2BET 賭博島
「…なさい」
どこからか声が聞こえてくる。何かとてつもない事に巻き込まれた気がするが、今はとてつもなく眠たい。
「…から…なさい」
まだ声は鳴り止まない。少し静かにして欲しい。
「だーかーらー!早く起きなさぁぁぁい!!!」
「どぅわぁぁぁ!!!」
翔はのけ反る様に飛び起きる。世界の門を潜った後どれほど意識を失っていたのか。当たりを確認するも周りには草木しか無く、ここが何処なのか理解すらできていなかった。
少しした後やっとソフィアの存在を認知する。
「やっと気づいたわね。何回呼んだことか」
やれやれと手を上げ首を振るソフィア。そもそも誰のせいでこうなっているのかと文句も言いたい位だったが、翔はそれをぐっと堪えた。
「それじゃあ行くわよ」
「行くってどこに」
「ここは賭博島と呼ばれてるの。ここであなたの腕試しよ。それに路銀も必要でしょう?」
そう言って先に進むソフィア。それについて行く為に焦って起き上がった翔だったが、立ち上がりソフィアの言っていた事を理解する。
「なーるほどね…」
翔の眼前に広がるのは、壮大に立ち並ぶ2つの塔。そこにはデカデカと『カジノ』の文字があった。
「まぁ、やったりますか」
翔は走ってソフィアの後を追いかけた。
「で、結局能力の条件だとかあーだこーだとか教えてもらってないんだが?」
「あんたって外から見てる感じには天才!って感じだったのに実際話すとだいぶバカね」
「いや、俺の質問は?」
急な悪口に困惑する翔だったが、一方のソフィアも落胆を見せていた。両者が傷つくという何とも奇っ怪な状況に陥りつつもソフィアは質問に答える。
「まず条件その1、嘘を確実に告知しなければならない。つまり、自分が嘘をついたということを相手に教えなければいけない」
「なるほどね。その嘘をついたという嘘は大丈夫なのか?」
「そうね、それは構わないわ。そして条件その2、能力は一つのゲームに対して一回限り。この一回というのは対戦相手が変わったりしたらリセット。同じ相手の時は相手の認識によるわ」
「それ、結構な博打だなー」
「何言ってんのよ。あんた今からもっと大きな博打を打つんでしょうが」確かに。その言葉に翔は納得した。
「まぁその2つが条件ね。他に何か質問は?」
「後シンプルな質問。何で俺なの?その霊王戦ってのは博打で決まるの?」
「まず霊王戦は何で決まるのかって話からだけど…分からないが正しいわ。前はくじ引き。その前は殺し合い。神の気まぐれよ。それで何であんたかって話だけどね、理由は単純。あなたのその生命力にかけたの」
「生命力って言ってもなぁ…」自分は一度死んでいるんだがなぁ。翔はそんな言葉が後に続きそうな顔をする。
「さ、そんな話をしてたらついたわよ」
ソフィアと翔の眼前に天まで届きそうな程の建物が姿を現す。
翔が歩いてきた限りは中世の街並みだった様に思えたが、この2つの建物だけはそもそもの格が違う。一体どのような建築によりこれを立てたのか。
「行くのは良いんだが、種銭は??」
「あんたラッキーね。そこにあるわよ」
「そこ…?」
翔はソフィアの指差した方へ目をやる。そこにはキラリと小さく光るコインが落ちていた。
翔はコインを手に取ると裏表を確認し、ソフィアを見る。
「実はこれがこの世界じゃ大金だったり…?」
「しないわね。それじゃあパンも買えやしないわ」
「だよなぁ…」