2話こんにちは異世界その2
彰は屋根付きの荷馬車の荷台に乗せてもらい、御者と共に王都を目指す。
(何だか色々と元の世界では考えられんことが多すぎる。死後の世界というやつか?何だか思っていたのと大分違うが…とにかく別の世界に来たと考えたほうが良さそうだ)
「なぁあんた、そう言えば名前聞いてなかったな。俺はキース、キース・レントン。行商人をやってる」
「わたしは毛利彰という」
「モーリアキラ?何だか変わった名前だな。モーリさんでいいかい?」
「好きに呼んでくれて良いよ」
「しかしすげぇよな。モーリさんが瞬殺したさっきのブラックワイバーン、ありゃ生態系の頂点ドラゴン種だぜ?」
二人が会話をしながら王都に向かっていると、前方から騎馬集団が近付いて来た。
「そこの荷馬車止まれ!!」
キースが慌てて荷馬車を停めると、十数騎の騎馬集団が壁のように前方に並び、その内の一際オーラを放つ騎士がキース達の前に進み出る。この集団のリーダーなのだろうか。
「我々はウェステリア聖騎士団である。ドラゴンの鳴き声を聞いたという通報を受けて来たのだが、ここに来る途中何もなかったかね?」
「え…」
キースが何かを言う前に彰はすかさずキースに指示を出す。
(キース、何もなかったし、何も見なかったと言え)
「あぁ、何もなかったし、何も見ませんでしたよ。ドラゴンなんかに遭遇したら無事でここまで来れませんって」
「…まぁ、そうだな。む?おい、そこの荷台の男、貴様何者だ?降りて来い」
彰は仕方無く荷台から降りた。騎士達は皆彰を見て、不思議そうにしている。
「貴様、変わった格好だな。何処から来た?」
彰は少し考えて、
「…東の方から」
「東、というと、イースか?」
「?…えぇ、まぁ」
「ふむ、まぁいいだろう。貴様らはこれから王都に行くのかね?最近は魔物がどういうわけか活発化しているからな。この先気を付けたまえ。それにまだこの辺りにドラゴンが居るかもしれんからな。足止めして悪かったな。それでは我々はこの先に様子を見に行くので失礼する」
騎士団長は団員を引き連れ、彰達が来た方へ向かって行った。
「はぁ〜、騎士団って緊張すんだよなぁ〜。何も悪い事してないけどさぁ」
(…しまった、わたしとしたことがドラゴンとやらの死骸をそのままにしてきてしまったぞ。いきなり訳の分からん世界に来て思っている以上に動揺しているのかも知れん)
「キース、王都に急ぐぞ。奴等ドラゴンの死骸を見つけたらわたし達のことを不審に思うだろう。根掘り葉掘り聞かれるのは面倒だ」
「お、おう」
そこからは魔物に出会ったりは特に無くしばらく行くと、巨大な城と、その周りを囲む立派な城壁が見えてきた。
「もう王都に着くぜ。あの城壁を内側に街があるのさ」
城門を潜ると、そこはいかにも中世ヨーロッパの街といった雰囲気の町並みが広がっていた。そして街の住人達を見て彰は思った。
「キースの服装が浮いているのではない、浮いているのはわたしの方だった!」




