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1BET 世界の門

「やっほー、元気にしてる??」


どこまでも続く純白な世界に自分と一人。いや、一匹と呼ぶべきだろうか。目の前の羽の生えた何とも珍妙な見た目の生物をなんと呼ぶべきか。そんな事を翔は考えていた。

翔の目の前の生物は緑の布、多分服のつもりなのだろうが少し露出が多すぎる物に見を包み、人間にしては少し小さく、翔の頭部程のサイズしかない。ここを死語の世界とし、翔を迎えに来た天使にしては背中に生える羽がどこか虫に近い。


「ちょっと、私が話しかけてるのに無視は無いでしょう。無視は」


「あ、あぁごめん。なんか天使にしては若干キモいなって…」


「カッチーン!キモいは酷いでしょ!そもそも私天使じゃないし!私の名前はソフィアよ!次天使とかキモいとか言ったら冗談じゃなく殺すから!」


今時カッチーンと口で言う者が存在していた事に驚く翔だったが、それよりも今の状況に混乱して、殺すという言葉すら入ってこない程頭が回っていない。


「まてまて、天使じゃないならお前は誰だ。そしてここは何処だ」


「ハァ」と小さくため息をついたソフィアは続けて「これじゃあ天才の底が知れるわね」と呟いた。


「まってくれ、天才ってなんのことだ?俺は至って凡人…なんの説明も無くこんなところに連れてこられたら困惑もするよ」


頭に手を当て空を仰ぐ翔。上を向きどこまでも続くこの白い世界に尚頭痛は激しさを増した。


「分かったわ。仕方ないから説明してあげる」ソフィは仕方ないとばかりに口を開く。そもそも口汚く罵る前に説明してくれと思う翔だったが、そんな事を言えば更にめんどくさい事になりそうだったので言葉を飲み込んだ。


「いい?あなたは死んだ。それは間違いないわね」


「あぁ、間違いないない。ここは天国じゃないのか」


「なにアンタ、天国に行けるつもりでいたの?」


確かに。それもそうだと思う翔。

また話が逸れてしまったと翔は思ったが、「まぁそれはいいわ」とソフィアは話を続けた。


「まずここは何処かって質問から。ここはあなたの居た世界と私達の世界を繋ぐ『世界の門』がある場所」


「世界の門?」


「そう、世界の門。その門は世界と世界を繫ぐ門」


「門なんてどこにもないけど?」


「ウルサイわね!説明するから最後まで黙って聞いてなさい!」


翔は手をあげお手上げのポーズをする。それはソフィアの言う事に従うという事なのだろうか。


「で、私達はその門の管理を神より任された精霊」


「私『達』…?」


「そ、私の担当はあなたの世界と私達の世界を繋ぐ門の担当。他の世界と繋がる門は他の精霊達が管理してるわ。後は、神木の管理だったり、神殿の管理だったり…まぁ、私達精霊は神の小間使いみたいなものよ」


「まぁ、大体話は分かったよ。で、何で俺はここに?」


「そう、そこが重要なのよ!あなたには私達の世界でやってもらいたいことがあるの。それは100年に一度、神の暇つぶしによる催し、霊王を決める戦い」


ソフィアは少し黙った後話し始めた。

100年に一度、精霊達の間で行われる、霊王を決める戦い。この戦いで勝利すれば世界を百年間自由にできるという事。その戦いに勝つ為には驚異的な程の力を持つ人間の代理人を立てて行われる事。そして、ソフィアは霊王の座を狙っているという事。

あまりに突拍子もない話だが、翔はその話を聞いた後少し考える素振りを見せ、まっすぐとソフィアを見つめて口を開く。


「で、それがどうした」


「それがどうしたって何よ」


「それで俺へのメリットとデメリットは何なんだ。ただ戦ってくださいだけじゃあおかしな話だろ?」


「メリットとかデメリットとか何言ってんのよ!あなたは違う世界ではあるけどもう一度この世に生き返れる!それだけでメリットでしょ!?」


「そんな物はメリットとは言わないよ。俺は自分の最後、確かに死ぬのは怖かったが納得して死ねた。別に生き返りたいと思わない。それに、聞いた限り俺はお前の為に働かなければいけない。何で俺がそんな事を?」


ソフィアは翔の発言を聞いてプルプルと顔を真っ赤にし震えている。今にも怒りが爆発してしまいそうだったが、なんとか深呼吸をして怒りを抑える。

「メリットって何よ…」とか「生き返れるだけでいいでしょ」とか、果には「私達の為に働けるなんて光栄じゃない」等とソフィアは言った。


「ま、話は終わりだ。地獄か天国か知らないけど俺の行くはずだった場所に連れてってくれ」


「…それは…無理よ…」


「…は??」


「だからそれは無理なのよ…」


「な、なんでだよ!?」


「もう手続きは終わってるの…一回この場所に来るともうどうしようも無いというか…」


「なんだそれ!?お役所仕事かよ!!今までこういった場面はどうしてたんだよ」


「こんな事一回も無かったわよ!しょうがないじゃない!私は悪くないわ!あんたが悪いんだからね!!」


翔は頭を抱えた。ここに来て言い逃れかよ。こうなったら俺はやるしかないじゃないか。翔はそんな思いと共に必死に頭をフル回転させるも、答えは出ない。


「そもそも何が納得した死よ!そんなに命を賭けたいなら私の元で賭けたらいいじゃない!」


「俺は命を賭けたから納得したんじゃない…俺の最期に相応しい賭けだからだと」


「はんっ、たかだかそんなんで納得するなんてバカね!こっちの世界にはもっと熱くなれる者がたくさんいるわよ!!」


「なんだって…?」


「いい?世界を決める戦いよ?ただの人間達が選ばれるわけ無いでしょ。それぞれの分野に特化した、いわば天才。そんな人間達とやり合うのよ。それにその人間達はさらなる力を手にする」


「なんだそれは」


「私達精霊と交わされる『血の契約』これにより私達が持つ特別な力をあなた達人間も手にする事ができるわ」


ソフィアの話を聞き翔の目つきが変わる。先程まで死にたいとすら言っていた男の目には見えない。その目には闘志の様なものが映っているようにすら見える。


「それは俺にも?」


「勿論よ」


「どんな能力だ」


「私の力は『真実の嘘』よ。嘘を真実に変えてしまう能力。色々条件はあるけどね」


「と、とんでもない能力じゃないか…!!それを他の奴らも…よし、分かった。やってやる。やってやるよ」


「きゅ、急に意見が180度変わるわね…まぁ私としては嬉しいけど」


「フフフ…で、どうすればいい」


「私と血の契約を結ぶわ。そうすると世界の門が姿を表す。そこを潜れば新たな世界のお出ましよ」


「よし、頼む」


「本当に急に素直ね…怖いくらい。後ね、ちなみに契約としてはあなたに能力を渡す代わりにあなたの命の采配は私がするわ」


「フン、勝手にしてくれ」


「あなた本当に自分の命に興味が無いのね…まぁいいわ!それじゃあ契約よ!」


ソフィアは両手を前に突き出し、祈るように指を重ねた。すると、光輝く円柱がソフィアと翔を包み込む。


『7つの星に座する神々よ。世界の門番ソフィアの名の下、八丈島翔に力を授ける事を願わん』


今まで散々バカにしてきた翔だったが、ソフィアのその姿を美しく思ってしまう。ただの気のせいだろうと自分の目を疑うが、美しき精霊の姿は確かにそこにあった。

翔はソフィアに見惚れていると目の前に見たことない程に大きな声扉が現れる。ソフィアはこちらに潜れと目で合図だけ送ってきた。

扉に手をかける翔。小さく、しかし眩ゆい光が翔を襲った。


「さぁ、始まるわよ。幸多からんことを」


ソフィアのその言葉と共に、翔は意識を失った。





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