↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
37/75

ex ありがとうシュウマイ

今日もシエリアは真面目(まじめ)に依頼(いらい)を解決(かいけつ)しようとしていた。


ライターを着(つ)けて、真っ白な紙(かみ)を炙(あぶ)る。


すると文字が浮かび上がってきた。


「う〜ん、あぶりだしの暗号(あんごう)かぁ。すごく初歩的(しょほてき)だなぁ」


依頼を完了すると同時に誰かが声をかけてきた。


「おおい。シエリアちゃん」


突然(とつぜん)の声かけにびっくりして少女は飛び上がった。


そこにはバリーと言う名のおじいさんがいた。


いつも彼はキューという名の犬を散歩している。


キューは真っ白な体毛(たいもう)に、ぬぼーっとした性格(せいかく)、そしてなにより身体がデカい。


こんな巨大(きょだい)な犬はめったに居ないだろう。間違いなくワールドレコードクラスである。


ただ、バリーじいさんはキューに冷(つ)たい。


「まったく。こいついっつもだらだらしてるし、何考(なにかん)えてるかわかんねぇし、やたら大飯喰(おおめしぐ)らいいじゃし、なんだかのぉ」


かなり煙(けむ)たがっているが口調(くちょう)から伝わってくる。


「ぶぁ〜〜あ〜〜」


キューはのんびりと呑気(のんき)に欠伸(あくび)をした。


「カミさんはなんでこんなんチヤホヤすんのかわかんないよ。大して愛嬌(あいきょう)もないのにのぉ」



雑貨屋少女(ざっかやしょうじょ)はそんな巨犬(きょけん)の首輪(くびわ)が新しくなっているのに気付(きづ)いた。


おしゃれなタルがついている。大柄(おおがら)な犬なのでこれくらいなら軽々持つ。


シエリアはパラパラとペット用品(ようひん)のカタログを眺(なが)めた。


(ふ〜ん。雪山(ゆきやま)の救助犬(きゅうじょけん)の装備なんだ。中にはお酒が入ってて、凍(こご)えた人を暖(あたた)める。あとは救難信号機能(きゅうなんしんごうきのう)があるのかぁ。音を出しながら発光(はっこう)する……と。昔は一人前(いちにんまえ)の大型犬(おおがたけん)に贈(おく)る風習(ふうしゅう)があったみたい)


ここいらに雪は降らないが、救命弾(きゅうめいだん)はなにかの役に立つかもしれない。


少なくともおじいさん以外には愛(あい)されているのだろうとわかって、思わずシエリアは微笑(ほほえ)んだ。


「ほいじゃ。今日も頼むな」


そう言うとバリーはキューを預(あず)けてふらふらと消えてしまった。


なんでも「カミさんは足が悪いので嫌々(いやいや)に散歩している」という


なので、彼は散歩の依頼(いらい)を時々(ときどき)、シエリアに丸投(まるな)げするのだった。


キューは歩くとき無理に引っ張ったりはせず、大人しく横を歩く。


吠(ほ)える犬にも大きく構(かま)え、喧嘩(けんか)する素振(そぶ)りも見せない。


子どもたちが寄ってきてペタペタ触(さわ)っても嫌な顔一つしない。


非常に賢(かしこ)く、温厚(おんこう)な犬と断言(だんげん)できた。


シエリアが思うにバリーの評価(ひょうか)に反(はん)してかなり良い犬だと思えた。


ただ、バリーの気持ちも少しはわかる。


とてもマイペースで、どんくさいところがある。


食べ物にも貪欲(どんよく)で、食料品店(しょくりょうひんてん)の前で動かなくなったりもする。


そんなキューとシエリアが街(まち)のはずれを散歩していると若い女性が叫ん(さけ)でいた。


「ポルムちゃん!! ポルムちゃん!! どこへ行ったの!! 返事(へんじ)をしてぇ!!」


鬼気迫(ききせま)る叫(さけ)びにシエリアは驚(おどろ)いた。


「ねぇ!! ウチの……ウチの娘(むすめ)は? どこにいるのか知りませんか!?」


なんでもこの母親の娘が行方不明(ゆくえふめい)になってしまったらしい。


すると、取り乱(みだ)す女性の匂(にお)いをキューがクンクンと嗅ぎ出した。


「んむ〜〜〜」


よく見ると母親の手に握(にぎ)られた髪飾(かみかざ)りに集中している。


「ばうっ、だうッ、だうッ!!」


何かを察知(さっち)したのか、キューはヒモを振(ふ)り切って普段(ふだん)からは想像(そうぞう)できないほどの速(はや)さで駆(か)け出した。


「ちょっ、ちょっと!! キュー!! キュー!!!!」


必死(ひっし)にシエリアは追いかけるが、さすがに犬には敵(かな)わない。


足跡(あしあと)をたどりに後を追うと工事現場(こうじげんば)に着(つ)いた。


シエリアはお世辞(せじ)にも運動神経(うんどうしんけい)が良いとは言えないので息を切らした。


「ハァッ、ハァッ!! キュー〜〜〜!! キュー〜〜!!」


気づくと犬は土管(どかん)に首を突っ込んでいた。


そして何かを咥(くわ)えるとそれを引きずり出した。


「あ〜あ。見つかっちゃったぁ。かくれんぼ、だれにもみつからないと思ったんだけどな〜〜」


どうやら行方不明(ゆくえふめい)だったのはこの娘(むすめ)だったようだ。


匂(にお)いから追跡(ついせき)したキューのお手柄(てがら)だった。


だが、突然に立てかけてあったパイプが倒(たお)れ込んできた。


さかさずキューは幼女(ようじょ)を突(つ)き飛ばして、身代(みが)わりになった。


ガランガラン!! ガシャンガシャン!!


巨犬(きょけん)は重い鉄棒(てつぼう)の下敷(したじ)きになってしまった。


「きゅ〜〜ん。きゅ〜〜ん……」


キューは苦しげにうめいた。このままでは押しつぶされてしまう。


「ワンちゃん!!」


「キュー!!」


シエリアはすぐにもがく犬の元に駆(か)け寄(よ)った。


カタログで見た首輪(くびわ)の情報が鮮明(せんめい)に蘇(よみがえ)る。


「えっと、確かこのヒモを引けば!! えいっ!!」


少女は救命弾(きゅめいだん)を使用したが、それはウンともスンとも言わなかった。  


「うそ!? 不発(ふはん)!? ど〜しよぉ〜〜〜!!」


シエリアはいつものようにパニックを起こしかけた。


「落ち着け、落ち着くんだ私!! あッ!!」


だが、すぐに閃(ひらめ)いて冷静(れいせい)になった。


「あったかくなるお弁当はヒモを引っ張ると発熱した!! だからきっとこのヒモも同じ効果がある!! つまるところ、別の方法で救命弾(きゅめいだん)を温(あたた)めれば発射(はっしゃ)される!!……はず」


何の確証(かくしょう)もない推理(すいり)だったが、今はそれに縋(すが)るしかない。


しかし、今になってシエリアは気付いた。


「うわぁぁぁ〜〜〜!! 発熱(はつねつ)するものが無いよぉぉ〜〜。取りに戻ったら間に合わない!! 周りに使えるものもない!! うわぁぁぁ!!」


雑貨屋がジタバタすると地面に何か落ちた。


そしてそれはキラリと光った。


「ら、ライター……?」


朝、あぶり出しをやっている時にびっくりして、無意識(むいしき)にポケットに突っ込んでいたのだ。


「は、早くしなきゃ!!」


シエリアは首輪(くびわ)のタルを外すと発射方向(はっしゃほうこう)を上にして下からライターの火であぶった。


「ピエーーーーーン!!!! ドカン!! ドカドカン!!」


街中(まちじゅう)に響くような警戒音(けいかいおん)、そして眩(まばゆ)い閃光(せんこう)。


それを聞いてすぐに街人(まちびと)たちが集まってきた。


「おい!! 女の子とデカい犬が!!」


すぐにキューの上に覆(おお)いかぶさったパイプがどけられた。


その後、動物病院(どうぶつびょういん)に運び込(こ)まれたキューは打(う)ち身(み)を負(お)ったものの、すぐに元気になった。


騒(さわ)ぎを聞きつけた新聞社(しんぶんしゃ)は名巨犬(めいきょけん)の大活躍(だいかつやく)としてこれを取り上げた。


その影響(えいきょう)でキューの飼(か)い主とシエリアがセポール市長(しちょう)から表彰(ひょうしょう)されることになった。


しかし、トラブル・ブレイカーはこういったものを避(さ)ける。


過度(かど)に目立(めだ)ってしまうと仕事がやりにくくなるからだ。


地味(じみ)で、誰にも気づかれないくらいがちょうどいい。


それにしては最近、やけに仕事が多い気もするが。


あれ以降(いこう)、バリーじいさんはキューを大事に扱(あつか)うようになった。


「ほんとに今まですまんかったのぉ。手のひら返しと言われても良い。それでも今まで邪険(じゃけん)にしてすまなかったなぁ。なぁ、キューや……」


そういいながら老人(ろうじん)は名巨犬(めいきょけん)をなでた。


「ばうばう!!」


キューは嬉(うれ)しそうに尻尾(しっぽ)を振(ふ)った。


それからというもの、バリーじいさんはサボらず散歩にいくようになったとさ。



危機一髪(ききいっぱつ)だったけど、みんな無事で本当によかったです。


ヒモを引くと発熱(はつねつ)するという発想(はっそう)は最近、食べた駅弁(えきべん)のシュウマイのお弁当(べんとう)からです。


でも、列車内(れっしゃない)で食べるとすごい匂(にお)いなんですよね……。


美味しかったけど、すごく恥ずかしかったなぁ……というお話でした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。