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Hy タクシー  作者: 平一
7/13

第7章 バーベキュー

「ジャンジャンバリバリ」

乗務停止になり、反省をしながらその期間パチンコに費やして謳歌していたら1本の電話が鳴ったので携帯を見る。すると、小学生の頃からの付き合いがある友人、池野からの着信であった。

「もしもーし」

「……」

パチンコ屋にいるので相手が何を言ってるのか全く聞こえない。

「もしもーし、ちょっと今、外に出るから待ってて」

「………」

全く聞こえない。急いで外に出て話をすることにした。

「もしもーし、池野久しぶりだな。どうした」

「おう、久しぶり、今パチンコけ?」

「そうそう」

「今からさ、久しぶりに集まってバーベキューしようと思ってるんだけど、平岡どうする?来る?」

「行く行く。何処でするの?」

「市川三郷町にある四尾連湖でやるから……とりあえず迎えに行くわ」

「OK。家に着いたら連絡くれ。外に出るから」

「はいよー」

パチンコ屋をさっさと出て家に帰り、支度をしていると、また池野から連絡が入った。

「着いたぜー」

「今、丁度支度終わったから出るわ」

「うぃー」

そして、家を出て池野の車に向かうと助手席が空いていたのでそこに乗り込む。

「久しぶり~」

声が聞こえたので後ろを振り返ると、小学生からの付き合いの仲間が座っていた。バーテンダーの田中、サラリーマンの吉澤と運転をする同じくサラリーマンの池野、そして、無職の芳賀。

「おー。みんな久し振りだな~元気だった?」

「元気だね。平岡今日は休みだったの?」

「休みというか……乗務停止で休まされてるね」

「ダハハ、お前また何かしたの?」

「お客様を田んぼに落とした」

「ギャハハ、何それ。めっちゃ面白いじゃん」

「面白くねーよ」

皆で大きな笑い声を上げ雑談をしながら車を走らせる。

「とりあえず、買い物はイトーヨーカドーでいいか?」

「OK。酒と肉を買いまくろうぜ」

そう、男5人のバーベキュー、洒落たことは一切ない。ただひたすら酒を飲み、肉を食べる。

大量の肉と酒を買い物かごに入れ、レジに行き買い物を済ませて、四尾連湖に向かう。長い長い、クネクネした坂を車で登っていくと目の前に比較的大きくもない湖に到着した。車を降り美味しい空気を思いっきり吸う。

「スーー」

「平岡、管理人の所に一緒に行っちゃ」

「おう、じゃあ荷物よろしく」

「はいよー」

自分と吉澤で管理人のいる受付の方へ、他の人は荷物を持つことになった。受付があるログアウスに行き声を掛ける。

「すいません」

「……」

応答がない……もう一度声を掛ける。

「すいませーん」

「………」

やはり応答がない。仕方なく外に出て辺りを見渡すと、薪を持って頭にタオル巻いてるおじさんがこちらの方に歩いてきた。

「いらっしゃい」

「すいません、バーベキューをやりに来たんですけど…」

「おー。梅雨の時期は暇だから、ありがたい。他にお客さんがいないから好きな場所使っていいよ」

「分かりました。因みに鉄板と薪バサミを借りたいんですけど…」

「大丈夫だよ。使い終わったら洗って返してください」

「ありがとうございます。分かりました」

おじさんから鉄板を借りて皆と合流する。

「好きな場所使っていいって言われたから、そこにしよう」

指を指してその場所に酒と肉と一緒に買った薪を置き、木で出来た椅子に腰掛けた。

「とりあえず、乾杯しますか」

「そうだな」

池野はお茶を、その他は酒を紙コップに注ぐ。

「乾杯」

「乾杯」

「ウワー」

乾杯直後に吉澤が悲鳴を上げる。何事かと思い振り向くと、驚いた吉澤が手に持っていた紙コップの中見を田中の顔面に思いっきりぶつけていた。それをスローモーションで見えた自分は涙が出るぐらい大爆笑した。

「ダハハ、お前何やってる?」

「毛虫が……」

吉澤は極度の虫嫌いだったのだ。すると酒でびしょ濡れの田中が不機嫌そうに言っていた。

「冷たいんだが…」

「すまん」

「別にいいじゃんか。それに田中バーテンダーだろ?」

「いや、バーテンダー関係ないでしょ」

芳賀の天然のボケに田中がまた不機嫌そうにツッコミを入れ、さらに大爆笑していると池野が薪バサミで毛虫を挟み放り投げ池野が喋る。

「とりあえず、火を付けちゃ」

「……任せた」

「お前らな~」

そう、だいたい、こういう時動くのは池野と田中であった。他3人は全く動かない。呆れた顔で池野が火を着けて団扇を扇ぐ。その横で酒を飲みながら談笑していると……

「お前ら、いい加減、動けや」

「池野さんがお怒りだからそろそろ動くか」

他3人が動く時は、決まって池野さんに注意された時なのだ。池野が持っている団扇を自分が持ち、思いっきり、全力で扇ぐ。すると灰と煙が反対に座ってる芳賀に思いっきり直撃してまた大爆笑。

「ダハハ、灰まみれじゃん」

「笑い事じゃねーよ。何してくれる」

「ダハハ、別にいいじゃんか。無職なんだから」

「いやいや、それこそ無職関係ないでしょ」

「ダハハ」

そして、火が付いている薪の上に鉄板を置いて温める。……数分後……鉄板の上に手をかざして温度を確かめる。

「いけるね」

鉄板の上に豪快に肉を放り込む。

「ジュージュー」

いい音といい匂いがする。………我慢の限界が来たので箸で肉をつまむに行く。

「平岡まだ早い。焼けてないだろ」

「大丈夫だ。この位が丁度いいんだよ」

生焼け肉をタレにくぐらせ口の中に入れる。

「めっちゃうまい」

そして、凄い勢いで食べ続けるとある事に気付いた。

「米買うの忘れたな。米食いてー」

そう言いながら、こんがり焼ける前にどんどん食べるから周りが全然食べれてない。

「おい、俺が焼いてた肉食うなよ」

「ん?」

生焼け肉、酒、生焼け肉、酒、こんがり肉、酒

「御馳走様でした」

ほろ酔いになり、お腹も満たされた。そして、やっと仲間達もこんがり肉を食べ始め、安心した表情の芳賀が言ってきた。

「まじで、肉沢山買っといて良かったな。平岡に全部食べられるかと思ったわ」

「いやいや、流石にそんな食えんよ。……さて、食後の運動でもするか」

「ん?運動とは?」

今度は吉澤が不思議そうに言ってきた。

「そう、運動。目の前に湖があるから先に泳ぐわ」

「はー?」

仲間から呆れられた顔をされながら、鞄から海水パンツを取り出す。

「皆、持ってきてるでしょ?」

「持ってきてねーよ。まだ寒いだろ」

「えっ?」

「えっ。じゃねーよ」

そして、ズボンをその場で脱ぎ始めると今度は池野が困り顔で言ってきた。

「お前ここで着替えるな。まだ食べてるだろ。何でお前のヤツをみながら肉を食べないといけん。トイレで着替えろ」

「分かったよ」

そう言い、渋々狭いトイレに行き海パンに着替える事にした。そして、着替え終わって皆の所に戻る。

「じゃあ、行ってきます」

「お、おう」

湖に向かって全力ダッシュをして勢いよく飛び込んだ。

「ザブーン」

「冷てーーー」

「ギャハハ、だから言ったろ。まだ早いんだって」

仲間から笑われて、少し悔しい気持ちになり泳ぎ始めようとしたら変な奇声が聞こえた。

「キェーー」

何と田中が悪酔いし、そのままの格好で全力ダッシュをし湖に飛び込んできた。

「ザブーン」

「あっぷ、あっぷ、バシャバシャ」

そして、溺れた……それを見た池野が咄嗟に酒の入っていた大きめの発泡スチロールを田中に向かって投げ、それを必死に掴み湖から上がる。

「ダハハ、田中が溺れた…あっぷ、あっぷ」

そして、安堵して、笑いが止まらなくなり自分も溺れた。

「平岡ー」

池野が全力で発泡スチロールを自分めがけて投げて来た。

「アブッ」

顔面に思いっきり直撃した。そして、沈む……必死に脚をバタつかせ、浮き上がり、発泡スチロールに掴まる。

「痛いじゃねーか。………ダハハ」

笑いながら発泡スチロールを掴んで泳ぎ、湖から上がる。そう、湖は海と違い、浮かないので酔った状態だと非常に危険なのである。そして、仲間の所に戻り、また大爆笑。

「ダハハ、田中が溺れた。人が本気で溺れてるの初めて見た。ダハハ」

「まじで死ぬかと思った。池野ありがと……ん?」

田中が何かに気付いた。

「やべ……」

無言でポケット中に手を入れ……煙草と財布それに携帯を取り出した。勿論びしょ濡れである。

「ダハハハハ」

田中以外、全員涙を流しながら大爆笑。

「ハハ」

田中のひきつった苦笑いで更に大爆笑。

「ダハハハハ、まあいいじゃん。助かったんだし」

「そうだけどさ……」

「まだ酒は残ってるだろ。飲もうぜ」

まだ沢山残っている酒を皆で飲みながら、田中の服が乾くまで、笑い、喋りながら時間を潰していった。……… 夕方、日が沈み始めた頃にやっと服が渇き、お酒も全部飲み終わり、池野以外皆酔っ払いになっていた。楽しい時間はいつもあっという間に過ぎていく。

「あー気持ち悪い、飲みすぎた」

タクシーの運転手を始めてからアルコール検査があるので全くお酒を飲んでなかったから、久しぶり飲んで気持ち悪くなっていたのである。

「これからどうする?帰るにはちょっと早いよな、行っちゃう?」

芳賀が提案してきた、行っちゃうとは、パチンコの事。それで通じてしまうのだ。

「行くか」

そして、酔っぱらってフラフラになりながら片付けを終えて車に戻り、四尾連湖を後にする。

「あー吐きそう、池野ゆっくり走ってくれ」

そう言って助手席のドアを開け空気を吸う。

「分かった。吐くなら止まるから言えよ」

「分かった。あー気持ち悪い」

帰りの車の中は静かで、聞こえてくる音は車を走らせている音だけだった。皆、酒を飲みバカ騒ぎをして疲れきっていたのだ。……20分後、パチンコ屋に到着した。

「着いたぜー」

「うぃー」

フラフラで酒臭い匂いを漂わせてパチンコ屋に入っていく。

「ジャンジャンバリバリ」

店内に入り、各自各々好きな台、打ちたい台に向かい始め、自分も1台の スロットに座る。そして、隣には芳賀も座ったので並び打ちをすることにした。打ち始めて5分……なんとトイレに駆け込んで嘔吐する。無理もない、酔っぱらって頭の中がグルグル回り、更にリールもグルグル回りで、余計に気持ち悪くなったのだ。それでも、気合いで回し続けた結果……お金が無くなり、体調も最悪なってしまった。隣で打っていた芳賀の方に目をやると全く同じ状態になっていた。

「はーー」

二人して深い溜め息をして店を出て煙草を吸い始めると芳賀が聞いてきた。

「どうする?」

「もう無理、金も無いし、店内の音もガンガン頭に響くからもう入らんよ」

「同じく」

外で座り込み煙草を吸い時間を潰そうとしていたら皆が肩を落として出てきた。

「帰るか」

ボソッと吉澤が言い、池野の車に乗り込む。そして、最初に自分が送ってもらって家に着いた。

「ありがとう。お疲れ~」

「おう、お疲れ~」

こうして、結果的には体調が悪くなり、お金も無くなりはしたが、最高の仲間との楽しい1日を 終えたのだった。

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