表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
傾国の白馬ファルキリー  作者: 水色十色
《☆PART3 白馬ファルキリーの騒動》白馬ファルキリーを巡る争い
96/438

《☆~ バゲット三世の訪問(三) ~》

 たとい一国の王であっても、ローラシア皇国の中央門では、本人性オーセンティ証明ケイションが必要とされている。護衛官である黄土オークル系統の魔女族が、訪れた者の所持している階級章や通行証など、身分証の真贋を見定めることで行う。

 それには二つの認証魔法サーティフェイションを使う。まず真偽認証ヴェリファイで、身分証そのものが国家によって発行された本物であることを調べる。続いて、身分証に封じられている本人性の痕跡が、所持している通行者の生体から感じ取れるものに一致するかを確認するために、生体認証バイオメトリクを行う。

 偽造あるいは盗用が判明した場合、誰であろうと、重刑に処される。

 しかしながら、バゲット三世の本人性を示すためのパンゲア紋章は、パンゲア帝国が用意したものなので、それが中央門にきた男の本人性と合致するように造られているなら、成り済ましが簡単にできてしまう。現在のところ、この点が本人性証明の盲点なのである。

 兎も角、バゲット三世を名乗る男は、バゲット三世本人であることが()()()に証明され、彼と、彼につき従う数名の政策官、医療官、後宮女官たちが中央門を通過した。

 門の内側には、昨日のうちに到着している二十人のパンゲア衛兵が待っていた。これから中央通りへ進み、真っすぐ宮廷へ向かうのである。

 この刻限は通行を規制する御布令之書ノウティフィケイションが事前に出されており、この通りを歩く者はいない。

 それにも拘わらず、道路の両端では、ローラシア皇国の護衛官たちが、いくらかの隔たりごとに二人ずつ立っている。訪問客の一行に、なんらかの危害が及ぶことのないよう、目を光らせているのだった。


 宮廷門の前に、一等政策官のチャプスーイ‐スィルヴァストウンと一等管理官のジェラート‐スプーンフィードが並んで待ち構えていた。

 歩いてきた一行の先頭に、剃髪姿シェイヴィングの男性がいる。訪問団を率いる責任者なのだと考えられる。その者に対して、チャプスーイが一礼してから口を開いた。


「この度は、ローラシア皇国へようこそ。私は、政策担当の長官キャプテンをしております、スィルヴァストウンです。そして、こちらが管理の長官、スプーンフィードです。どうぞよろしく」

「はい。私も、あなたと同じ立場、サトニラと申す政策官の長です。明日までお世話になりますので、こちらこそよろしくお頼みします」

「ご丁寧にありがとうございます。旅でお疲れのことでありましょうし、会談は、しばしお休みになられてからがよろしいかと存じます。今から、貴賓室へとご案内致しましょう」

「いいえ。途中に度々休憩を挟んできましたから、その必要はございません」


 毅然と答えたサトニラ氏に対し、チャプスーイは笑顔を絶やすことなく話す。


「それでは、すぐに会談の場へと向かわれますか?」

「いいえ。我が帝国王は、お馬をご覧になりたいとのことです」

「お馬?」

「はい。聞くところによりますと、こちらの宮廷では、お馬の暮らす立派な厩舎が用意されているそうで、しかもそこには、グレート‐ローラシア大陸でも一番の駿馬だと名高い、白い牝馬がいるのでしょう?」


 サトニラ氏から、白い牝馬という言葉を聞いたチャプスーイとジェラートは、それがファルキリーのことだと、すぐに分かった。

 それでも、このような場合は、そう簡単に肯定したりしないものである。

 チャプスーイが、言葉を濁すような形で返答する。


「噂とは、大きく広がって伝わるものなのでしょうね。お馬の暮らす厩舎は確かにございますし、駿馬と呼ぶにふさわしい馬もおりますけれど、さすがに大陸で一番などということは、あまりに大袈裟です。あははは」

「そうですか。どちらにしましても、我が帝国王はお馬をご覧になりたいそうですので、どうかお願いします」

「はい、分かりました。ご案内しましょう」


 訪問団はチャプスーイとジェラートに導かれ、厩舎の方へ向かう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ