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傾国の白馬ファルキリー  作者: 水色十色
《★PART2 栄養官になるための試練》探索者としての険しい道
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《☆~ 新たな婚約話の悩み(三) ~》

 今日のキャロリーヌとマトンは、二人が属している探索者イクスプローラ集団(‐パーティ)首領キャプテン、オイルレーズンと、アタゴー山の麓で合流し、それから山中に踏み込んで獣討伐を行う予定にしている。

 皇国中央の一等地周辺では、馬を駆けさせることが固く禁じられているため、キャロリーヌは、今のところ常歩ウォークでファルキリーを進ませており、その少しばかり後方に人族と竜族が横に並び、ついてきている。


「嬢ちゃんが、噂の広まっているメルフィル公爵の娘さんってか?」

「えっ?」

「おいおいショコラ! 高貴なお方に、その口の利き方はないだろう」


 背後からショコラビスケが唐突に話し掛けてきたので、キャロリーヌは驚嘆せざるを得なかった。

 それでマトンが厳しい口調で釘を刺したけれども、鈍感な竜族は反省する様子をまったく見せようとしない。


「堅いことは抜きだぜ。仲よくやろうじゃねえか。がほほ!」

「あんたはまだ僕らの面子フェイスではないことを、忘れないでくれ」

「そりゃまあ、そうだけどよお……」

「あの、ショコラビスケさん」

「おっ、なんですかい?」


 キャロリーヌから呼び掛けられたことで、ショコラビスケは駆けて前へ進み、白いお馬と横並びになった。

 成人男子の体格を比較する場合、背の高さも胴の太さも、竜族は人族の一倍半ほどの寸法サイズを持っている。だからショコラビスケの鼻先は、ファルキリーに騎乗しているキャロリーヌの目線と同じくらいの高さにある。


「あなたの仰った噂は、一体どのようなことですの?」

「僕も聞いたことがあるけど、どれも勝手な憶測で事実に反するようなものが多いと思うよ」

「俺が国で聞いたのは、ローラシア皇国の新しい皇帝が、十二歳の新参四等官少女に一目惚れしちまい、求婚したんだが、その場で断られたっていう話だったぜ。それで宮廷内では、その少女の毅然たる態度に高い評価が集まっているとか。実際のところ、どうなんだい?」

「あらまあ、ずいぶんと違っていましてよ。あたくしが新参四等官なのは確かですけれど、年齢は十六ですわ。そもそも、ローラシア皇国で宮廷官になれるのは、十六歳以上に限られていますのよ」

「おう、そうなのか!」

「ははは、思った通りだ。兎も角、噂なんてのは、尾鰭がつきやすいから、まともに信じてはいけないよ」


 ショコラビスケがドリンク民国の街で聞いてきたという噂話には、間違いが多く含まれている。

 ローラシア皇帝陛下がキャロリーヌに惚れて求婚したという箇所にしても、まったく根も葉もない、いわゆる「事実無根」なのだった。

 宮廷内で高い評価が集まっているという内容も真実と異なっており、逆に新参のキャロリーヌに対する風当たりが強い。四等官は、以前なら宮廷内へ立ち入ることが許されていなかったけれど、当代の皇帝陛下による規制緩和策の一つとして、身元の正しい貴族であれば、四等以上に対し、それが認められるようになった。しかしながら、これを不服に思っている数人の宮廷官から見下され、冷たい言葉を浴びせられることもある。

 それでもキャロリーヌは、優しくもあり厳しくもあった母親、マーガリーナからの「貴族たる者は、どのような時であっても愚痴を溢してはなりません」という教えを守って、常に耐えているのだった。

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