5話旅の始まりその3
「子供や自分よりも立場が下のものや弱いものを奴隷のように扱うクズはどこの世界にも居るんだな。お前たちのようなクズを見るとどうしようもなく腹が立つ。…わたしの父親のように魂が腐り果てたゴミクズは、この美しい街には不要だ。この街の景観を損なうからね。ここで綺麗に始末させてもらう。これは元々その為の力だ。『キラーズ』」
彰が能力『キラーズ』目覚めたのは7歳の頃、碌に仕事もしないで彰の母親が必死に働いて稼いだなけなしの金で酒とギャンブルに明け暮れ、機嫌が悪いとその母親と彰に暴力を振るうゴミクズとしか言いようのない父親から母親と彰自身を守らなくては、その為にはこのゴミクズをこれ以上生かしておけない!という強い想いから発現した。この能力を使って父親を殺すことには成功したが、彰の母親は予想外にもこの父親を、このゴミクズを愛していた。母親は父親の死を酷く悲しみ、そのまま精神を病んで翌年亡くなってしまったが、彰には母親が全く理解出来ない存在になっていたので亡くなった時も悲しいという感情は全く湧いてこなかった。むしろ母親が入院中、お見舞いに行くたびにいっその事どうにかしてお前も殺してやろうかと思っていた。
両親が死んで、天涯孤独の身となった彰は児童養護施設に預けられ、少年時代を施設で過ごすことになるのだが、父親を殺した時のこれまで溜め込んていたものがスッキリ綺麗に無くなるような清々しい快感を忘れられずに今に至る。
「何だぁ?その小せぇ人形のようなモノはよぉ。お前魔導士か?口ではでかいこと言っておいて、随分と弱そうな魔法だな。ククク…旦那!こいつをさっさと始末して、そこの魔族のガキを連れ戻すんで、礼金はずんでくださいよ!!」
奴隷商の私兵と見られるゴロツキの一人が得物のサーベルを抜き、凄いスピードで彰に迫る。それなりの使い手らしく、勝ちを確信して突っ込んでくる彼とは対象的に奴隷商は彰と『キラーズ』に対して驚きを隠し切れないでいた。
(あのバカが!あいつは魔法が使えないので分からなかったようだが、俺には分かった!魔法というのは本来、発動する時に僅かにでも魔力の流れを感じられるものなのだ。だがあの男からはそれが一切感じられなかった!あれは魔法ではない!!何なんだ!?あの男は何者なんだ!?)
「君、目と耳を塞ぐんだ。これから起きることを極力見たり聞いたりしないようにするんだ。良いね?」
彰が少女にこれから起こる出来事が極力トラウマにならないよう言い伝えると、少女は戸惑いながらも頷き、目を閉じ耳を塞いだ。
「よし、なるべく早く終わらせる」
(叫び声をあげる間もなく消し飛ばすのがベスト)
「あぁ、勝負は一瞬さ。お前の負けで決着よぉ!!」
ゴロツキが彰に斬りかかろうと大きく踏み込んだ瞬間、足元の地面が爆ぜた。
「ぅぐっ…!!?」
ゴロツキが体勢を崩した隙を逃さず『キラーズ』の戦闘機がミサイルを撃ち込んだ。ミサイルはゴロツキに直撃し、爆炎が晴れると、そこに居たゴロツキの姿は影も形も無くなっていた。奴隷商と他のゴロツキ達に戦慄が走る。
「なん、え!?あの小さなもののどこにそんなパワーがあるっていうんだ!!?」
「う、うわああああ!!」
「旦那、悪いけどよぉ、俺は降りるぜ!こんなのやってらんねぇよ!!」
ゴロツキ達は恐れをなして次々に逃げ出し始めた。
「ま、待てお前等!こういう時のために高い金払ってやってんだろ!!ぅおっ!!?」
戦闘機は逃げ出すゴロツキ達に奴隷商が気を取られている間に照準を合わせ、ミサイルを発射し、一瞬にして消し飛ばした。
「もう目を開けて大丈夫だよ。君のお家に帰ろう。君の家はどこだい?」
彰は少女の手を引いてもと来た道を引き返す。ゴロツキ達が逃げた方角から爆発音が小さく聞こえたが、彰は振り返ることはなかった。
あまり投稿出来ませんでしたが、2023年最後の投稿です。引き続きゆっくりとではありますが頑張って書いていきますので2024年もよろしくお願いします。




