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赤の勇者 ~ちっちゃい聖女は伝説の勇者様?~  作者: エグP
第五章 エルフル遺跡群のランクS

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第106話 覚醒の兆し

前話の続き

かすみ:

聖なる力よ。神よ。私の願いを叶え給え! 【遮断結界】


カスミ:

えっ?


タイチ:

何が起った?


聖女アンズ:

あら? まぁ!


 一体、何が起ったのか分かりません。巨大なスケルトンや人形ドールへの魔力供給が遮断され動かなくなります。

 私はその動かなくなったスケルトンや人形ドールが炎に焼かれて様子を静観しています。


タイチ:

カスミ。

あれは何をした?


カスミ:

分かりません。

聖女アンズ様は何かご存じですか?


聖女アンズ:

たぶんですが、カスミの中に眠る聖女カスミールの力が目覚め始めたのではないかと思いますわ。


カスミ:

聖女カスミールの力ですか?


聖女アンズ:

そうですわ。

わたくしは次代の聖女を見守っていたのですわ。

その力は歪で勇者と聖女という大きな力が一つになっていましたの。

貴方の勇者の方の力は目覚めましたが、聖女カスミールの方の力は目覚めていませんわ。

聖女の力と聖女のクラスは違いますもの。

本来の聖女の力を持つのは聖女カスミールですわ。

聖女カスミールは貴方であって貴女ではない存在なのです。


カスミ:

私とは違う別人格が存在するというのですか?


聖女アンズ:

ちょっと違いますわ。

新太郎様と聖女カスミールは本来は別の人格ですわ。

おそらくは、新太郎様が転生して来た時に聖女カスミールと新太郎様の魂が無理矢理一つになったと思いますわ。

その結果が、聖女カスミールという人格と新太郎様という人格が混じってしまったカスミールという新たな人格が出来てしまったと思いますわ。

新たな人格こそがカスミール貴女なのですわ。

新太郎様が赤の勇者として先に覚醒してしまいましたので、一方の本来持つべき力である聖女の力がそれに耐えられなかったのではないかと思いますわ。

少しづつヒビが入り、つい先程聖女の力を発揮出来るようになったのだと思いますわ。

ただ、今は不完全な力と思って下さいまし。


 私は本来の姿とは異なった人格であることが分かりました。

この世界で生まれたカスミールという人物の人格と日本で生まれた新太郎という人物の人格のどちらか一方ではないってことのようです。


 新太郎の生まれた世界の記憶なんてはっきりとは思い出せないのです。たまに、この世界の知識ではない知識や記憶を思い出します。

 元の世界の父さんや母さんや友人などの名前も思い出せないのです。カスミールとしての記憶も病気で寝込む前の幼い頃の記憶もはっきりと思い出せないのです。


タイチ:

僕も元の世界の記憶は思い出せない。

記録や知識を思い出そうとすると思い出せないが、必要な知識を持っていれば、自然とそれが使えることがあるのは知っている。

元の世界の僕を知っている人物の名前ぐらいは思い出せるからカスミほどではないが・・・。


聖女アンズ:

それでも、カスミはカスミですわ。

聖女カスミールとカスミが別人格であっても聖女カスミールという人格が身体を乗っ取るということにはならないはずですわ。

神の目的は世界の脅威を倒すことですわ。

それが叶わないなんてことにはならないようになっているはずですわ。

緑の勇者様と赤の勇者という二人の勇者様が同時に存在するなんてあり得ない事情ですから、きっと聖女カスミールの力もいずれは使えるようになるはずですわ。


 聖女カスミール。


 本来なら次代の聖女となるこの世界の人物。どんな理由があったのかは分かりませんが、その聖女カスミールとして私は転生してしまっています。どうして今更聖女の力が解放されたのか疑問も残ります。

 聖女アンズ様は赤の勇者の覚醒した力に反応したと言っていましたが、では、今までどうしてそんな様子が無かったのかも疑問なのです。


 エルフル遺跡群のランクSを探索初めてからでも約四十日は経過しているのです。その間にそんな素振もなかった訳なのですから何か原因があるのかもしれません。

 今の所、そんな原因となりそうな理由も見つかりそうにないので一先ずは自力で聖女カスミールの力というものを使えるようになるまで様子をみるしかなさそうです。


 聖女アンズ様の力とは少し違うような聖女の力です。どういう表現をすれば良いのか分かりませんが、聖女アンズ様の力を正統と表せば、聖女カスミールの力は異質と言っても良いと思いました。

 何かが違うけど何が違うのか分からないと言った感じです。


 この聖女カスミールの力を手に入れたとしても私が私ではなくなるような気がしません。私が更に強くなると言った予感もしません。

 ただただ、本来あるべき所に戻る。まるで、それが当然だというような感覚だけが今の私は感じるのです。


 ちょっと何処かへ行っていた物が元の場所にいつの間にか戻って来ていると言えば良いのか。

 上手く伝わらないけど、聖女カスミールの力は私の傍にあるべき存在なんだということだけは理解出来るのです。


 言うなれば、カスミールは私。私はカスミールって感じかな。


閑話休題(話変わって)


 聖女カスミールの件は考えても結論は出ないので、今は目の前のダンジョンのことに集中します。


 百階層の階層ボスを倒しました。ダンジョンの続きが気になる所です。階層ボスの部屋は広いですが、その片隅には地上へ戻る魔法陣と下への階段のある部屋があります。

 もし、この階層が最後であるなら下への階段はなく、地上への魔法陣だけってことになります。


 剣神ジョア様の言っていたことは正しかったということが分かりました。

百一階層への階段が階層ボスを倒した後の部屋には存在していました。もちろん、地上への魔法陣もあります。


 百一階層を一日でどれだけ行けるかや階層の広さなどを探ることから始めないと行けません。ここから先は人が未踏の地だからです。

 下への階段から降りて来た階段のある部屋(安全地帯)は三マスx三マスのいつも通りの部屋でした。何日かかるか分からないですが、下への階段のある部屋を見つけて下の階層へと行くということに変わりはありません。


 取り敢えずは、どちらは一方の方向に真っ直ぐ進んでみます。最下層では十五部屋x十五部屋(四十五マスx四十五マス)だったので、それより広いと考えています。

 これまでの階層がそうだったので、この法則だけは変わらないと思います。


 この階層は二十部屋x二十部屋(六十マスx六十マス)でした。

まだ、真っ直ぐ進んで突き当りの部屋に到着しただけですが、この調子だと他の階層の法則通りに二十部屋あるでしょうしね。


 上の階層が十五部屋x十五部屋を二日で通過していたので、二十部屋x二十部屋となると約二倍の部屋数となる訳だから約四日で通過するとします。

 厳密に計算すると三日と余りが出来ますが、余りの分だけ次の階層に使うと分からなくなりそうだからです。


 そんな訳で百一階層からは一日百部屋進んで四日で通過ってことにします。全ての部屋に足跡をつけてから進んでみることにします。

 もし、足跡が必要なくても足跡が必要だった時と比べると労力は違いますからね。


 今日は百部屋進むだけと考えると少し楽になったと思う今日このごろです。

評価やブックマークをしていただけると励みになります。


ーリメイク情報ー

終焉の起源をリメイクしています。

こちらの作品も宜しくお願いしますmm

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