第139話 私と私
ゲーム?
いずれ、私のコピーと戦うかもしれないのは分かっていました。能力をコピーとかってあり得そうな話ですしね。
それに神と出会っている訳ですからその可能性は極めて高いと考えていました。
ダンジョンファンタジアにもプレイヤーのそっくりなモンスターと戦う場面があります。プレイヤーの技量が問われる場面なのです。
格闘ゲームのような技量を求められることもあるので対応が難しいんですよね。
「ミラー」とか「コピー」とか「分身」と言われるプレイヤーそっくりのモンスターです。
確か、そのダンジョンに入ってから、それまでのプレイヤー自身と戦うって設定だったような気がします。レベルも装備もスキルも能力値も全て同じなのです。私は「コピー」と呼んでいました。
対象の行動をマネるコピーにも弱点はあります。
例えば、私とコピーとの戦う場合です。
私の横には何も無い空間が広がっていて、コピーの横には川や沼地があろうと私が横に移動すると川に入ってしまったり沼地にハマってしまったりとするんですよ。
普通に考えた行動なら、川を避けて通ろうと考えたり、沼地にハマらないように行動したりするのですが、コピーは障害物を避けようという考えた行動を取らないのです。
私の行動を考えもしないでマネしてしまうってことなのです。
気になるのは対峙するモンスターが私のコピーってことなのです。現在の私は能力値を十分の一にまで抑えています。
私のコピーが能力値を抑えたままなのか、それとも元の能力値なのかまでは、まだ分かりません。仮に、元の能力値のままだったら大変なことになってしまうのです。
例えば、私が火魔法を使うとコピーも火魔法を使います。
これはコピーの仕様なので当然と言えば当然の行動です。
火魔法同士が相殺されても魔法によるダメージを受けることはありません。
これが基本なのです。もし、私の能力値が元の高い能力値だったらどうでしょうか。
現在の私の能力値は十分の一です。コピーの能力値は元の能力値=私の十倍の能力値があることになります。
こんな状態で火魔法を打ち合えば私の火魔法が十倍の威力のあるコピーの火魔法に敗れてしまって私がダメージを負うことになるのです。
魔力の能力値が十倍も違うのですからおかしな現象ではありませんからね。
元の能力値で使った火魔法のダメージを私が受けるので大変な目に合うという寸法なのです。
また、コピーの火魔法を相殺するために用心に元の能力値に戻すと今後コピーと戦う機会があれば、間違いなく元の能力値の私同士が戦うことになるのです。その能力値の高いコピーを倒すと・・・。
なので、どうにか工夫してコピーを倒さないと後々大変な目に合うのは私なのは間違いありません。
カスミ:
ここでコピーですか。はぁぁぁ~。
タイチ:
どうした?
そんなに溜息を吐いて。
カスミ:
コピーに関しては私の思考を呼んだので分かっていると思いますが、コピーの怖さはこれだけではないんですよ。
タイチ:
ま、まさか。
カスミ:
その通りですよ。
コピーが自我を持てば私は勝てなくなるんですよ。
覚醒勇者同士の対戦でも決着はつかなかった訳です。
そんな私の力に私の行動パターンやらが分かるコピーが現れたら?
タイチ:
勝てなくなるな。
寧ろ、疲れたらカスミが負けるってことか?
カスミ:
その通りです。
ただ、今の私には勝機はありませんが、もしですよ。
もし、青の勇者様たちの力をコピー出来なかったら?
それは私が負けることが無くなるってことです。
タイチ:
それって危なくないか?
もし、コピー出来なかったらって言っているけど、コピー出来たらどうなるんだ?
カスミ:
はい。もう。
お手上げです。
(かすみ):
大丈夫だよ。
そんなことにはならないから安心して。
ねっ? 大丈夫だから。ねっ?
カスミ:
えっ?
聖女アンズ様。何か言いました?
聖女アンズ:
いいえ。私は何も言っておりませんわ。
カスミ:
そうですか。
女の人の声が聞こえたような気がしたので・・・。
聖女アンズ:
気のせいではありませんの?
きっとそうですわ。
そうに違いないですわ。
カスミ:
気のせいですよね?
結局、青の勇者様たちの力をコピー出来るかどうか試してみることにしました。
もし、コピーされても対応出来るように賢者アレク様に魔法を使って貰います。
魔法なら聖女アンズ様の結界で防ぐことが出来ます。
その上に、私の様子を見ている冒険者さんたちも私が魔法を使っているように印象付けることが出来るからです。コピーを倒すのにも誤魔化さないとですね。
まず、私が取った行動は目くらましに火魔法の中で爆発しそうな魔法を選択しました。
これで火魔法が相殺されても爆炎で煙の中の様子は外の冒険者さんグループからは見えないはずです。
カスミ:
【炎球】x10
【火球】の中級魔法を足元目掛けて使います。
連続で魔法を使った方が爆発した時の砂埃も目くらましに有効に使えますからね。
やっぱり、コピーなだけに私の火魔法に対応して来ました。心配していたコピーの能力値の問題はありませんでした。
相殺しても爆風などの影響がない所を狙ったからです。
この魔法を相殺させる行為で、コピーの能力が粗方分かりました。
・コピーの能力値は私の十分の一の能力値である点
・青の勇者様パーティーの能力まではコピー出来ない点
この二つが分かっただけでも儲けなのです。
えっ? どうしてそんなことが分かったのかってことですか?
それは簡単ですよ。賢者アレク様の火魔法を一回だけ紛れさせただけですからね。
火魔法を【火球】ではなく【炎球】を使ったのは【火球】より爆発しやすいからです。
私とコピーとの中間を狙った魔法攻撃でもコピーは相殺して来ました。
私の行動をマネするのですから当然の行動です。
そのマネされた火魔法の中に私の魔力最大で魔力を圧縮した【炎球】を一発混ぜます。
私とコピーから離れた場所で魔法が相殺されたら爆風が私とコピーに襲って来ますが、聖女アンズ様の防御結界でその爆風を防ぎます。
その結果がどうなったのかというとコピーは爆風や賢者アレク様の使った魔法でボロボロの状態なのです。
聖女アンズ様の防御結界と賢者アレク様の魔法は、ここに来るまでにも既に何度か使っています。
もし、青の勇者様パーティーの力をコピー出来るなら、この二つもコピー出来なければおかしいのです。
結果は聖女アンズ様の防御結界で防ぎきって無傷が正解なのです。
賢者アレク様の魔法と【炎球】x10を相殺した爆風の影響でボロボロのコピーが私の剣速に勝てるはずもなく、ゆっくりとコピーに歩いて近づき、袈裟斬りにて止めを刺したのです。
剣神ジョア:
おい。カスミ。
魔力を最大に込めた魔法の解説してねぇだろ?
カスミ:
そうでしたね。
私が最大の魔力を込めた火魔法を混ぜた理由を伝えていませんでしたね。
剣神ジョア様が急かす理由も分からなくもないのです。
勝利するだけなら火魔法に魔力を最大に込める必要なんて無かったのです。
コピーの能力値が元の状態か十分の一の状態かを見極めるには必要な行為だったのです。
コピーの能力値が十分の一だった場合。火魔法が相殺されて互いに爆風を受けます。
今回は聖女アンズ様の防御結界のお陰で私にはダメージはありませんでしたが、防御結界が無ければ全く無傷という訳にはならないのです。無傷ではない状態がコピーの現状なのです。
コピーの能力値が元の能力値と同じだった場合
コピーの火魔法の方が強い(魔力が多い)ので爆風は私の方に向かって来ます。聖女アンズ様の防御結界で私の方へのダメージはなく無傷になります。
コピーは爆風の影響受けることが、即ち私の火魔法と相殺する魔力で火魔法を使ったってことなのです。
私より魔力が多い火魔法だと影響は受けないですからね。
それに爆風は魔法の影響ではありませんからね。相殺出来ないんですよね。
だからこそ【炎球】という爆発する火魔法を選択したのです。
まぁ、これは青の勇者様パーティーの力をコピー出来なかったから分かった結果です。
聖女アンズ様の防御結界があれば、どちらの場合でも防御結界で防がれていた訳ですからね。
なので、必要なかったと言われると必要無かった部分もあるかと思います。
私の様子を伺っている冒険者さんグループが居なければの話ですが・・・。
きっと、私が魔法をたくさん使ってコピーをやっつけたと思っていると思います。そう思って貰えた方が私には得ですからね。
切り札を使わずに倒せて良かったと思う今日このごろです。
評価やブックマークをしていただけると励みになります。
ーリメイク情報ー
終焉の起源をリメイクしています。
こちらの作品も宜しくお願いしますmm




