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49. ドラゴンたちの宝石自慢

「わあ……」


 思わず声が漏れてしまうほどの美丈夫ぶりだった。


 ヴォルテール様は、前髪を後ろになでつけ、ウエストを絞った軍服のような服を纏っている。

 ドラゴンを従えるために身に着けている宝石類はそのままに、夜会用にブーツのヒールをダイヤでぎらりと光らせていたり、肩を隠すていどの短いマントには、金糸でドラゴンの刺繍が施されてあったりして、豪華さが増していた。

 こうして前髪を上げて盛装すると、その見事な体躯と美しい顔が際立つ。


(これは、夜会で一番目立つでしょうね。カイルもきっと誇らしいんじゃないかしら)


 見惚れるほどの美しさを持つヴォルテール様は、どこかぽかんとしたような顔をしていた。

 大きな手のひらで口元を覆い、じっと私を見つめている。


(はっ……。わ、私の格好が期待外れで、がっかりさせてしまったかしら!? でもこれはヴォルテール様に頂いたドレスだし、タリさんにお化粧も髪もやってもらった。全く見られないというわけではないはず……!)


 タリさんの腕は一流だし、贈られたドレスは最高級の逸品だ。それを私が台無しにしてはいけない。

 丸まりかけた背筋をぴんと伸ばし、私はヴォルテール様の眼差しをしっかりと受け止めた。


「ドレスをありがとうございます。タリさんがお化粧をして下さいましたので、その、夜会でヴォルテール様のお顔に泥を塗るようなことはないかと……」

「は?」


 ヴォルテール様からは滅多に聞くことのできない「は?」に私とタリさんは顔を見合わせる。

 まさかお眼鏡にかなわなかっただろうかとひやひやしていると、


「泥など塗られるわけがないだろうむしろ逆だ。ミルカ嬢、あなたは夜会に咲く大輪の花だ。この夜会の主役だ。最高に美しく、清楚で可憐で女神めいていて、ああもうこれから夜会でなかったら今すぐ閉じ込めて誰にも見せないようにしてしまいたいのだが!」

「女神めいている!?」


 とんでもない言葉を聞いたような気がする。

 びっくりしている私の横で、タリさんがげらげら笑い出した。


「あっははははは、天使の次は女神ときましたか! いやもう、ベタ惚れなの分かりますよヴォルテール様。私も久しぶりにこんな逸材にメイクできて、めちゃくちゃテンション上がりましたもん」

「むろん化粧などしていなくてもミルカ嬢は美しいしドラゴンの間で泥だらけになりながら働き回っている姿にこそミルカ嬢の本質があると思うのだが! だがしかしだからこそのギャップというかより盛装した際の美しさが際立つというか」

「ワオ、早口ィ」


 からかうように言ったタリさんだったが、はっとしたように、


「っていうか時間! そろそろ開始しないとですよヴォルテール様」

「そ、そうだったな。カイル!」


 外に面している扉が押し開けられ、カイルが顔を出した。

 その時点で気づく。この廊下は、カイルが首を縮めなくてもいいくらいに天井が高い。

 それに目の前の扉も、カイルが楽に通れる大きさだ。

 首をしっかりと伸ばしてヴォルテール様の横に立つカイルは、大きな宝石のついた首飾りと角飾りをつけていて、主人に負けず劣らず豪華だ。

 ちなみにカイルもきちんと爪のカバーをつけている。


「素敵ね、カイル。夜会にぴったりの威厳ある素敵な格好だわ」


 カイルは唸り声で応えた。

 ヴォルテール様は私の横のイスクラを見、


「イスクラも良い首飾りをつけているじゃないか。ミルカ嬢からもらったものだろう」

「『そう』! 『かわいい』『素敵』『最高』」

「お前によく似合っている。質が高いし、デザインも変わっていて良い一品だ」


 カイルの大きな宝石と比べたら、私の贈った宝石なんて小さなものだ。それでも、それを誇らしげに見せつけるイスクラが愛おしかった。


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