《★~ 明かされる真相(一) ~》
オイルレーズンが予定を変更することにした理由の一つは、やはり栄養官という新たな官職の立ち上げが急がれている事情にある。今のキャロリーヌにとっては、調理実習に臨むより、早く一人前の探索者になることを優先する方がよいという方針である。
こうして業火の日は丸一日を使い、ローラシア皇国内の南東に位置するアサマー火山へ向かって探索任務を行うのだった。討伐対象となるのは、暗黄緑飛竜という、背中に二つの翼を持つ凶竜である。
箒柄を使った飛行を昨日覚えたばかりのキャロリーヌであったけれど、この任務では揺動する役目を担った。
なにしろ相手も、空中を自由に飛び回ることができる凶竜なので、少しの失敗が命取りとなる。それでもキャロリーヌは勇敢に働いた。
揺動される側の飛竜は怒り狂い、炎を吐き出して猛攻撃してくる。
この危機からキャロリーヌを守るのは、業火耐性の施された箒柄だった。グレート‐ローラシア大陸一の道具職魔女と称されるホイップサブレーが手掛けた仕事のお陰である。
敵が低いところを滑空する瞬間を狙って、マトンが、自慢の愛剣、イナズマストロガーノで、飛竜の翼を一つ切断した。
均衡を崩した相手の頭部に、ショコラビスケが拳で強烈な一撃を食らわせ、弱ったところでオイルレーズンが、「迅速殺」と唱え、敵の息の根は止まった。四人がうまく連携して、大成功を収めることができた。
暗黄緑飛竜の血を加工して竜族の強壮剤を大量に作れるのだと、キャロリーヌはオイルレーズンから教わった。野外でも、このように調理実習は可能である。
この翌日、純水の日から、オイルレーズンたちの集団は、エルフルト共和国へ旅立った。
アイスミント山岳の麓にある宿を拠点として、数日に渡り活動するのだった。獣や小竜の討伐任務を行ったり、竜頭青豆を採集したりするのである。
倒した獲物は解体し、自分たちの食糧にする以外はすべて売却した。
また、竜頭青豆は粉末にする。これは竜族が必要とする栄養素を多く含む食材なので、すべて持ち帰って宮廷に納めなければならない。竜族をローラシア皇国内に囲い込み、屈強な兵士として育成するために利用されるのである。
・ ・ ・
キャロリーヌの日々は忙しく過ぎ去り、栄養官という新たな官職の立ち上げが、いよいよ迫ってきた。
宮廷官舎で夕餉の後、いつものように香草茶を飲む二人である。
「キャロルや。明日は三等栄養官となる日じゃよ」
「はい」
「三ヶ月ともう少し前のことじゃった。キャロルには伝えていない真実があると、あたしが話したのを覚えておるか」
「ええ、覚えておりますわ」
「それを話す時がきたわい」
「是非お聞かせ下さい」
「ふむ」
オイルレーズンの手元にある空の茶碗に、キャロリーヌが三杯目を注いだ。
「キャロルは人族ではなく、魔女族なのじゃよ」
「そうですか」
「驚かぬのか?」
「あたくし、感じておりましたの。ファルキリーにうまく乗れたことも、箒柄に腰掛けて飛べるようになったことも、あたくしが魔女族だから、それらが可能なのではないかと思っておりました。それともう一つ、オイルレーズン女史は、あたくしの、本当のお婆さんではないかと」
「ふぁっははは、その通り! お前は、あたしの娘、ドライドレーズンがアタゴーの山中で産んだラムシュレーズン、あたしの孫じゃよ。そして十七年近くの昔、悪魔女の魔法によって白い仔馬にされた赤子の方が、本物のキャロリーヌじゃった」
自分の娘がお馬の姿になったことを信じられず、キャロリーヌの母親、マーガリーナは、残った方のラムシュレーズンを、娘のキャロリーヌなのだと思い込んでしまった。
夫のグリルはそれを知りながらも、精神的に不安定な状況にあった妻を気遣って、真相を明かさなかったのだという。




