第10話 危機的な状況
注意)グロ表現があります。
「ザッ」という草むらを何かが通り過ぎた音がしました。
私は何かに戦斧ごと押されたような感覚を受けると同時に「キャッ」という声がしたと思うとドンという何かが衝突したような音も聞こえました。
一体、何が起ったのか分かりませんでした。
何かを銜えた虎か大きな猫と思われるモンスターが目の前に急に現れました。
モンスターの口元を良く見ると人の腕のような物でした。それはレイラちゃんの右腕だった物のようです。
レイラちゃんは、モンスターに襲われ右腕を食い千切られ、勢いそのままに薙ぎ払われ木へと吹き飛ばされたようです。
周囲は、ウサギの血とレイラちゃんの夥しい血でむせ返るような血の匂いが充満しています。
肝心のレイラちゃんはというとかなりの勢いで衝突した木の元で動かなくなっています。
レイラちゃんの生死は現状では確認出来ませんでした。
ライム:
あ、あ、あ、あ、あぁあぁ~。
ライムくんが言葉にならない悲鳴のようなものを上げています。
モンスターは、威嚇&警戒しつつこちらの様子を伺っています。
私には「お前たちは俺の獲物だ」とでも言いたげにニヤりと笑ったようにも見えました。
後で知った話ですが、このモンスターは黒虎という脅威度Aのモンスターです。身体(本体)は黒を基準に白の縞模様という黒い虎です。
尻尾が二本もあるのは稀で通常の固定と異なった強さを持つモンスターを特殊個体と呼ぶそうです。
特殊個体は脅威度がアップします。たぶん、脅威度A+と思われる個体です。
こいつは、この魔の森の浅い所から深い所の境界付近の主のような存在で、村の狩猟団がメンバーの犠牲を出してしまったが右眼を奪うという手傷を負わせ何とか追い払えたほどの手強いモンスターだそうです。
右眼を奪われたことで激しく人を恨み、レイラちゃんが行った【索敵】に反応して襲って来たのではないかと思われます。
脅威度Aのモンスターは本来ならこんな所にはいないそうです。
威嚇し警戒しながら私たちの周囲をゆっくりと歩き始めます。
「ヒィー」という悲鳴しか出ないライムくんは戦力にもリーダーとしての機能は失せたと思います。
ジンくんは、身体を半身にしてモンスターの動きに警戒し臨戦態勢を保っています。私も戦斧を構えてはいるが、モンスターの攻撃に反応出来るどうかは分からないとしか言いようがありません。
モンスターは、レイラちゃんに続きライムくんまでも襲いました。
「ヒィー」という悲鳴しか出ないライムくんは腰を抜かしてしまって逃げることも出来ません。
軽くと言って良いのか分からないが、ライムくんを甚振るように猫パンチが振るわれます。
「ぐああああぁぁぁぁー」という大きな叫び声を上げたライムくんもレイラちゃんがいる方向とは違いますがあっけなく近くの木へと吹き飛ばされます。
もちろんライムくんは無事な訳もなく、その手足は向いてならない方向へと折れ曲がっています。
口元は血を吐いた様子も窺え、手足も骨折しているので意識を保っていられるのも時間の問題です。
ジンくんと私は悔しそうに憎たらしくモンスターを見詰めます。
モンスターが更に動きます。次の狙いは私でした。
私は咄嗟に戦斧を両手に持ち防御しようと構えますが、強い攻撃に耐えられる訳もなく簡単に吹き飛ばされてしまいます。
運良く木に衝突することはなかったですが、戦斧を持つ両手が痺れてしまっています。
これ程、強い衝撃を受けたのは初めてです。
村で行った模擬戦、ジンくんと行った訓練でもここまでの威力はありませんでした。
ジンくんもモンスターに弄ばれるようになり私たちはどんどん窮地に陥ります。
一度、人に右眼を奪われた経験からかやたらと警戒した様子が伺えます。
弱者であるはずの人の子供冒険者であっても侮ることなく警戒し続けています。
私たちがスキを見せると攻撃して来る。
それまでは警戒するといった具合で強者が見せる警戒ではありません。
余程、右眼を失った時が悔しかったのか。
子供に見えるからと言って侮ることなく警戒しているのかまでは分からないですが、私たちにはこの強者が見せるスキの無い警戒にどうすることも出来ませんでした。
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ーリメイク情報ー
終焉の起源をリメイクしています。
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