受けなくても問題がないってことを私としては考えます。たぶん、私の考えに間違いはないはずですの。
(タイチ):
もう良いかい?
(カスミ):
まだですよ。
(タイチ):
今度は聞こえているんだな。
さっきは全く聞いていなかったようだが妄想が激しいな。
(カスミ):
えっ? 何か言いました?
私が考えている最中に青の勇者様が呼びかけていたようですが、さっぱり分かりませんでした。
それだけ考えることに集中していたってことでしょうね。今度からは気を付けるようにします。
緑の勇者様が亡くなったけど冒険者ギルド本部から呼び出されたので応じようと思う今日このごろです。
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ーリメイク情報ー
終焉の起源をリメイクしています。
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