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傾国の白馬ファルキリー  作者: 水色十色
《☆PART1 キャロリーヌの運命》栄養官という新しい目標
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《☆~ 竜族や栄養官の話(二) ~》

 竜編笠茸という名の菌類は、等級グレイドの高い品目アイテムであり、亜人類の間では別名「ドラゴン‐マシュルーム」として広く知れ渡っている。それには、竜族の必要とする栄養素が、ずば抜けて豊富に含まれているから、高い歩合レートで換金できたり、錬金術に使える高級素材でもあるのだという。

 しかしながら、そのマシュルームは、八百万呪(ミリアド‐カース)の魔力で守られたトリガラ魔窟の奥にしか生えておらず、とても狭い洞道とうどうの先にあるものだから、体躯の大きい竜族がそこまで入って収穫することは不可能なのである。

 トリガラ魔窟を少しでも壊した者は、たとい魔に対する抵抗能力を持つ魔女族や竜族であっても、八百万呪の制裁を受けてしまい、一日とは生きていられなくなる。だから先へ進むために洞道の壁を破壊しようという者など誰もいない。

 このような話を聞かされたキャロリーヌは、思わず身震いをした。


「おそろしい洞窟ですわね。あたくしなぞ、とてもゆけません」

「いいや違う」

「えっ、どういうことですの!?」

「いかに八百万やおよろずとて、一つだけ例外があるということ」

「それは、どのような?」

「純粋な心を持つ人族なら、少々壁を破壊しても許して貰えるのじゃ。キャロルなら問題なく、そこへゆける」

「まあ、そうですの。でもあたくし、一人でゆくことなぞ無理ですわ。そのような場所は、どうしても怖いですもの……」


 キャロリーヌは再び震えてしまった。

 老魔女は淡々と答える。


「その点は、なにをも心配する必要がない。あたしともう一人、勇敢な剣士も一緒じゃからなあ。それならば怖いものなぞ、一つもないじゃろう?」

「えっと、剣士のお方というのは、お婆さんの探索者イクスプローラ集団(‐パーティ)で生き残っておられるという面子フェイスのことでしょうか?」

「そうじゃ」

「乱暴なお方では、ありませんの?」

「その者は、極めて紳士的ヂェントルじゃ。まだ二十歳という若さでありながら、剣の腕はローラシア皇国で一、二を争うほど。引き締まった凛々しい顔をした美男子で、清潔感も溢れており、街で過ごしている時は毎日のように大勢の娘たちから求愛されておる。じゃけれど、なかなかに硬派な男なものでなあ、言い寄ってくる者がどんなに美しかろうが、あるいは、いかに高貴な身分じゃろうとも、まともに相手をせず軽くあしらっておる。それでいて女性に丁重な気遣いをして、どのような場合でも優しく接する。まあ、それこそが好かれる一番の理由なのじゃろう。ふぁっははは!」

「あらまあ!」


 キャロリーヌは驚嘆の声を上げた。それには、自身の認識が浅かったことに対する自省の意味も、多分に含まれている。なにしろ、物語に出てくる探索者という男性に対して、おおよそ乱暴な荒くれ者で、いつも泥や埃にまみれ、酷く汚れているイメージを持っていたのだから。

 たった今、オイルレーズンが話した言葉通りなら、そのような偏見的な考え方を改めるべきだと、キャロリーヌは反省しない訳にはいかなかったのである。

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