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傾国の白馬ファルキリー  作者: 水色十色
《★PART2 栄養官になるための試練》探索者としての険しい道
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《★~ 未熟な探索者(五) ~》

 オイルレーズンは、竹馬の(チャイルドフド)友人(‐フレンド)と呼ぶにふさわしいホイップサブレーとの世間話もほどほどにして、そそくさと工房から出る。

 キャロリーヌも箒柄を握り、老魔女の後に続く。


「さあて、出立するかのう」

「はい」


 向かう先は中央門である。そこを出るまでは飛行での移動が禁じられており、当然のこと歩かなければならない。

 今日のキャロリーヌは、ファルキリーに乗らないけれど、乗馬のできる衣装を身につけている。とても動きやすいので、探索に出掛ける時にも、この姿となることを決めていた。


 中央門に到着したキャロリーヌは、外衣マント肩章かたじるしを護衛官に見せ、本人性を確認して貰う。

 続いてオイルレーズンが前へ出る。着ている婦人服ロウブは、やはり管理官を意味する朱色地バーミリオンで、肩章に、ローラシア皇国の紋章が銀色に輝いている。この春から二十種類となった高級官キャリア肩章エポレトの中でも、一番に優雅だと思える意匠ディザインなのである。

 検問を通過した二人は、中央門から外へ出て歩き始める。

 しばらくして、オイルレーズンは広い場所で立ち止まった。持っている箒柄を地面と水平になるよう握り直し、短く一言、「静止スティル」と詠唱する。

 老魔女が手を離した後もまだ、箒柄はピタリと空中で止まっている。


「さあキャロルも、同じようにやってみよ」

「はい。静止スティル!」


 すると、キャロリーヌの箒柄も、空中に浮いたままの状態となった。


「ふむ。なかなかに筋がよいわい。しかし、ここからが本番となる。あたしのやり方を真似て、同じようにするのじゃよ」

「はい」


 オイルレーズンは目の前に浮いている箒柄に腰を下ろした。

 それを見て、キャロリーヌも腰掛けようとする。


「きゃ!」


 箒柄の上に乗ったはずの少女が前後に大きく揺れてしまい、少しして、とうとう後方へ向かって身体が回転を始める。

 この様子を黙って眺めていたオイルレーズンだけれど、キャロリーヌの後頭部が地面に激突する直前、いわゆる「間一髪」というところで叫ぶ。


反回転リヴァーサル!」


 すると、少女の身体に今あったばかりのことと、そっくり逆向きになる奇妙な動きが起こって、その結果、箒柄に腰掛けた瞬間の姿勢に戻り、ピタリと静止した。

 これには、キャロリーヌも驚くしかない。


「あらまあ!」

「危ないところじゃった。頭を地に打ちつけたなら、今頃は失神しておったことじゃろう。集中を欠いてはならぬぞ」

「はい、気をつけます」


 キャロリーヌは練習を続ける。

 失敗フェイリャが続き、その度にオイルレーズンが救って、どうにか怪我をすることもなく、箒柄に腰掛けることができた。


「ふむ。その身体の均衡バランスを、しかと覚えねばなるまい」

「分かりましたわ」


 キャロリーヌは箒柄から降りて、さらに数回の練習を重ねた。

 そしていよいよ、ヒエイーの山へ向かって飛んでゆくこととなる。

 まずはオイルレーズンが「飛行フライト」と詠唱し、老魔女を乗せた箒柄が空中を東へ移動し始める。それを見習ったキャロリーヌも同じ魔法スペルを唱えて、飛び立つことができた。

 少しして、オイルレーズンが飛行速度を落とす。箒柄の先端が左手側となるように乗っており、それと逆の向きで腰を掛けているキャロリーヌとは、お互いに正面で向き合っている。

 空中を飛んでいながらも、老魔女は、少女に細やかな助言を怠らない。


「進行方向から吹いてくる風に逆らってはならぬ。殺そうとせず、柔らかく受け流すこと。そして、後方からの風を巧みに生かし、推進力にするのじゃ。最初のうちは困難じゃけれど、これを会得できれば疲れることなく、長い距離を飛行し続けられるでのう」

「はい、やってみますわ」


 初めて体験する魔法の箒柄飛行(ブルーム‐フライト)である。

 子供の頃には誰もが憧れるであろう、大空を自由に飛ぶこと。キャロリーヌは、それのできる鳥になったような昂揚感を覚えながら、風を切って飛行し続けるのだった。

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