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傾国の白馬ファルキリー  作者: 水色十色
《★PART2 栄養官になるための試練》探索者としての険しい道
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《☆~ 新たな婚約話の悩み(四) ~》

 中央門では検問が行われていて、魔女族の護衛官が、本人性オーセンティ証明ケイションと呼ばれる魔法スペルを使って、通る者のすべてに対し、身分証や通行証の真贋を見定めている。

 偽装工作をしている違法者が発見された場合には、それがどこの国の誰であろうとも直ちに牢獄へと送られ、重い刑罰が科される。特にローラシア皇国の検問は厳しくて容赦のないことが、大陸の全土に知れ渡っている。


 キャロリーヌは、外衣マント肩章かたじるしを護衛官に見せる。管理官を意味する朱色地バーミリオンに、萌黄色イエローグリーンの線が引かれ、灰色の月を描いてある。これは最近になって新設された高級キャリアの四等管理官を示す証だけれど、魔法によって正しく認証された。

 続いて、マトンとショコラビスケが探索者イクスプローラの登録をする際に発行して貰った通行証を提示し、無事に全員の本人性が確認される。


「キャロル、ここで少しだけ待っていてよ。宿に預けてある剣を取りに戻って、僕の馬も連れてくるから」

「分かりました」

「おっ、なんだ兄ちゃんも馬に乗るのかよお」

「そうだ。ここからアタゴー山までの道のりは長いからね。あんたは走ってついてくる気なのか?」

「おうよ!」


 竜族は、亜人類の中で一番に身体能力が秀でており、人族の十倍以上の脚力と持久力を持っている。そのお陰で、馬に匹敵する走りができるのだった。


 中央門の外も、しばらくは街並みが続いているため、高速で馬を駆けさせることはできない。それでキャロリーヌとマトンは速足トラトで進み、ショコラビスケもそれに合わせている。

 歩みが少々速くなっているけれど、三人の会話は続く。


「だがよお、お家の存続を優先して、皇帝との婚約話を断るなんざあ、その心意気には、この俺も頭が下がる思いだぜ。人族の高貴な身分の人ってえのは、皆がそうなのか?」

「えっと、それはどうなのかを存じませんけれど、あたくしにとって生きることの意味は、メルフィル公爵家の再興にあればこそでしてよ。そのために、一等管理官さまからの、身にあまるようなご提案をお受けできませんでしたの」


 そのことによって少なからず宮廷内に波風を立ててしまったけれど、キャロリーヌは一切の後悔をしていない。


「そうかい、そうかい! がっほほほ~」

「うん、僕もキャロルの選択は立派だったと思う。それと、このことを妬みに思う輩が、もしかすると宮廷内にはいるのかもしれないけれど、そんなことは気にしない方がいいよ。なにか困ったことがあれば、僕に言ってよ。可能な限り手助けをするつもりだ」

「まあ、マトンさん!」


 キャロリーヌは感極まって、思わず目を潤ませてしまった。

 それから、話題の矛先はローラシア皇帝陛下へと移った。


「あのなあ、これも噂だけどよお」

「また噂話かい?」

「おうよ。けれど、あまりでかい声では言えねえことでなあ、先代のローラシア皇帝が暗殺されたって話だ。知っていますかい?」

「おいおいショコラ、滅多なことを口にするものではないよ!」

「ああ、その点は俺も分かっているぜ。だから小声で話したんだ」


 国内、国外の両方面に対して、二ヶ月前に起こった皇帝陛下暗殺事変の一件は完全に伏せられている。この事実を知っている者は、宮廷内の数少ない高級官と、宮廷から退いた今でも国政に関する相談役の立場にある重鎮、シャルバート‐スプーンフィード伯爵くらいである。

 表向きの発表として、先代の皇帝陛下は高齢を理由に生前退位し、皇太子のデリシャス殿下に後を託した形になっている。しかしながら、新皇帝陛下即位の儀が執り行われた際、先代皇帝陛下のお姿がなかったために、俗世間の噂好きな輩たちが、勝手な憶測だけで作り話を口にするのだった。

 こういう経緯により、ショコラビスケの故郷があるドリンク民国では、「既にローラシア皇帝陛下はこの世の人ではない」などと、真実まことしやかに語られている現状なのである。

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