1話こんにちは異世界その1
まだ連載中のものがありますが、書きたくなったので始めます。
どうでもいいことですが、あらすじを考えるのが苦手です。
「…ここは、一体…?」
気が付くと、だだっ広い草原にポツンと立っていた。
草原に立ち尽くすスーツ姿の彼の名前は毛利彰、年齢三十二歳。窓辺商事という会社で働くしがないサラリーマン。家族構成は4歳下の妻と六歳になる息子が一人。趣味は家族で出かけることと息子と遊ぶこと。そして殺人。
そんな彼はトラックに轢かれて死んだ筈だった。それが何故かだだっ広い草原に一人立ち尽くしている。草原を両断するように轍が出来ており、そこは道のようだがそれ以外には特に何もなく、空を見上げてみても、そこには雲一つ無い青空が広がるばかり。
「わたしは、トラックに轢かれて…!?それなのに、傷一つ無い!スーツだってまるで卸したてだ。あの時は自分でも死んだと思ったが…何処なんだここは?ここが何処か知るためにも何か情報がほしいが、しかし困ったな、周りに何も無い。ここからどうしようか…」
「ギャアアアス!!!」
「何だ!?」
後方から特撮映画の怪獣も逃げ出すような凄まじい迫力の咆哮が響いて来た。振り返ると真っ黒で巨大な怪物達がこちらに向かって来ていた。
「な、何なんだあの化け物は!?恐竜、では無いな。何者かの“能力”か?」
巨大な翼を羽ばたかせて飛翔するその姿はまさにフィクションの世界のドラゴン。紛うことなきドラゴンである。よく見るとそのドラゴン達はわずか前方を行く荷馬車を三体で囲むように追い回しており、必死の形相で逃げる荷馬車の御者に対してドラゴン達はすぐにトドメを刺せるのにわざと追いつかないギリギリの距離を保ったまま飛翔している。人間が虫に対してするように弱者をいたぶって遊んでいるのだ。少しは知能もあるらしい。
「おいおい、冗談じゃないぞ。このままではこっちに来てしまうじゃあないか!あの御者がどうなろうと知ったことではないが、こっちに向かってくるのなら仕方がないか…『キラーズ』」
彰の目の前に三機の小さな戦闘機が姿を現した。これは彼が持つ特殊能力で、彰はこれを『キラーズ』と名付けて呼んでいる。見た目は小さいが、この戦闘機のミサイル一発で人間一人を跡形もなく消し飛ばすだけの破壊力を持っている。そして一度標的にしたものを消し飛ばすまで何処までも自動で追撃する。その戦闘機がそれぞれドラゴン達に向かって一直線に飛んでいく。
「あの怪物にも通用するのか、試させてもらおう」
ドラゴン達は『キラーズ』が小さいので目の前に来るまで荷馬車に夢中で気付かなかった。そして、『キラーズ』に気付いてその大きな口から火炎を吐き出そうとしたが、それよりも速く戦闘機達はミサイルを発射していた。ミサイルは今にも火炎を吐き出そうとしているドラゴン達の口内に吸い込まれるように着弾し、口に溜まった火炎ごと大爆発を起こした。
「な、何だよ今度はー!!?」
突然の出来事に驚く御者の周りに無惨にも焼け焦げた肉片と化したドラゴン達の死骸が降り注ぐ。
「う、え?…はぁ!?」
御者は何が起こったのか訳もわからないまま、とりあえず荷馬車を降りた。そこへ一人の見慣れない格好をした男性が歩いてくる。
「ふ〜、あの大きさなら流石に跡形もなく消し飛ばすのは出来ないか。だがこれでかなりスッキリしたぞ。風呂上がりに新しいパンツを履いたときのような良い気分だ!」
「な、何者だ、あんた…!?」
「ン?君は運がいいな。標的が上空を飛んでいたので爆発に巻き込まれずに済んだか。もし地面を這ってくる相手ならこうはいかなかったかもなぁ」
「あんたがやったのか?…これを」
「あぁ。放っておいたらわたしも巻き込まれそうだったのでね」
「あんた、変な格好してるけど、何処から来たんだ?それにさっきの爆発は、あんたもしかして魔導士か!?」
「この格好が変とはおかしなことを言うな君は。これはサラリーマンの戦闘服だ。そういう君こそかなり浮いた格好だぞ。しかもとっくに自動車が普及したこの時代に馬車?それと魔導士とは何だ?」
御者の男は中世ヨーロッパの時代に誰もが来ていたであろう服装だった。どことなく顔立ちも西洋人っぽい。
「は?ジドウシャ?何いってんだよあんた。魔導士ってのは、マナストーン無しで魔法を扱える魔力を持った奴らのことさ。まさか魔導士知らないやつが居るとはなぁ、知らないってことはあんたホントに魔導士じゃないのかい?」
「…さっきから君が何を言っているのか分からないな。まぁいい、ここは何処なんだ?わたしにもわかるように答えてくれ」
「ここは何処かって、ここはウェステリア王国だけど?ほら、この道を更に西へ真っ直ぐ行くと王都さ。そうだ!なぁあんた、行く宛がないなら一緒に来るかい?こんなとこにずっと居ても仕方無いだろうし、王都に行けばもしかすると何か分かるかもしれないだろ?俺ももうドラゴンだとか魔物に襲われるのは勘弁だし、あんたが居てくれれば心強いんだが。もちろん礼もする!あんたは命の恩人だからな!」
「ふむ、まぁ確かに、こんなところに居ても仕方無いか…。良いだろう。王都とやらに連れて行ってくれ」
そういう事になった。