第93話 脅威度Aの実力
エリアボス
聖女アンズ:
危ないですわ。
カスミ。不用意ですわよ。
【拒絶結界】
これはどんな状況とか言うと、私がエリアボスの部屋に入ったタイミングでグランタートルが放ったブレスが飛んで来たのです。
それを聖女アンズ様が【拒絶結界】でブレスを逸らして貰えたのです。
拒絶結界は魔法の発動者が拒絶する事柄を全て弾きます。ただし、術者の防げる力以上の力や貫通する力は防げないそうです。
世界の脅威のような存在の攻撃や本気の私の攻撃も防げないんじゃないかと言われました。
七十階層のエリアボスはグランタートルでした。
このモンスターは見た目が巨大なカメさんです。気持ち可愛く見えてしまいます。
背中にある甲羅に生えている棘みたいな物をガ〇〇ムのフィ〇〇ルかと思わせるように空中に展開しているのです。私がブレスを避けたことに気付くと次の攻撃を展開しています。
ここまで一方的に先制攻撃を受けたのは幼い頃の魔の森の黒虎を除くと初めての経験です。
甲羅にある棘みたいな物は尚も空中で待機し私をいつでも狙えるように展開しています。夥しい数の棘みたいな物がついに私に向かって突進攻撃をして来ます。
もちろん、聖女アンズ様の張る【拒絶結界】によって防ぎます。
カスミ:
【神炎の矢】
本来なら長い呪文を詠唱しなければならない魔法も無詠唱のスキルを得たことで、あの恥ずかしい呪文の詠唱しなくても魔法が使えます。
【神炎の矢】は【火矢】や【炎矢】などの魔法の矢系の上位魔術なので脅威度Aのグランタートルにも効果があるはずです。
カスミ:
えっ?
魔法を弾いた?
効果がないの?
賢者アレク:
これは驚いたの。
カスミ:
あれはどういうことですか?
賢者アレク:
聖女アンズ姫の防御結界のような物が、あの亀のモンスターの甲羅に薄っすらと貼り廻らされておる。
それにより魔法を打ち消したんじゃ。
カスミ:
対処方はないってことですよね?
賢者アレク:
そうじゃな。
甲羅を狙わないで頭部を狙ってみるのはどうじゃ。
賢者アレク様に言われた通りに魔法を打ち込みますが、カメさんの頭部や手足はヒョコっと甲羅の中に隠れてしまいます。まるで、魔法攻撃を予測しているような動きです。
カメさんの右手右足を狙うと右手右足側だけ甲羅の中に手足を隠してしまうのです。
頭部や手足を甲羅の中に隠していても私の位置は把握出来てるようで空中に展開している甲羅に生えている棘みたいな物は正確に私に向かって飛んできます。
もちろん、私も馬鹿みたいにエリアボスの部屋の入り口にずっといる訳でもなく常に移動している訳だから、頭部を隠したカメさんには私の位置は分からないはずですから。
頭部以外で私の位置を把握する方法があるかもしれません。
近づいて聖剣で甲羅を斬ってみるが何かに弾かれるような感覚で甲羅を傷つけることは出来ませんでした。稼働部位である頭部や手足への攻撃が有効のようです。
ダリアさんたちボスを倒す冒険者さんなら、グランタートルを倒すことが出来るはずなので倒せないモンスターではありません。何か良い方法があるに違いないです。
普通の冒険者が考えるような攻略方法がきっとあるはずです。聖剣の力や聖女アンズ様の結界を使えば倒せるはずです。
ですが、ここで簡単に倒してしまうのは面白くありません。普通の冒険者が考えた方法で倒せるはずなのですから私も見つけたいです。
まずは、グランタートルがどんなモンスターか考察してみようと思います。部屋に入るタイミングに合わせてブレス攻撃をして来る。
甲羅に生えた棘を飛ばして攻撃して来る。手足や頭部を隠しても攻撃出来るってことまで現在体験したことです。
カメさんはひっくり返すと良いと言われていますが、あの巨体をひっくり返すことは私には出来そうにありません。甲羅の下に太い丸太を入れてテコの原理でひっくり返すって方法があるかも。
でも、巨体をひっくり返せる程の力に耐えられる太い丸太のような物はボス前の部屋にもありませんでした。マジックバッグに入れて持ち歩いている(大きさの問題で)可能性はあります。
やっぱり、頭部を切り落とすなどで頭部を攻撃する方法が自然な気がします。カメさんをひっくり返すには、棘攻撃を避けながら甲羅の下に入れなければなりません。
そんな作業を引っ込めていた手足が邪魔しないとも限らないですし、威力が高そうな手足の爪攻撃もありそうですし少し危険な気がします。(安全に倒せないって意味で)
ルーティーン的な対処方法があるはず。
そうでなければ、折角ボスを倒す専門の冒険者さんを待機されていても苦戦するのでは次の冒険者さんと交代に時間を取られることになると思います。
結果的に最下層で活動しているとメインパーティーへ悪影響を及ぼす可能性だって発生しますからね。
何かしらの簡単な方法があるはずですが、まだ私には閃かないようです。
どう考えても私にも正攻法では無理と判断して聖剣を使って倒すことにします。答えが見つかるまでカメさんと遊んでいる訳にはいきません。
ですから、仕方ないですよね。次の八十階層の階層ボスの安全地帯に待機して冒険者さんに正解を聞くとしましょう。
カスミ:
空の【青】
炎の【赤】
私が魔力を込めた二つに分けた一つの青の聖剣を空に刺します。
刀身は空に刺さったように剣の柄のみが存在しています。
次に赤の聖剣を大地に刺します。
地面に剣が刺さった状態なので地面からは刀身が全く見えなく柄のみが見えます。
カスミ:
【青】は空の力。
【赤】は大地の力。
青の聖剣と赤の聖剣を引き抜く動作を行います。空はゴゴゴゴと言った感じで唸り始めます。赤の聖剣は大地から引き抜こうとする動作に合わせて魔力と聖剣によって大地からマグマが引き出されます。
今回はさすがにダンジョンの床なので大地は避けることはありませんでしたが、エネルギーとしてのマグマのエネルギーを引き出せました。
青の聖剣に天のエネルギーが集り、赤の聖剣に大地のエネルギーが集ります。
この工程まででも凄まじいエネルギーが天と大地の間で蠢いています。
タイチ:
アンズ。
カスミの技の余波のエネルギーを出来る限り防いでくれ。
僕たちは大丈夫でも、さすがにこのエネルギーだとカスミの身体が心配になる。
聖女アンズ:
分かりましたわ。
でも、こんなの防げるのですの?
無理なのではありませんの?
タイチ:
それでも出来る限りは防ぐしかないさ。
ガリア。
アンズが無理そうなら転移でアレクの屋敷へ。
魔王ガリア:
分かった。
タイチ:
アレク。転移門のポイントの設置を宜しく。
賢者アレク:
折角、ここまで来たのだから無駄には出来まいて。
カスミ:
【天地】
【天地】が作られたエネルギーをここから集めて撃い放つのが【キャノン】です。どんどんエネルギーが私の元へと集まって来ています。
カスミ:
カメさん。ごめんね。
【キャノン】
聖女アンズ:
これは駄目ですわ。
【保護結界】
賢者アレク様。
エアークッションのような緩衝材となるような魔法はありませんの?
賢者アレク:
聖女アンズ姫。
分かった。
【エアークッション】
私が使った【キャノン】によってカメさんが一瞬で消滅してしまいました。
それまでのエネルギーでボロボロな状態だったのですが、【天地】は発動すると止めることは出来ません。
キャノンの余波は聖女アンズ様と賢者アレク様のお陰で防ぐことが出来ました。
余波となったエネルギーも凄かったのでダンジョン全体に響くような大きな振動と轟音が・・・。
タイチ:
カスミ。
その技は、世界の脅威か本当にヤバいと思った時以外は使わない方が良いみたいだな。
周囲に人がいれば大変なことになっていたと思う。
カスミ:
ごめんなさい。
これでも力を制御して使ったキャノンだったのですが、まだまだ力を抑えないと使えないようですね。
これに代わる新しい技の開発も検討しなければと思う今日のこのごろです。
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ーリメイク情報ー
終焉の起源をリメイクしています。
こちらの作品も宜しくお願いしますmm




