私が異世界転生した件(タチバナハルの場合)
今、思うと何ともあっけないものだと思った。
最後に耳に残っているのは貫くようなブレーキ音だけだった。
数日前。
私、立花ハルは焦っていた。いつのまにやら高校3年になり、特に実績も
残せないまま、卒業までもう少しまで迫っていた。
「どうしよう……」
私が所属している超常現象クラブは歴史ある部活で数々の異世界転生者を
輩出している。
顧問のツボミ先生もその一人だ。
「私の場合はたまたまだって」
そういって謙遜して笑っていた。
「私もたまたまでいいから異世界転生してみたーい」
私も本に書かれているありとあらゆる方法で試してみたが、
未だに異世界転生には至っていなかった。
「ねえ。先生があの時異世界にいったお話聞かせてよ」
「いいけども。何度目よ」
「お願いします。まだ気づいていなかったヒントがあるかもしれないから」
先生は異世界に行って帰ってきた。珍しいタイプの人物だった。
だいたいの人が異世界に行ってから帰ってこない。
私は先生の話を熱心に聞いていたら、帰る時間になった。
「あら大変。また明日ね」
そう言って私を部室から追い出した。
その帰り道、私は事故に巻き込まれた。走馬灯ってあるんだと
車に轢かれる前に思った。