表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
傾国の白馬ファルキリー  作者: 水色十色
《★PART2 栄養官になるための試練》栄養官としての使命と困難
78/438

《☆~ ドリンク軍務省のパイク(三) ~》

 こちらは、ヒエイー山の南西側に切り立つ崖の中腹辺り。

 並外れた運動神経を持つショコラビスケが、急斜面に突き出して生えている樹木の枝から枝、あるいは、むき出しになった岩の足場から、別の岩場や近いところにある木の枝へと順に移動して、着々と崖下に向かっている。

 巨体の重みで、ほとんどの枝が少ししなった後に折れてしまう。岩場も同様で、着地すると同時に砕け落ちる。それでもショコラビスケは、僅かに早く跳躍できるので、墜落を辛うじて免れているのだった。

 このような激しい動きを続ける竜族の肩に、高齢の魔女族であるオイルレーズンが乗っているけれど、彼女は、まるで平地を馬で駆けるかのように平然とした様子を崩さない。

 ショコラビスケに少し遅れて後を追うマトンも、樹木に絡まっている太いツル登山用命綱ライフラインのように操って、巧みに降下している。彼は、握った蔓の手元から少し上をわざと剣で切断するのだった。そうすれば、ある程度の距離を素早く下降できるし、宙ぶらりんになる身体を揺らし、その反動を利用して、別の目ぼしい蔓へと跳び移れる。そして握った蔓をまた切断する。このように、段階的な落下を繰り返し、やはり崖下にある平地を目指して順調に進んでいる。

 マトンの芸当は、比較的に体重の軽い人族だからできるのである。巨体のショコラビスケが同じことをすれば、少々太い蔓でも、体重が掛かると瞬時に千切れてしまい、真っ逆さまとなって転落することだろう。


 ・   ・  ・


 第二大隊長官(キャプテン)が貸してくれたロウプは、なかなかに細いのだけれど、樹林フォレスト系統の繊維強化魔法が施されたことで、極めて丈夫な仕上がりになっている。おそらくは、竜族の大人を吊るしても千切れないほどの強度があるだろう。

 バルサミコは、まず、気絶している少女の手から箒柄ブルームを離した。

 そしてケチャプにも手伝って貰い、少女の身体を、その柄に綱で巻きつけ、少しだけあまらせておいた部分の先端を、柄の下端に固く結ぶ。こうしてから、箒柄ごと少女を垂直に立ててぶら下げ、あとは束になっている綱の残りを少しずつ送り出すことで、少女をゆっくりと安全に下降させることができる。

 人族より知能の低い小妖魔だけれど、ドリンク軍務省に所属しているなら、これくらいのことは誰もが訓練で経験しており、よく知った方法なのである。


 やがて、少女の身体は、第二大隊長官から厳命されている通り、掠り傷の一つすらも負わせることなく、柔らかい草の生えた地面へと降ろされる。

 でも、それで小妖魔たちの任務が終わる訳ではない。バルサミコは、慣れた手つきで、少女と箒柄に巻きつけてある綱を解く。またケチャプは、反対側の端から綱を巻いて束に戻す作業に専念した。

 少しが経ち、少女と箒柄は、綱での束縛から解放されて自由となる。

 綱の方は、受け取った時よりも断然に美しい形状の束になった。それをケチャプが両手に持って、恭しくパイクに差し出す。


「お返しさせて頂きありやんす」

「うん。ケチャプ、実に冴えた仕事だ」

「お褒め頂けて、狂喜にござーい!」

「バルサミコもご苦労。諸君の働きはよいぞ」

「お褒め下さり、恐悦でありやんす!」


 こうして、バルサミコとケチャプは、なんらの落ち度もなく、第二大隊長官からの特別任務を完遂させた。


「諸君のことは、後でオレの方からミキサーに伝えるとしよう。二人とも、一つずつの等級グレイド昇格アプだ。さあ、演習の現場フィールドへ戻れ」

「あーい!」

「ござーい!」


 若い小妖魔の二人は、パイクに向かって敬礼した後、回れ右をして、スピアの訓練が行われている歩兵部隊のところへ、溌剌として駆けてゆく。

 彼らにとって等級の上がることは、間違いなく嬉しいのである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ