第98話 八十三階層の一日目
八十三階層の一日目
八十二階層も問題なくクリアすると次は八十三階層です。深層の一日で三つの階層を進んでいた頃に比べると二日で一階層だと凄く遅い進行具合に思えてしまいます。
それでも百部屋もの部屋を一日で通過する訳ですから結構な速度のようにも思えるので何だか私の移動速度が速いのか遅いのか分からなくなって来ました。
八十三階層の一日目(前半)で宝箱は二つ見つけることが出来ました。
宝箱の中身は、欠損を回復するポーションとは違うポーションでした。色が違うので一目で分かります。
欠損を回復する以外に重要な回復機能を持つポーションなのでしょうかね。
天眼を使って、このポーションが何なのか確認してみます。
このポーションは万能薬でした。万能薬と言っても何でも効果があるポーションってことです。毒消し、マヒ治療、欠損など色んな種類のポーションの効能が一つになったポーションのようです。
実在するポーションのまとめ役みたいなポーションで、不老とか不死とかの扱いに困るような禁断の薬では無かったので安心しました。
不老の薬や不死の薬だったら大変な騒ぎになるでしょうし、私のポーチの肥やしになって貰うしかない世間に出せないポーションとなってしまいますしね。
まぁ、不老や不死のポーションは存在しないと考えています。ランクSの最下層の宝箱から見つかるのはレアアイテムだから仕方ないと思います。
それを攻略する冒険者さんが飲まないって訳もなさそうです。また、王族や貴族に売るとしても何処かに情報が漏れないとは限りないです。
「まぁ、あそこの〇〇様は何年経ってもお姿が変わらないわね」と噂されるようになると思います。人はおかしな存在をバケモノと呼び避けることもあり得ない話ではありません。
数年ぐらいなら若さの秘訣とか何とかで誤魔化せると思いますが、そうでない五十年や六十年など何十年レベルになると誤魔化すなんて出来ませんからね。
不老は歳を取らないってことなので、病気や怪我などで死ぬ恐れがあります。不死は死なないってことですが、歳を取らないってことではないかもしれません。
不死を不老と勘違いしてしまう人もいるのかもしれませんが、不老と不死が同時に成立する不老不死は不老のポーションや不死のポーションとは違うポーションになるでしょうからね。
不老、不死、不老不死の三つの種類のポーション。本当に存在するのでしょうかね。私は夢を見る程度で楽しめて実際に見つけたら壊してしまいそうですね。
一人で永遠に生き続けるなんて私には出来そうにないです。
カスミ:
万能薬って高いポーションですか?
賢者アレク:
欠損を禍福するポーションよりは高いポーションじゃな。
何にでも効果があるからの。
昔は、万能薬のレシピもあったはずじゃが、これも失われてしもうたレシピなんじゃろうな。
カスミ:
どうして失われたクラスやレシピが存在するようになったのですか?
賢者アレク:
誰も使えないからじゃな。
調薬のスキルは錬金術師、薬師のスキルじゃ。
錬金術師は上位クラスだからかガリア様しか儂は存在を知らん。
薬師のスキルでは高レベルであり、貴重性の高い素材を材料に使うから簡単には作れない。
金持ちや研究資金が豊富にあるような薬剤師や錬金術師が長年の研究の結果として出来るポーション。
何百年も前の古いレシピを信じて作れたポーションが本当に効果があるのか試して素材が尽きてお終いって感じじゃな。
剣神ジョア:
クラスの方なら理由は分かっているだろ?
誰もそこまで熟練度を上げる者がいなくなっただけだ。
満遍なく熟練度を上げていたのではエルフのように長寿じゃなければ上位クラスには就けない。
戦闘に特化した一握りの冒険者ぐらいしかSランクの冒険者になれないのと同じなんだ。
ましてや、高レベル、高ランクの冒険者になってクラスチェンジや武器替えなんて致命的でしかないからな。
カスミ:
レア度の高いアイテムや武器・防具って、たくさんあるんですか?
剣神ジョア:
そうりゃ、武器や・防具になるとキリがないぜ。
良い武器や防具はレア度の高い業物はたくさんあるからな。
以前、使ってた「名刀 よしむね」って刀があるけど確かレア度Sだったと思う。
カスミ:
名刀 よしむねですか?
タイチ:
ああ。そんな刀を見つけた時期もあったなぁ。
「よしむね」「じゅうべえ」「あだち」なんて名の「名刀」と名付けられた刀のレア度が高いのには驚いたよ。
日本人の名前であるのは分かるけど、刀匠とかの類ではない人名が刀の銘になっているんだなぐらいにしか思えませんでした。確か、私が最初に手に入れた刀の銘も「マサヨシ」だったと記憶しています。
あの時は「マサヨシ」って誰? と思いましたが、「よしむね」「じゅうべえ」「あだち」なんてただの日本人の名前にしか聞こえないです。
カスミ:
その「よしむね」「じゅうべえ」「あだち」という名の刀は業物だったのですか?
剣神ジョア:
凄い高値で売れた刀でしかなかったよ。
特殊効果もないしレア度SSの刀を持ってたし、私には必要なかったのさ。
カスミ:
売ったんですか?
剣神ジョア:
そうだ。何か問題があるのか?
カスミ:
何か勿体ないなと思って・・・
剣神ジョア:
刀とか剣とかの武器はコレクションじゃないんだ。
使われない武器の方が可哀そうだ。
誰かに使って貰える武器となることの方が良いと思える。
それに使わない武器を持ってても邪魔なだけさ。
カスミのようなアイテムポーチがあるなら、普段使いじゃない刀を持ってても不都合ではないだろうけど、ダンジョンの奥深くでたくさんの武器類を抱えて戦闘は出来ないからな。
カスミ:
容量が無限のマジックバッグとかは借りられないんですか?
タイチ:
あれは最近出来たシステムさ。
僕らが世界の脅威を封印した後にガリアが用意した物さ。
条件付きだけど容量無限のマジッグバッグのレシピを残してたんだよ。
魔王ガリア:
あれか?
マジックバッグに必要な素材が集めるようになったのはランクSとかの色んな素材が流通し始めたから作れるようになっただけだ。
現代の技術で色々と手を加えてはいるようだが、入り口が広くなければ大きな物は入らない。
無限に物が入るが、重さをそのまま感じるとか色々と改善の余地のある代物ばかりだ。
魔王ガリア様のレシピのお陰でマジックバッグが容易に手に入るようになったんだとか。
その後はレシピを研究し色んなマジックバッグが作られたんだなと感心も・・・。
何でも入る容量無限な私のアイテムポーチは特別なんだと改めて実感した今日このごろです。
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ーリメイク情報ー
終焉の起源をリメイクしています。
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