第一章 始まりの日
「ピーポーピーポー」
「チュンチュン」
救急車のサイレンと雀の鳴き声で目が覚めた…
「遅刻だー」
そう、今日は憧れのタクシー運転手になるための大事な日。1番家から近い甲府タクシー会社の面接の日なのである。
「面接の日に寝坊するなんて最悪だ、間に合ってくれよ」
と思いながらダッシュ、ダッシュ、ダッシュ!
甲府盆地特有のジメジメした暑さで汗をかきながら走り続けた。
「ハァー、ハァー」
息を切らしながら会社に到着、時計を見たらぎりぎり間に合った。そして、目の前の景色に興奮する。大きな会社に、見渡す限りタクシー、タクシー、タクシー。「格好いいな」と思いながら会社の扉を開けると、そこには禿げたおっさんが1人座っていた。
「こんにちは、今日面接させていただく、平岡勉です!よろしくお願いします」
すると禿げたおっさんが笑みを浮かべながら立ち上がってこちらの方に向かってきた。そして
「おー!待ってたよ!こちらこそよろしく」
と言いながら名刺を差し出してきて…代表取締役、村石春夫、と書いてありました。…社長…
「とりあえず、付いてきて」
そう言われて、社長の後を着いて行き広い応接室に到着した。社長が奥に腰掛けて、自分は手前に腰掛けて面接が始まりました。
開口一番、社長が
「履歴書を見せて」
「はい、よろしくお願いします」
三つ折りの履歴書を手渡して、それを黙って見始めた。嫌な沈黙、空気…
「二種免許は持ってるのかな?」
「いや、持ってないです、会社で取らせてくれると調べたので、取らせてほしいです」
「じゃあ免許証を見せて」
そう言われ、財布から免許証を取り出し社長に渡して、また嫌な沈黙、空気…
「不採用」
「なんでやねん」
とツッコミたくなるようないきなりの不採用発言。でも、冷静になって
「なぜですか?」
と聞いてみたら落とし穴があったのだ!それは
「普通免許取って2年経たないと二種免許は取れないんだ。だから平岡さんの場合は後、半年経たないと二種免許取れないので半年後にまた来て下さい」
「それは知らなかったです、分かりました。また半年後に来ます。」
そう言って会社を後に、21歳平岡勉、無事に半年間無職になりました。
「とりあえず…パチンコ行くか」
皆さん初めまして。平一と書いて(ひら、はじめ)と言います。これから毎週木曜日に投稿予定です。
楽しんでいただけると幸いです。よろしくお願いします。