第143話 勇者の力
勇者の力の形
賢者アレク様の提案の通りに実行することにしましたの。
カスミ:
【炎の壁】
この魔法は【火の壁】よりも強力な【炎の壁】なのです。まずは、これから使う魔法のためにも安全領域を作ってからじゃないと集中出来ません。
(賢者アレク):
開け地獄の門よ。地獄の業炎よ。我の呼びかけに応じよ。炎の神アグニの名において。神罰を与えよ 【神焔劫火】
カスミ(小声):
【赤雷】
くっ、ち、力が抜けます(><)
殺人兎を全てを飲み込むように巨大が魔法陣が出来上がります。
賢者アレク様の使った魔法の【神焔劫火】の赤い炎が大地から、私の【赤雷】が天空からウサギさんたちを魔法とスキルで攻め始めます。僅か数秒でウサギさんの群れは全滅したのです。
これが賢者アレク様の考えた提案の結果なのです。
【神焔劫火】を私が口パクで使っているように見せかけて賢者アレク様が魔法を行使します。
私が使ったのは【赤雷】ですが、小声でぼそっと呟くように使ったので観戦している冒険者さんたちには私が【神焔劫火】を使ったように見せたのです。
余計なのは赤雷の力ですが、そもそも【神焔劫火】を知っているような術者がいないので大地から炎と天空からの雷が魔法とスキルの同時攻撃がバレないように工夫したということなの。
【神焔劫火】には私の勇者の力を大量に使ったので凄く疲れました。
聖女アンズ様も容赦無かったですが、賢者アレク様も容赦無く勇者の力をごっそり使ったのです。
この魔法を知らない人から見れば凄い魔法を使ったようにしか見えないのです。賢者アレク様が魔力を感じることが出来ても私の魔力であると感じるはずだと言っていました。
まぁ、どちらにも私の勇者の力が加わっているのですから、私が行使した魔法とスキルなのでバレる心配など微塵もありませんの。
【神焔劫火】は私も使える魔法です。
わざわざ、賢者アレク様が使わなくても良かったのではないと思うのは私だけでしょうか。
賢者アレク:
儂じゃないとあの力は発揮出なかったぞ。
赤の勇者の力を、ちと使わせて貰ったからな。
カスミだけの力ではないってことじゃ。
カスミ:
勇者の力を私は使えないの?
賢者アレク:
そうじゃな。
どう説明すれば良いのか分からんが分かり易く言うとする。
魔法やスキルに勇者の力を使うことは出来んが結論じゃな。
賢者アレク様の説明は長かったけどこんな感じだそうです。
魔法を使うのに必要な魔力。
それと同じようなエネルギーで勇者にしか存在しないエネルギーが勇者の力と呼んでいる正体不明なエネルギー。正体不明と言うのは魔力ではないが何かしらのエネルギーだからなの。
勇者専用スキルにしか使えない勇者の力。
魔法の行為には使えないし、勇者専用スキル以外のスキルにも使えないんだとか。
しかし、その形状は勇者の意思で自由に変えられ、効果が魔法やスキルよりも強力な結果を発揮する場合もあるのだとか。
勇者専用スキルというのは青の勇者様だと『水神』。特定の形に捕らわれないスキルは水属性を行使出来ます。
赤の勇者の私なら『迅雷』という固有スキルのことです。雷属性であれば形は自由に出来るということです。
魔法は完成形は形が決まっています。
【水球】だと球形に、【水の霧】なら霧状な魔法になります。
青の勇者様の『水神』はその形は自由に変化させることが出来ます。時には剣という形に、時には竜の姿にすることだって出来ます。魔法のように形が決まっていないのです。
水属性であれば自由に出来るのが水神のスキルなのです。迅雷の場合も同じなのです。
勇者専用の固有スキルを使うのに勇者の力が必要ってことです。
魔法を使う時に魔力が必要なのと同じように勇者の力が必要ってことなのです。
その勇者の力をちょっとだけ使ったものが、聖女アンズ様と賢者アレク様の魔法なのだとか。
ちょっとだけだからと言っていましたが、勇者の力をごっそり奪われた私からすると倦怠感が酷いのです。本当にちょっと? と疑いたくなります。
カスミ:
雷属性の魔法ってあるのですか?
風魔法の中には無かったと思いますが・・・。
賢者アレク:
雷属性の魔法はあるぞ。
光魔法と風魔法の両方を極めた状態で、雷魔法を教えて貰うってことが条件じゃ。
カスミ:
雷魔法を教えて貰うって必要なのですか?
賢者アレク:
光魔法の中には【放電】という魔法がある。
これが主が知る雷魔法の原点じゃな。
勇者様の世界の言葉じゃと静電気を魔力で強化した物と言えば分かるじゃろうて。
本当の雷は凄いエネルギーの自然現象じゃが、それを再現したのが雷魔法という訳じゃ。
雷と静電気の違いを説明し理解したなら【雷魔法】のスキルに目覚めるかもしれんの。
光魔法と風魔法から独立した特異なスキルじゃから賢者クラス並の人しか今は使えないんじゃ。
今でも賢者の一族の者なら使えると思うぞ。
儂としてはそこまで珍しい魔法とは思わんが一般的には珍しいのかもしれんの。
カスミ:
そんなことってあり得る話なのですか?
賢者アレク:
そうじゃな。それは勘違いというものじゃ。
カスミ:
えっ? どういうことですか?
【雷魔法】のスキルに目覚めると言ったはずじゃ。
スキル熟練度0としてスキルを覚えるんじゃぞ。
雷魔法使いというクラスに目覚める訳ではないんじゃ。
カスミ:
もしかして、スキル熟練度ー1みたい0より下があるのですか?
タイチ:
それも違う。ここからは僕が説明した方が早い。
スキル熟練度0は熟練度さえ稼げばスキルが使えるようになる状態のことだ。
人にはどんなに熟練度を稼ごうとスキルに目覚めることがないスキルがある。
カスミも知っていると思うが、生まれながらでしか得られないスキルは人はどんな熟練度を稼いでもスキルを覚えることは出来ないんだ。
聖女のタマゴと言われている「補助魔法」のスキル。
このスキルは限られた人にしか使えないスキルなんだ。
カスミ:
それとどんな関係があるのですか?
タイチ:
雷魔法のスキルは、一見どんな人でも目覚めることが出来るスキルのように見えるが、条件を充たさない限り目覚めることが出来ないスキルなんだ。
条件についてはアレクが説明した通りだけど、それでも熟練度0なんだ。
カスミ:
誰も気付かないかもしれない。
タイチ:
そうだ。誰にも気づかれることのないスキル。
だからこそ、熟練度0として目覚める貴重なスキルという訳さ。
何となくですが分かったような気がします。スキル研究家の青の勇者様の言うことなのでしょうから真実なのは本当のことでしょう。
隠しスキルのような探せば見つかるスキルを探してしまいそうで、今後が怖いなと思う今日このごろです。
評価やブックマークをしていただけると励みになります。
ーリメイク情報ー
終焉の起源をリメイクしています。
こちらの作品も宜しくお願いしますmm




