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傾国の白馬ファルキリー  作者: 水色十色
《★PART10 前人未踏の地下海域》謎と危険に満ちた地下海域
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《☆~ 捜索(一) ~》

 先導リーダの役を担うシルキーが逃げやすい経路の上を飛んでくれるので、ショコラビスケが迷わず進める。彼に運ばれているラムシュレーズンは、身体の後ろから強く押しつけてくる水の圧力を感じて、そのまま意識を失う。

 女王陛下の生命ライフを背負うショコラビスケは、甚大な重みを感じながらも、この窮地を脱するために、渾身の気持ちをふり絞って耐え抜こうと踏ん張る。


「がっほ!!」


 とてつもなく激しい勢いの海水が、容赦なく口や鼻から入り込んだ。


「これしきで死んじまう訳にいかねえ! たとい俺がくたばろうとも、首領キャプテンラムシュレーズン女史だけは助けてみせるぜ! そうでなけりゃ、この俺さまは死んでも死に切れねえ!!」


 辛うじて倒れることなく、ショコラビスケが洞窟の出口に到達できた。

 潮の戻りが押し寄せてくるけれど、空間の広がっている地上では、海水が四方八方へ散らばって流れるため、最早なんら猛威ではなかった。

 待機を命じられていたピチャが事態トラブルを知り、御用達馬車から出てきた。


「なにが起きたというのでしょうか??」

「説明の暇はねえぜ、首領が気絶しちまっているのでさあ!!」


 ショコラビスケが早口で話すと同時に、運んできたラムシュレーズンを背中から降ろして、そっと地面の上に寝かせた。

 シルキーが心配そうな表情で眺めている。


「分かりました」


 状況を理解できたピチャが馬車へ向かい、すぐ戻ってきた。

 彼の右手に小瓶が一つ握られており、目の当たりにしたショコラビスケは、少なからず怪訝そうな表情で問う。


「そりゃあ一体なんですかい?」

暗黄緑(オリヴ‐)飛竜ワイバンの血で作られた薬剤です」

「もしかすると、そいつは竜族の強壮剤でさあ!?」

「仰せの通りです。しかしながら、服用に使おうというのではありません。この強烈な匂いを少しでも嗅げば、目醒めを促す効果が期待できると思うのです」


 ピチャが小瓶の蓋を外し、寝ているラムシュレーズンの鼻先に近づける。


「むっ!!」


 一瞬にしてラムシュレーズンが意識を取り戻す。

 ショコラビスケは感心せざるを得ない。


「ピチャさんよお、竜族の強壮剤に、まさかこんな使い方があっただなんて、俺は生まれて初めて知ったぜ!!」

「あたくし、助けて頂けましたのね……」

「おうよ! 今回ばかりはどうなることかと肝が冷えたが、俺は自分の脚力を信じて、ひたすら突っ走りましたぜ! がっほほほ!!」

「他の方々は?」

「がほっ、そうだった!」


 ショコラビスケが周辺を見回し、お馬の縦幅で十頭分ばかり離れた位置に倒れているパースリとシロミの姿を発見した。


「ピチャさん、強壮剤を借して下せえ!」

「あ、どうぞ」


 小瓶を受け取ったショコラビスケが颯爽と駆け出す。

 ラムシュレーズンは、体力のすべてが回復リカヴァリし切っておらず、この場に残り、洞窟の奥で起きた事件の一部始終をピチャに説明する。

 シルキーは、上空から捜索してパイクとジャムサブレーを見つけた。

 パースリとシロミも意識を取り戻し、ラムシュレーズンがいる場所までゆっくり歩いてくる。

 ショコラビスケは、シルキーから教わった場所へ赴き、パイクとジャムサブレーを助けるのだった。

 シルキーが引き続き大空を飛行フライトして捜索するけれど、キャトフィシュとジャンバラヤ氏の姿だけは、地上のどこにもない。

 夕刻が近づいてきており、七人と一羽が円形サークルになって座り、これからの行動について議論を始めた。

 重苦しい雰囲気の漂う中、パースリが神妙そうな面持ちで話す。


「見つからない二人は、考えたくありませんけれど、推察は一つです。つまり彼らは、洞窟の内部で海水に飲まれたのでしょう」

「がほ!」

「……」


 今のラムシュレーズンには出せる言葉が見当たらない。

 代わりに、硬い表情のシロミが口を開く。


「急ぎ洞窟へ戻り、お二人を捜索しましょう」

「シロミさん、よくぞ決断してくれたなあ! この俺も賛同するぜ!」


 ここにパイクが口を挟む。


「危険が過ぎるぞ! いつまた、あの激しい()()()()が発生するか、まったく予想できないのだからな」

「そうね。フコイダンさんが話した通り、陸人類ランディアンにとって、地下海域は謎と危険に満ちていることが痛いくらいに分かった今、洞窟に戻るのは、身のほど知らずに相違ありません」


 こう言われてしまうと、ショコラビスケとシロミには反論の余地がない。

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