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傾国の白馬ファルキリー  作者: 水色十色
《★PART10 前人未踏の地下海域》不動のラムシュレーズン女王
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《☆~ 華燭の典と立食会 ~》

 ラムシュレーズンとアバロウニを結ぶ華燭の典(ウェディング)を、今月の十四日目に執り行うことが臨時会合で決した。

 この旨は国内、国外の両方面へ広く知れ渡り、多数の要人が参列を望み、気の早い者は、パンゲア帝国内で一番に豪華な宿屋として名高い「パニーニ大旅館」の中で、既に待機を始めている。

 ローラシア皇国が、一等政策官のチャプスーイ‐スィルヴァストウンを含む二十五名の宮廷官からなる「祝着(オブザーヴ)部隊(‐パーティ)」の派遣を申し出てきた。

 またエルフルト共和国からは、大統領(ファースト‐)夫人レディのチュトロ‐ハタケーツ、外務大臣を務めるバーミセリ‐パントリー侯爵、全世界学者のパースリ‐ヴィニガ子爵が訪問するという連絡が入っている。


 帝国王室は着々と仕度を進め、いよいよ華燭の典を迎えた。

 ドリンク民国からは、環境庁の長官と副長官、並びに軍務省の第二大隊長官がくる予定だったけれど、実際に参列しているのは、環境庁のポルフィラン‐バラクーダ長官とジャムサブレー副長官の二人だった。

 第二演習場で清らかな空気の漂う中、式典は順調に進み、二輪車トゥーウィール椅子(‐チェア)に腰掛けているラムシュレーズンが最後に短い演説をした。その締め括り(クロウズィング)として「あたくしは手足硬直で動けなくなりました」と打ち明けて、「けれども不動の心境を保ち、パンゲア帝国女王の務めを全うしてみせます」と固く誓い、二十万よりも多い人々による大喝采に包まれる。

 限られた上級要人は、食堂で催される立食会に招待されて、豪勢な料理に舌鼓を打つ楽しみが特別に与えられている。

 大多数の参列者は、順番にお祝い餅(セレブレイト)を受け取り、帰宅の途に就く。


 立食会が始まると、ラムシュレーズンの前に、祝福の言葉を伝えたい者たちが、いわゆる「立ち替わり入れ替わり」という常套の言い回しに従う形で、まるで水が流れるかのように参上してくる。

 チャプスーイが立ち去った矢先、チュトロが微笑みながら現れ、ラムシュレーズンと少しばかり話してから別のところへ移動する。

 今度は、ジャムサブレーとバラクーダ氏が一緒にきた。


「本日は誠におめでとうございます! まさか魔魚族と結婚なさるとは、なかなかに度胸が大きいですね」

「ありがとうございます。ジャムサブレーさんも、両思いの素敵な男性をお見つけになり、急ぎ婚姻なさってはいかがでしょうか?」

「これはこれは、パンゲア帝国女王に一本取られてしまいました……」


 苦笑いするジャムサブレーを尻目に、バラクーダ氏が話し掛けてくる。


「祝着の至りに相違ありません。ただ一つばかり」

「なんでございましょうか??」

「いえ、その……」


 言い淀むバラクーダ氏の横からジャムサブレーが口を挟む。


「そのような辛気臭い顔面、この場にふさわしくありません」

「ああ、その通りだとも。ラムシュレーズン女王、済みませんでした。儂の口から出た《ただ一つばかり》という台詞ラインは水に流して下さい」

「承知しました。それはそうと、プレイト将軍さまはどうなさいましたの?」


 この問いにはジャムサブレーが返答する。


「一昨日、()()()()()を患われましたもので……」

「大変ですこと! 早急に回復リカヴァリなさいますよう、お祈りしますわ。お二人はお料理を沢山、食して下さいまし」

「ご親切なお言葉、心より感謝します」


 ジャムサブレーは、一礼してバラクーダ氏とともに歩いてゆく。

 二人を見送るや否や、パースリが姿を現す。


「ふう~、ボクの番がやっと回ってきましたよ」

「お待たせして申し訳ありません」

「いえ、とんでもございません! 誉れ高いパンゲア帝国王の立場にお就き遊ばしておられると同時に、今日は花嫁という晴れの姿でいらっしゃるラムシュレーズン女王陛下と、こうして言葉を交わせるだけでも光栄ですから」

「ヴィニガ子爵さん、もっとお気楽になさって。ふふふ」

「おっとボクとしたことが、お祝いの言葉をすっかり忘れておりました。ご成婚おめでとうございます!」

「ありがたく思います」

「時に、ブイヨン公爵が近いうちに面会を望まれています」


 声を落とすパースリを前にして、ラムシュレーズンが静かに問う。


「あたくしに、なにかしらのご用向きでもあるのかしら?」

「なんでも、引き合わせたい人物がいるらしいのです。ご都合は、いかがなものでしょうか」

「いつでも構いませんわ」

「それでは、明日の七つ刻にお願い致します」

「ええ、分かりました」

「そろそろ次の方に場所を譲らなければなりませんし、ボクは退散します」


 パースリがお辞儀した上で、速やかに立ち去る。

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