【変質者《ドッペルゲンガー》】
ぷーくすくす♪
また投稿しないって思っちゃった?
ざんねーん、投稿しちゃいました~☆
はてさて、ストックも残り僅か……ストイックにならないとアイディアとか浮かばないんだよね。
やる気を出すには、まずはやるってね。
「おい、【変質者】じゃねぇか!」
一人の魔法少女が、そう叫んだ。
ここは魔法少女が集う拠点【アルカナ・ガーディアン】と呼ばれる場所。
そこには数多の【アルカナ】の魔法少女達が国籍問わずに駐在している。
【アルカナ】の仕事は、【ウィティウム】の討伐や調査やそれに関係する事件に警察との協力がある。勿論、魔法少女である為に基本学業がメイン。しかし、大学生や20才以上は魔法少女というより魔女の方々もいるのでその彼女らも対応している。
「ドッペルゲンガーですか?」
「ああ。奴が現れたのは5年前。奴の能力はまさしく、変質者」
「へ、へんしつしゃ!?」
「変な意味に捉えんなよ?奴の能力が変質的だからだ」
「変質的?」
テレビの中継を見ながらショートカットの魔法少女は言う。そして何よりその【変質者】を実際に目の当たりにして染々と呟いた。
「アタシが奴と会ったのは、まだ魔法少女としてペーペーだった時だ。あの時、【ウィティウム】のドラゴンと遭遇した時だったな」
「【ウィティウム】のドラゴン!?」
【ウィティウム】のドラゴン。
かつて、東京を一夜にして壊滅させた【ウィティウム】であった。新しい記録としては10年前であり、【アルカナ】の魔法少女の他の組織が束になっても敵わず打つ手がない状況であったのだ。【ウィティウム】のドラゴンが討伐された実績があるのは数ヵ国のみ。残念ながら日本はその実績もその実力者は居なかったのだが、討伐されたのである。
しかし、不思議なことに討伐した者は存在しているにも関わらず記録に無い。厳密には抹消されているのだが………。更に恐ろしいことに【ウィティウム】のドラゴンは一体だけではなく七体だったということ。
これはそれを目撃していた者達がいたからだ。が、それが事実なら既に世界は滅んでいる筈だと殆どの者達は【ウィティウム】のドラゴン七体など虚言と言われる始末。
「ま、待ってくださいリーダー!【ウィティウム】のドラゴンが現れたのは10年前……リーダーはまだ【アルカナ】には入隊してない筈では………」
「これは極秘事項ではあるが、三年前に【ウィティウム】のドラゴンが二体出現したんだ」
「……は?」
「【ウィティウム】の悪魔を討伐中だった。そして【ウィティウム】のドラゴンに襲撃されて、隊は壊滅状態。死を覚悟はしたんだが………その時に助けられたんだ。奴、【変質者】に」
「ま、待ってください!【変質者】って、今テレビに映ってる“サクヤ”に変身している奴ですよね!?特殊能力だとしても、人でしょう!人の身で【ウィティウム】のドラゴンを討伐出来ません!」
「しかし、10年前は討伐の記録はあるが?」
「それは対【ウィティウム】兵器によって……」
「過去の記録を漁ったが、そんな記録も形跡も無い。むしろ【ウィティウム】のドラゴンの襲撃によって兵器を保管している施設が破壊され使用できなかったという記録は残っているが」
「それ、は」
何故、【ウィティウム】のドラゴンを討伐した記録が残されていないのかは不明。明らかに国と組織の上層部によることは少し調べれば分かること。
「奴の能力は変身と侮るな。変身だけでなく、変身した相手の能力まで扱える」
「ま、待って待ってリーダー。そんなの、バカげている………!」
「事実だ。奴は……【変質者】は私に変身し、今の私となって【ウィティウム】のドラゴンを討伐したんだ…………あれこそ、私が。私自身に求める理想だったんだ」
魔法少女のリーダーは、染々と懐かしむ様に部下であるサクヤに変身した【変質者】を眺める。本物と偽物の見分け方は、実に簡単だ。
本物はニコニコと表情が豊かだが、偽物である【変質者】は仏頂面。そして何より少し大人びているのだ。心身ともに。
過去のリーダーが、己の理想を具現化した憧れの存在でもある。見た目は兎も角、その力を。そしてその扱い方を。
しかし、テレビに映る偽物のサクヤがリーダーが思っていない行動してしまう。
「………なんだ、それは。なんなんだ、【変質者】!」
「り、リーダー。言ってましたよね。変身した相手の能力を使うって」
【アルカナ】の魔法少女、サクヤの能力は一言で言うなら杖を媒体にして魔法陣を展開し、攻撃する手法だ。杖が無ければ魔力を放出する単純な力。特別な能力は無いが、その保有する魔力は常人よりも遥か上。人智を越えているのだ。
これこそ、ある意味特別な力だろう。
だが。
「リーダー。サクヤは、刀なんて使ったことありませんよね………?しかもあれ、彼女の身長の三倍はありませんか?」
「武器なんざ握ったことない筈だ………おい、まさか!アタシは、奴の!【変質者】の力を勘違いしてたのか!」
リーダーは吹き出して腹を抱えて笑い出したのだ。その場にいた部下達も普段笑わないリーダーが大笑いするのだ。まるで今まで信じ続けていたものが、己の遥か想像の上にいたことに。そして、辿り着きそうだった終着点はまだ先立ったということに。
「あれは、あの大太刀は───間違いねぇ!【破邪の御太刀】!」
「それって、失われた対モンスターの神刀ッ!」
かつて、奉納刀でありその最も長い太刀ゆえに通常のモンスターだけではなく大型モンスターにも討伐に使われた人智を逸脱した大太刀。
人が扱うには長過ぎであり、大き過ぎであり、重すぎる武器。過去に扱う者はいたが、ただ力任せに振るうしかない武器でしかなかった。が、数年前に忽然とその破邪の大太刀は失われたことになりその原因は不明だったのである。
「変身した相手の能力だけではなく、他の能力も併用……いや、その力は奴のものか?いや、何であれ奴は何者だ。性別は分からんが………よし、今サクヤに応援を向かわせている【アルカナ】達に通達しろ。“破邪の大太刀”を所有している偽のサクヤ、【変質者】には警戒を。そして相手の出方次第だが、奴をスカウトしろ」
「リーダー、それは!?」
「あと本部にも伝えろ。【変質者】を率いれるなら、下手な勧誘は止めておけと。最悪、奴の力なら【アルカナ】を破滅に追い込むことも可能だと、な」
「り、リーダー!?!?そ、それを本部に!?」
「………そうか。そうだな。アタシが直接言ってやろう。本部に繋げ」
「は、はい!」
【アルカナ】第七支部リーダー、【風間 ナギサ】。
魔法少女としては18歳であり、20歳を過ぎれば魔女として役職を変わることとなる。しかし、本来【アルカナ】のリーダーは基本魔女。魔法少女として【アルカナ】のリーダーの任せられるのは最年少。それ程の実力者であった。
功績は、15歳の頃に【ウィティウム】の騎士を単身で討伐。16歳の頃に小隊長として指揮を勤め【ウィティウム】の悪鬼を討伐。そしてその半年後に【ウィティウム】の夜叉と単身で撃破した功績がある。
そして、18歳で第七支部リーダーとなり数多の【ウィティウム】討伐功績を叩き出す若き武神と呼ばれる程に【アルカナ】以外の多組織からの認知度も最も高い魔法少女である。
故に、精鋭が集う【アルカナ】本部であってもその発言力は恐ろしく強いもの。
「あの時、決めたんだぜ?テメェに助けられたその時に、アタシに変身した【変質者】を越えてやるってな!」
その魔法少女にとって、【変質者】は目指すべき存在であり、理想であり、越えるべき存在であった。それこそ、まるでヒーローの様に。
しかし、【変質者】は彼女の憧れとなっていることに彼はまだ知らない。