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傾国の白馬ファルキリー  作者: 水色十色
《★PART10 前人未踏の地下海域》不動のラムシュレーズン女王
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《☆~ 信じがたい再会(二) ~》

 ブイヨン公爵が、さも感慨深げな口調で話す。


「お会いしないうちに、キャロリーヌ嬢は色々な体験をなさった。一つ一つヴィニガ子爵から聞き及んでいますよ。オイルレーズン女史がお亡くなりになって、たいそう悲しかったことでしょう」

「はい」

「それからパンゲア帝国女王に即位し、名をラムシュレーズンに改められたのですね。さらに、隠伏呪詛のせいで手足が動かなくなったにも拘わらず、呪詛を与えた魔魚族と結婚なさるとは、つくづく風変わりなお方とお見受けします」

「本当に仰る通りですわ。うふふふ」


 大人しく控えているショコラビスケは、「ブイヨン公爵さんこそ、なかなかに風変わりですぜ」と言いたくなるけれど、我慢して話題を変えようとする。


首領キャプテン、そこに立っている機械人形オートマタに移った魂は、首領との間に、どういった繋がりがあるのですかい?」

「魂を宿していたトースターは、あたくしの弟ですわ。悪魔女の企みによって、今から二年ばかり前に、彼は自ら毒を飲み、泉に入水して他界しましたの……」

「がほっ、お気の毒な厄災事でさあ!」


 ショコラビスケが得心して、次は機械人形に話し掛ける。


「なあトースターさんよお」

「……」

「こうして姉上さんと再会を果たせたのに、挨拶の言葉もねえのですかい?」

「……」


 少年は、顔色を変えずに立ち尽くしている。

 そんな彼に代わって、ブイヨン公爵が事情を打ち明ける。


「機械人形は、話したくても話せないのです」

「がほっ! そいつは知らなかったこととはいえ、済まねえこったなあ」


 少なからず気不味い雰囲気の漂っているところ、デミタスが茶碗カップ丸壺ポットを載せた台車を押しながら入室してくる。


「小麦茶をお持ちしました」

「おうデミタスさん、丁度よかったぜ!」


 胸を撫で下ろすショコラビスケである。

 デミタスは、人数分の小麦茶を注ぎ終えて退室した。

 ラムシュレーズンがお茶を促す。


「さあ、お熱いうちに、どうぞお飲みになって下さいまし」

「そうですね。頂くとしましょう」


 ブイヨン公爵が茶碗を手に取ると、機械人形もそれに倣った。

 ラムシュレーズンの傍にシロミがきて手助けをする。

 小麦茶を一口飲ませて貰ったラムシュレーズンは、機械人形の動作プレイを見つめながら、静かに話す。


「腕の関節は曲げられますのね」

「はい。そうでないと、自身で食事を摂れませんから」


 ブイヨン公爵が神妙そうな表情で言葉を続ける。


「ラムシュレーズン女史、あなたに施された呪詛を解く手立てがあります。お知りになりたいですか?」

「それは……」


 横からショコラビスケが割り込んでくる。


「ブイヨン公爵さん、是非とも教えて下せえ!! 首領がまた動けるようになるのなら、どれほど困難な手立てだろうが、この俺が成し遂げてみせますぜ!」

「ショコラビスケさん、あたくしのために、そのような強いお覚悟をなさるだなんて、本当に嬉しく思います。けれども、今回ばかりは無用ですわ」

「がほっ、そりゃあ一体どういう意味でさあ??」

「……」


 黙り込むラムシュレーズンに、ブイヨン公爵が尋ねる。


「あなたは、呪詛を解く手立てをご存知なのですか?」

「はい、そうですとも。知っておりますからこそ、無用ですと、ショコラビスケさんに申したのです」

「首領、まったく訳が分からねえでさあ! どういうことか説明して下せえ!」

「その前に堅くお約束して頂けますか? 呪詛を解く手立てを知っても、決して、それを成し遂げたりしないと」

「道理は分からねえが、約束は守りますぜ!」

「呪詛を与えた者が命を落としましたら、呪詛の効果もなくなります」

「がほっ! だったら、張本人のアバロウニさんをあやめさえすれば、首領は、以前の健康な身体を取り戻せるってえ訳でさあ!」


 嬉々とした顔面のショコラビスケに、ラムシュレーズンが釘を刺す。


「あたくしの大切なアバロウニ殿に、危害を及ぼしてはなりませんわよ。努努ゆめゆめお忘れなさらぬよう、くれぐれもお気をつけになって」

「おっ、おうよ……」


 いつになくラムシュレーズンの眼光が鋭いため、ショコラビスケは思わず身震いしてしまった。

 その一方で、ブイヨン公爵が遠慮がちに言葉を発する。


「あなたの婿殿になられた魔魚族と、できれば面会したいです」

「分かりました。シロミさん、アバロウニ殿をお連れして下さる?」

「承知しました」


 シロミはお辞儀した上で、速やかに第一迎賓室を出てゆく。

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