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私はこの街の皆が大好きだから

解決困難な依頼ばかりに思える雑貨屋だったが、時にはさほど難しく無いものも来たりする。

道案内、名所案内はその最たるものだ。

シエリアが店番をしていると、爽やかな青年がやってきた。


一癖も二癖もあるいつものお客さんと比べれば、至って普通に見える。

そんな彼は依頼内容を語り始めた。


「ボク、セポール大学の観光資源学部のフォルンです。よろしくお願いします」


彼はご丁寧に名刺を渡してきた。


「さっそくですね、今度、セポールの名所についてのレポートを書かなければならないんです。でも、ボクは編入生だからこの土地のことがよくわからなくて……」


青年はひたいに手を当てた。


「ハァ‥‥何しろ急な話で、協力してくれそうな友達がまだいなくて。だからあなたに名所を案内してほしくて来ました」


これは割りとカジュアルなので依頼とは言えないような気もする。


「ええ、わかりました。名所をご案内しますね」


早速、シエリアは休憩の看板を立てて、表通りに出た。

まずはメインストリートを案内した。


「あそこのお店が釜亭がまていです。創業時から続く秘伝のスープやダシを8つの巨大なかまで煮ているのが名前の由来です。大衆食堂なのでみんなに人気です。ウナジューはうま怖」


「うま……こわ?」


そして雑貨屋は様々な店を紹介していった。

フォルンは熱心にガサガサとメモをとっている。

歩いて商店街の広場へやってきた。


「ここは広さにも余裕があるのでいろんな行事に使われます。ふくびきや激辛料理大会とかやるんですよ。トップモデルさんが沈んだ激辛料理の惨劇はセポール7不思議の1つ目です」


そして少女は広場の中央を指さした。


「ここが有名な"ダンチェの泉"です。コインを投げ入れると幸せになれるそうですよ。コインを吐きまくる男性が出たと話題になりました。セポール七不思議の2つ目です」


「ふむ、ふむ‥‥」


学生は首を縦に振った。

シエリアは泉の隣の通りを指さした。


「あっちは坂道市場。道の左右で露天商の方々が品物を売ってます。不思議な喋る剣とか売ってるかもしれませんよ。セポール7不思議の3つ目です」


青年はうなづきながら話を聞いている。

これだけ真面目に聞いてくれると、少女はつい嬉しくなって解説に熱が入った。

坂道の先には伝統を残しつつもハイカラな建造物が群が建っていた。


「で、あちらに見えるのがセポール大学です。国内でも屈指の名門校で、いろんな学科が‥‥。あ、ここはご存知ですね」


そしてシエリアは小洒落こじゃれた建物を指差した。


「あそこが音楽ホールです。楽団の人たちが演奏したり、アイドルのライブがあったりします土器土器ミ☆」


そして2人は街の外れに移動していった。

街から少し出た先に線路が見えてきた。

そばに行くとレンガ造りの立派な駅舎である。


「ここがこの街の玄関口、セポール鉄道です。石炭で走っています。北上していくとセポール峡谷きょうこく、更に進むと首都につきます。私はおのぼりさんですけどね…」


彼女は逆方向を指さした。


「南に行くと砂漠があって、ピラミッドやスフィンクスがあります。そのまま南下するとパパタ海岸に着きます。船に乗るならここからですね」


シエリアは北側の線路に視線を移してキラキラと光る湖の方を向いた。


「あそこがシュレイン湖です。この一帯の水瓶みずがめで浄水場があったり、釣り大会が開かれたりもします。夜な夜な物騒な格好をしたお化けが出たり、謎の像も現れるらしいです。セポール7不思議の3と4ですね」


そこから少し歩くとのどかな田園地帯に着いた。

田んぼから少し離れたところにポツリと沼があった。


「ここはカップァ沼です。普段は子どもたちが水玉ザリガニ釣りとかしてますが、なんでもUMAが出るらしいです。セポール7不思議の5つ目ですね」


そこから郊外に目をやると太陽が水に反射して光っていた。


「向こうに見えるのは露天温泉です。入浴料は高いけど、色んな種類の温泉があります。市民のいこいの場になってます。本物の温泉なのか、ニセ温泉なのかはセポール7不思議の6つ目です」


温泉を指していた指が右に移動する。


「あのなだらかな丘がエリオス丘陵です。だだっ広いのでお祭りごとで皆が集まったりします。夜は流星群が綺麗に見える場所で、星屑のカンペートが採取できます。セポール7不思議の7つ目ですね」


今度は市街地から少し離れた位置の建物を指差した。


「あの灰色で四角い建物がエリキシーゼのセポール工場です。これがまた美味しいアイスクリームでしてね。数え切れない程のフレーバーや――――」


長くなりそうだったのでフォルンは今までの名所をまとめ直した。


結局、シエリアの熱弁は6分強くらい続いた。


「――で、なのでありますッ!! エリキシーゼの製造工程もセポール7不思議の8つ目です!!」


それを聞いてフォルンは解説をさえぎった。


「ちょっと待ってください!!7不思議って言いましたよね?7つ超えちゃってるじゃないですか……」


シエリアは首を傾げて頬に指をつったてていたが、すぐに反応した。


「まぁまぁ。あんまり細かいことを気にしてもしょうがありません。あ、7不思議なのに7以上ある。これがセポール7不思議の9つ目ですね」


本人の冗談なのか、やたらと都市伝説が好きな土地柄なのか区別がつかない。

もっともフォルンの見立てからすると後者である。


どうもセポールの人々は何かと7不思議認定して、そこを観光資源として発展させているように思えた。

人の数ほど不思議があるのかもしれない。

学生はなんだか心惹こころひかれて、このテーマを研究しようと決めた。


一通り、街の案内を終えると、2人は表通りから静かでアングラっぽい路地裏へと帰ってきた。

そして雑貨屋少女は振り向いた。


「今まで、街の7不思議を紹介してきましたが、一番不思議で奇妙なのは私の店だと思います。さっき紹介したのと負けず劣らず、変わったエピソードがありますよ!!まぁ、仕事柄ですからね……」


フォルンにはどうしても気になったことがあった。


「この仕事、大変ですよね?嫌な思いや、つらい思い、苦しい思いもしてるはず。それなのに、公にたたえられるでもない、表彰されるでもない。なのに、なのに、なぜあなたはこんなに険しい仕事を……?」


それを聞いた雑貨屋少女はにっこりと笑った。

ピンクのミドルヘアでウェーブがかった髪の毛。

透き通るように白い肌、美しい碧眼へきがん

小さな鼻にあどけない唇。ちんちくりんな体型。

学生は彼女に女神を見た。


背格好や見た目からすると妖精や天使といったところだ。

しかしそれよりも懐が深い印象を受けたからだ。


「たしかに、辛い思いをすることもあります。それでも困っている人を助けたいんです。私はこの街……セポールの皆が大好きだから!!」


―Trouble Breaker Siellia Fin―


えっ、最後のセリフがクサくてレポートに使えない? すいません、カット、カットでお願いします……というお話でした。


ま、まだ、続きますよぉ!!


……to be continued







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